無観客開催オリンピックのババ抜き~~集団思考の事例研究(8)

7月4日の都議選の結果が出たので、政局が動き出したように、思われます。

7月5日のAmeba Timesは次のように書いています。


都民ファの公約の中には“オリンピック無観客開催”が盛り込まれていたが、小池都知事自民党幹部に対し“自分の考えとは違う”ということも事前に説明していたし、会見でも“改革を応援したい”、それはすなわち都民ファを意識した発言ではあるものの、明確には述べなかったところからも、自公に対する配慮が大きく見え隠れしていた。さらに投開票日の前日の土曜日、都民ファの候補者の応援には入ったものの、“挨拶回り”、“サポートしていますよ”という姿勢を見せただけで、マイクを持って話すことはしなかった。もちろん体調面が理由だったという見方もあるが、これが有権者に効果を及ぼしたのかどうかは疑問だ。


都議選の都民ファーストの政策には、以下が含まれます。

「あらゆる事態を想定するべき。国が強行開催をするならば、東京オリパラ大会は最低でも無観客」

つまり、記事によれば、小池知事は、都民ファーストと対立しても、「オリンピック無観客開催」には、反対であるといっています。

しかし、7月6日の日経新聞によると、小池知事は、「オリンピックは無人開催が望ましい」といったようです。

公明党の山口代表も「オリンピックは無人開催が望ましい」といっています。政府高官(所属と名前はない)は、政府は「東京都の意思を尊重する」といっているそうです。

筆者は、6月24日の「小池知事の入院とコロナ政局」で、次のように書きました。


小池氏は、機を見ることにたけています。感染が拡大する確率が高ければ、これは、1種のばばぬきで、最後まで残っている人が、かならず損をします。小池氏は、最初に、ゲームから降りたかったのかもしれません。

ということは、感染拡大リスクを小さく見積もることはできなかったことになります。

そうなると、今後、小池知事の、後に、続く人が出てくるはずです。

おそらく、コロナとオリンピックの後に生きのこりをかけて、これから、政局が加速度的に変化すると思われます。


ということで、まさに、ばば抜き、状態に突入しています。

小池知事は、入院時に、「オリンピック無観客開催」は想定して、ゲームから降りるつもりだったと思われます。ただし、「オリンピック無観客開催」を言い出したのは、自分であるという立場を明確にしたかったと思われます。都民ファーストは、都議選直前になるまでは「オリンピック無観客開催」どころか、コロナ対策に対しても明確な意思表示をしてこなかったので、そことは、距離を置いたと思われます。都知事選の結果を見れば、都民ファーストは、負け組です。負け組につくことは、政治取引としては不利になるので、避けたとも思われます。

7月6日の朝日新聞は次のように政府の対応を報道しています。


政府や大会組織委、東京都など5者は8日以降にも代表者会議を開き、観客のあり方を決める方向。それにさきがけ政府関係者は5日、収容人数の50%が5千人以上となる大規模会場は無観客とし、それ以外は観客を入れる方針などを確認した。開会式は、国際オリンピック委員会IOC)の関係者やスポンサーら「別枠」を除き無観客とする。首相ら政権幹部は、こうした対応で、有観客に異論を唱える世論や専門家らの理解を得たい考えだ。

(中略)

公明党石井啓一幹事長は4日夜、「政府には『無観客』を真剣に検討していただきたい」との考えを示した。5日に首相と面会した山口泰明自民党選挙対策委員長も、党内に無観客を望む声が多いと伝えたという。


こうなると、ばばを引くのは首相だけです。

なお、Ameba Timesの記事も、朝日新聞の記事も、憶測だらけで、エビデンスはありません。つまり、事実より憶測が広がる危険水域になっています。

もはや、関心事は、観客数ではなく、観客を入れて、クラスターが発生した時に、だれが、責任を問われるかに、移っています。

もっとも、1年前に、総裁選で、誰がなっても、コロナとオリンピックという両立不可能な課題処理が必要なので、競争相手が、降りた可能性もあります。つまり、現在の首相が、ばばを引くのは、予定調和であったようにも見えます。

現在、聖火リレーが行われていますが、全く盛り上がりません。

オリンピックが開催されても、今までほどは盛り上がらないことは必須なので、政局は、ポストオリンピックの経済対策にシフトしてくるでしょう。

田中康夫氏が、横浜市長選に立候補を表明しています。もはや、オリンピックには、政治的な価値はなくなったという判断とも思われます。

とはいえ、連載記事のテーマである「集団思考」からすれば、今回の観客数の意思決定プロセス自体が、集団思考としか思えません。如何にひどい意思決定(朝令暮改)を繰り返しても、ついてくる人は、人事権のある公務員だけです。

報道されませんが、おそらく、ボランティアは逃げ出しているはずです。不足は、人材派遣会社を使うことになると思われます。

 

 

小池知事の入院とコロナ政局 2021/06/24

  • “勝者なし”の東京都議選 大反省中の自民党内では“菅おろし”よりも“二階おろし”に繋がる可能性!? 2021/07/5 Ameba Times

https://news.yahoo.co.jp/articles/27b8315ee20254b8109d23cf3f1a9ac502ce9fc9?page=2

  • それでも完全無観客にしない政権 専門家「感染者確実に増える」2021/07/21 朝日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/79742be7ff3c41af25d73ae301ae72bd8990a6c9

https://news.yahoo.co.jp/articles/11bf5d7da8b8cd3d3e906fcfae10aa23a284f75a

 

 

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