コロナ対策とオリンピックのフレームワーク~~集団思考の事例研究(7)

ヒューリステックなフレームワーク

前回、オリンピックとコロナ対策にフレームワークがないという話をしました。これは、適切なフレームワークを作るための議論がなされていないというです。フレームワークは、議論して、設定しないと存在しないわけではありません。これは、ヒューリスティックフレームワークとして、存在します。ヒューリスティックですから、これは、カーネマンのシステム1(速い思考)に対応します。霞が関の公務員のような世界では、ともかく早く答えを出すことが求められますが、組織全体が、システム1だけになって、システム2は、絶滅しています。その結果、ヒューリスティックフレームワークしか生き残りません。これが、フレームワークの議論が、行われない原因かもしれません。フレームワークの議論のは、システム2(遅い思考)です。

図式化して、整理しておきます。

ヒューリスティックフレームワークの温存  <==> システム1(速い思考)

フレームワークの構築または改定       <==> システム2(遅い思考)

ヒューリスティックフレームワークの温存」も問題点は、お気づきと思いますが、エコシステムが変わった場合には、フレームワーク再構築を行わなければならないのに、それができず、ヒューリスティックフレームワークがゾンビのように生き残ることです。ここまでくると、ヒューリスティックフレームワークは、立派な集団思考になります。

会社や組織で、創立何周年といった行事や宣伝を出しているケースでは、集団思考に陥っていないか、新しいフレークワークを構築できているかをチェックする必要があります。

コロナ対策のフレームワーク

コロナ対策も、意図して作ったとは思われませんが、次のようなフレームワークが出来ています。

  • 感染が拡がったら、緊急事態宣言、または、まん延防止等重点措置をだす。

  • 感染が減ったら、Go To事業で、人の活動を促す。

  • ワクチンは、入手ができた分を順番に接種する。

一方、フレームワークに載らなかった事業は、次です。

  • COCOAなどのスマホアプリの普及と活用

  • コロナウィルス関するクラウドデータベースの構築

  • コロナウィルスに対応できる病床の確保

  • PCR検査数の増加と徹底

つまり、できることだけ実行して、できなかったことは、気にしない方針です。これは、「弱者と怠惰とフリーライダー集団思考の事例研究(4)」で指摘したフリーライダー問題点そのものです。フリーライダーの是認が、集団思考なのでしょう。

出来なかった事項を取り除いたフレームワークは、しょぼいのですが、現実に使われているのは、このフレームワークです。

オリンピックのフレームワーク

オリンピックの対策について行われていることをフレームワークとして整理してみます。

  • 来日者が入国時に陽性であった場合の対処:自治体から国に切りかえ

  • 選手と記者の行動範囲の抑制(自治体が担当)

  • 必要な医師、看護師はボランティアで確保

  • 大会のサポートスタッフは、ボランティアで確保

  • 会場を無観客にするか、人数制限をするか調整

これもフレームワークと呼ぶには寂しいですが、実際の行き当たりばったりを整理すれば、こんなところです。

結局、「来日者が入国時に陽性であった場合の対処」以外に、オリンピックのフレームワークでは、コロナ対策は国ではなにもしないことになります。これも、当初案では、自治体まかせでした。

つまり、政府としては、オリンピックに関連して、新しい追加のフレームワークは設定するつもりがないことがわかります。

ボランティアは確保できているのでしょうか。

フレームワークに載らなかった点に、専用病棟の確保があります。感染者数が増えて、病棟が足りなくなった場合のフレームワークはありません。おそらく、大阪の状況が繰り返されることになります。

集団思考フレームワーク

最後に、ヒューリスティックフレームワークが繰り返される例をあげておきます。

ひとつは、三菱電機の検査不正にともなう社長の辞任です。この不正は、産経新聞によれば、「35年もの長期間発覚しなかった」ということなので、現役の社長の辞任で解決できる問題ではあります。過去不正のあった時期に、社長だった人は何人いるのでしょうか。社内不正の再発防止は、担当職員の減給や、社長の辞任で解決できないことは過去の事例でわかります。これは、不正チェックの今までのフレームワークが機能していないことを示しています。

千葉県八街市で6月28日にトラックが下校中の児童の列に突っ込み、5人が死傷しました。これに対して、菅首相は、「通学路の総点検を指示」しています。さらに、「歩道設置に全面協力」すると言っています。しかし、これも従来のフレームワークのように思われます。十字路に、信号機のついているところとついていないところがあります。その違いは、過去にその交差点で死亡事故が起こったか否かであると聞いたことがあります。

読売新聞は、10年前から、歩道の設置の希望がでていたと伝えています。警察は、GIS上に、過去に発生した事故の地点データベース化しています。しかし、これは、事故が起こったデータです。

しかし、人口が移動すれば、過去のデータは、更新すべきです。

一方、現在では、自働車の急ブレーキのデータも入手可能なはずです。

ですから、この場合には、死亡事故が過去に起こった交差点が、危険な交差点であるというフレームワークを更新する必要があります。

歩道の設置についても、これから、人口が減少し、財政負担が厳しくなりますから、新しいリスク管理フレームワークを導入する必要があります。

そこでは、過去に行っていた方法は見直す必要があります。見直しが遅れれば、集団思考に陥ってしまいます。

 

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6397627

https://news.yahoo.co.jp/articles/ead553869445cc5cbf8608b3f1496e061136207a

  • 菅首相 通学路の総点検を指示 2021/06/30 テレビ玉川

https://news.yahoo.co.jp/articles/d22ad0403e5990ac075f772f60acb6e7c67c25aa

  • 首相、歩道設置に全面協力へ 千葉の児童5人死傷、現場を視察 2021/07/01 京都新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/352545ddda865473f3ead8bafa95afab0cc96c5c

  • 最高速60キロで縁石もない「危険な通学路」…10年前から歩道要望、買収理由に市は消極的 2021/07/01 読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/fea833fca7366ffe2c5a0fcbec46d3598796843d

 

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