熱海の土砂崩れについて、国土地理院が、被災箇所の地図を公開しました。
以下は、その解説です。
崩壊地等分布図及び土砂堆積範囲図 この情報は、中部地方整備局・静岡県が7月3日~4日にUAVで撮影した映像から、地山・土砂が見えている部分を判読したものです。現地踏査は実施していないことから、実際に梅雨前線に伴う大雨により崩壊等のあった箇所でもプロットできていない場合や、梅雨前線に伴う大雨による崩壊地以外の箇所を判読している場合があり得ます。 崩壊地の位置を把握するための資料で、人家等に被害のない箇所もプロットしています。
そこで、この地図をハザードマップに重ねてみました。これから、みると、Google Mapで判読した位置が、ずれていて、被災箇所は前回、考えていた隣の沢であったことがわかります。
そうなると、ハザードマップの地すべり警戒地域とは、重なりません。
静岡新聞の記事を引用します。
熱海市伊豆山で発生した大規模な土石流について、静岡県は4日、土石流の起点となった逢初川の上部で、開発行為に伴う盛り土の崩落が確認されたと明らかにした。崩れた盛り土は約5万立方メートルと推定され、周辺を含めると約10万立方メートルの土砂が流れ下ったとみている。盛り土の存在が土石流の被害拡大につながった可能性もあるとみて今後、開発行為の経緯を含めた原因の調査を進める方針。 盛り土が確認されたのは逢初川河口から約2キロの標高390メートル地点。逢初川の起点より約400メートル西側で、盛り土前に谷になっていた地形の最奥に当たる。県が昨年取得した地形の電子データと2010年頃の国土交通省のデータを比較したところ、長さ約200メートル、幅約60メートルの盛り土が分かった。 県によると、土石流の最初の起点が盛り土だったのか、盛り土より下流側の崩落が盛り土の崩落を誘発したのかは現時点で分かっていない。崩れた盛り土の上部には車両が通行できる道が整備されていたが、開発行為の目的や時期も明らかになっていない。
文字だけでは、よくわかりませんが、地図と比べると、理解できます。
要するに、山の上で、崩れた土砂が、川に沿って、流下しています、
ハザードマップは、斜面崩壊の推定をしているので、このような土砂流の流下は想定していません。
それは、ハザードマップのエリアが等高線に垂直方向に伸びていることから確認できます。
つまり、今回の被災では、ハザードマップは役にたちません。
それでは、どうすべきか、ということになりますが、それには、ストリームコリドーから、住宅を離すことに尽きると思います。
アメリカとカナダでは、30年くらい前から、河川という概念を止めて、氾濫原を含んだ変化する流路のエリアとして、ストリームコリドーを使っています。そして、整備目標は、ストリームコリドーの復元です。
今回の被災エリアの半分くらいは、ストリームコリドーの中にあります。住宅を、ストリームコリドーから離すべきです。もちろん、人口が増加して、土地が不足している時代であれば、ナンセンスと言われるでしょうが、これからは、人口減少が進みます。防災ダムよりも、土地利用の制限と、ストリームコリドーの復元の方が、コストがかからずに、安全性が高まると思われます。
レジリエンスをいう言葉を振り回して、以前と同じように、コンクリートで、ハードを整備する方法は、財政が破綻して維持不能になります。
加谷珪一氏は、このままでは、メンテナンスが出来なくなることを指摘しています。
また、松岡由希子氏は、気候変動で、被災リスクが増加するという研究を紹介しています。
熱海の被災例は、ハードによる防災の限界を示していると思われます。
ストリームコリドー(Stream corridor)については、別の機会に述べたいと思います。
https://news.yahoo.co.jp/articles/592e99f0ad5950563aad09cc34bb8cf8e604aa6f
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令和3年(2021年)7月1日からの大雨に関する情報 国土地理院
https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/R3_0701_heavyrain.html
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梅雨前線に伴う大雨による崩壊地等分布図(速報)国土地理院
https://www.gsi.go.jp/common/000234065.pdf
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地理院地図の場合
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目先の利権を優先してきたインフラはもう限界...日本人が知らない大問題 2021/07/5 ニューズウィーク 加谷珪一
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/06/post-146.php
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/57-5.php
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