1)ウクライナ戦争の行方
8月15日にアラスカで米ロ首脳会談が、18日に、ホワイトハウスでアメリカとウクライナとヨーロッパ諸国の首脳会談が行われました。いずれの首脳会談でも、会議では、何も決まりませんでした。
トッド氏は、「西洋の敗北」で、ウクライナ戦争は、最長5年続き、ロシアの勝利で終わると考えています。
トッド氏は、ウクライナ戦争の終わり方については、明示していませんが、「西洋の敗北」(p.390)(2023年9月30日)で次のように言います。
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(アメリカが)敗北の意味について何も気づいていないことを願おう。そして、アメリカが、アメリカとキエフ(キーウ)のためだけに平和宣言をし、サイゴン、バグダッド、カブールと同じような結末を迎えることになると彼らが信じていることを願うのだ。
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つまり、希望的観測としては、アメリカが、ウクライナから全面撤退することを考えています。
筆者は、「アメリカとキエフ(キーウ)のためだけに平和宣言」の内容をイメージできませんので、この部分の解釈は、パスします。
次に、「アメリカが、ウクライナから全面撤退すること」の内容を考えます。
キール研究所によると、2022年1月24日から2025年6月30日までに、アメリカはウクライナへ約 1146 億ユーロ(約 1340億ドル)の支援を行っており、うち軍事支援は約 646億ユーロ(約 755億ドル、56%)、財政支援は約 466億ユーロ(約 540億ドル、41%)、人道支援は約 34 億ユーロ(約 4 0億ドル、3%)に上ります。
2025年2月の報道では、米国はウクライナに約1,830億ドルの支援を供与しており、そのうち軍事支援は約659億ドル(36%)と報じられています。このことから、残りの多くが財政・人道支援であると推測されます。
2025年3月3日、トランプ米大統領はゼレンスキー大統領との対立を背景に、ウクライナへの軍事援助の一時停止と情報共有の中断を命じました。
しかし、3月12日には、サウジアラビアでの協議などを通じて軍事援助と情報共有が再開されました。
2025年7月、トランプ大統領は、国防長官の命令によって一時停止していたウクライナ向けの軍事物資(例:パトリオットミサイルなど)の出荷を再開するよう指示しました。国務省も「米国は引き続きウクライナ最大の支援国である」と明言しています。
2025年7月、米上院軍事委員会は「Ukraine Security Assistance Initiative(USAI)」の支援枠を2028年まで延長し、500百万ドルの安全保障援助を含む2026年度国防権限法案を承認しました
トランプ大統領は「米国はウクライナにもう資金を支払っていない」と明言し、代わりにNATO加盟国が米国製武器を購入し、それをウクライナに供与する方式に切り替えたと述べています。
この方式では、米国は武器を売却することで利益を得る一方、ウクライナへの直接的な資金拠出は行っていません。
トランプ大統領の発言は、正確さにかけることがあるので、調べてみました。
大筋は正しいと思われます。
援助額のデータには、バラツキがあります。これは、武器などの物資を直接援助した場合の評価額にバラツキがあるためと思われます。
アメリカは、ウクライナの軍事技術支援はしていますが、武器の提供は行っておらず、武器はEUがアメリカから購入して、ウクライナに転送しているようです。
人道支援は、なくならないと思われます。
財政支援は、500百万ドルでは足りないので、基本的に、人道支援以外は、アメリカから、EUにシフトしていると思われます。
「アメリカが、ウクライナから全面撤退すること」は、ほぼ、実現できています。
「サイゴン、バグダッド、カブールと同じような結末」とは、全面撤退を意味します。
アメリカがすぐに、全面撤退をしない理由を考えます。
第1に、NATOに関する利権があります。NATOは、アメリカの武器の輸出先ですので、仮に、アメリカがNATOから撤退する場合でも、武器ビジネスの利権を保持するための工夫をするはずです。
第2は、トランプ大統領の個人的な願望で、ノーベル平和賞にこだわっている可能性があります。
基本的に、ウクライナ戦争の決定権は、EUとイギリスに丸投げされています。
ウクライナ戦争の特徴は、膨大な財政支援にあります。
財政支援は、レントシーキング経済になります。
つまり、ウクライナ国内には、財政支援で潤っている人がいて、その人は、戦争継続を希望している可能性があります。
市場経済がほぼ完全に破壊されているので、社会主義のような経済になっているはずです。
