アルゴリズム・実装可能性と行政

計算論的思考の手順

計算論的思考で、何か、良さそうなアイデア(問題解決方法)をおもいついたとします。

一般には、問題解決の手順は以下です。

  1. イデアを思いつく

  2. アルゴリズムに落としこむ

  3. 実装する方法を考える

  4. デモなどのサンプルのレベルで、実装してみる

  5. サンプルシステムでテストして、インタフェースなどの仕様を改善し、実用性を評価する

システムが大きくなると、個人や小人数チームでは、フルセットの実装は困難です。その場合でも、大規模開発を開始した後で、実装ができないような致命的な問題が見つかると、甚大な被害が生じますので、サンプルレベルの実装で、すべてではありませんが、主な実装上のリスクを削減しておくことが必要です。

そのアイデアを実現するシステムを開発するか、しないかは、サンプル実装をもとに、検討されることが普通です。

どうして、こんな当たり前のことを書くかといえば、この手順が、IT分野以外では、共有されていないからです。

行政施策手順の問題点

企業でも、同じような問題はあると思いますが、今回は行政を取り上げます。

憲法第9条のアイデアは、どのように、自衛隊に実装されているのでしょうか。合憲、違憲という視点は、計算論的思考ではありません。

  • 学校教育

文部科学省の指示は、義務教育でも、高等学校や大学でも同じで、教育内容のレベルを落とさずに、留年・落第させるなという指示です。このアイデアを実装できる人はいるのでしょうか。文部科学省は、アイデアを出すだけで、アイデアを実現するアルゴリズムを考え、実装することは、各学校の仕事と考えているのであれば、計算論的思考からすると、問題の責任は、サンプルシステムを提示しない、アイデアの製作者にあります。

  • コロナ対策

イデアを実施しようとして、「実装ができないような致命的な問題が見つかり、甚大な被害が生じている」例が、山のように見られます。コロナの重症患者が、治ってきたときに、転院できないので、感染者数が減っても、重症病床の占有率が下がらないそうです。厚生労働省は、重症が回復したら転院させる指示を出しているといっています。アイデアは出しているというわけです。自治体は、調整要員が不足している(実装出来ない)といっています。Go Toトラベル、Go Toイートもそうでした。感染を拡大しないように旅行する、感染を拡大しないように食事をするというアイデアを政府が出します。でも、その方法は、実装はされていません。正確に言えば、唯一実装されたものが、バグつきのCOCOAでした。結局、感染が拡大します。(注1)このような場合に、計算論的思考では、実装なしでアイデアを振り回した人に責任があるとなりますが、行政ではそうならないようです。(注2)

  • その他いろいろ

あまり沢山あって、ばかばかしくなったので省略します。

まとめ

行政施策でも、計算論的思考に基づく、問題解決の手順を踏襲していただければ、多くの、問題解決が容易になるはずです。

ただし、現在の組織の仕事のやり方を改善する方法では、計算論的思考の導入はできないと思います。特区導入が、道州制で、複数の方法のコンペがなされるようにする他に、方法はないでしょう。

注1:

今後、COCOAのバクで、どのくらい感染が拡大したかという分析レポートが出るのでしょうか。これがでなければ、行政は、COCOAは効果がないと暗に認識していたことになります。

注2:

COCOAの発注の実情がわかってきました。最初は、ボランティアのコードを活用したような話もしていましたが、1億円で発注しで、親会社が、下請けに投げたようです。いわゆるITゼネコン方式の発注です。ほとんど、ライブラリでできるので、コードの長さは、短いと思います。そもそも下請けに出すような規模の仕事ではないと思います。

追記:正しくは、1億円でなく、3億円のようです。