一方、EUとイギリスが、ウクライナにつぎ込む軍事支援と財政支援は、リターンゼロ、元本価値もゼロになる投資です、
こんな投資をすれば、国の経済は成長しなくなります。
ウクライナ戦争の終結を考えるには、なぜ、EUとイギリスが、経済的なメリットのないウクライナ支援を続けているのかという疑問にこたえる必要があります。
EUとイギリスのウクライナ支援は、レントシーキング経済になります。ウクライナ支援は、市場経済における経済的なメリットはありませんが、レントシーキング経済で潤っているEUとイギリスの人たちは、戦争の継続を希望している可能性があります。
2)エネルギー市場経済の問題
レントシーキング経済で潤っている人は、エリート層にいます。一方、ウクライナ戦争は、庶民の生活を破壊するので、.ポピュリズム主義が台頭します。エネルギー価格が上がったのでインフレは、悲惨な状態になっています。
そのまえに、自然エネルギー転換で、既に、エネルギー価格が上がっていますので、弱り目に祟(たた)り目です。
なお、トッド氏も「西洋の敗北」で、指摘しているように、ヨーロッパで、戦略カードを持っている国は、ドイツだけです。産業用エネルギーの最大の消費国はドイツです。ドイツは、ナチスの亡霊に悩まされて、他のEUの国の先を行くことを避けていますが、結局は、ドイツが決めなければ、何も決まらないと思われます。
2-1)ノルドストリーム
トッド氏は、「西洋の敗北」の中で、ノルドストリームの破壊はノルウェーとアメリカの共同作戦であるという説を採用しています。
これは、ノルドストリームの破壊によって、誰が経済的な利益を得たかという視点でみれば、合理的な説明になります。
ところで、最近、ノルドストリームの破壊は、親ウクライナ派組織が行ったという説が再浮上しています。
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ロシア産天然ガスをドイツに運ぶ海底パイプライン、ノルドストリームの爆破事件に新展開があった。調査を続けるドイツの検察当局が8月21日、首謀者の1人とみられるウクライナ人男性がイタリアで拘束されたと発表した。違憲妨害行為やインフラ破壊の容疑でドイツに移送されるという。
ロシアはアメリカが破壊工作を計画したと非難したが、米政府はこれを否定している。ウクライナはロシアの関与を主張したが、ロシア側は否定した。ドイツメディアが23年、親ウクライナ派組織が犯行に関与したと報じたことを受けて、ドイツ当局は軽率な非難は控えるべきだと表明していた。
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海底ガス管「ノルドストリーム」爆破の疑いでウクライナ人逮捕...真犯人は? 2025/08/24 Newsweek シェーン・クロウチャー
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/08/566770.php
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ノルウェーとアメリカとは異なり、ウクライナには、ノルドストリームの破壊することにより直接的な経済利益はありません。
しかし、ノルドストリームを破壊すれば、EUの経済とロシアの経済の連動を断ち切ることのできるメリットがありますので、動機はあります。
2-2)ドルジバ・パイプライン
さらに、驚くべきニュースがあります。
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ドナルド・トランプ米大統領が激怒している。NATO同盟国のハンガリーとスロバキアに石油を供給するロシアの「ドルジバ・パイプライン」を、ウクライナが攻撃して使用不能にしたためだ。
ハンガリーはウクライナ戦争への直接の関与を避けつつロシア政府との関係を維持しており、EUやNATO加盟国の中でも異端の存在だ。ウクライナのEU加盟の動きにも反対しており、EUとウクライナがハンガリーを戦争に引きずり込もうとしていると非難している。
オルバン首相は、ドルジバ・パイプラインへの攻撃がハンガリーのエネルギー事情に及ぼす影響について、トランプに不満を述べる書簡を送っていた。
ウクライナ当局の説明によると、パイプラインを攻撃の対象としたのはロシア軍にも燃料を供給しているからだという。
オルバン首相は、ドルジバ・パイプラインに対するウクライナの攻撃が、アラスカでの「歴史的会談」(8月15日に行われたトランプとプーチンとの会談)の数日前にも行われたと述べていた。ウクライナはその後、パイプラインを再び攻撃している。
「このパイプラインは、原油を輸入する他の手段を持たないハンガリーとスロバキアへの供給を担っている」とオルバン首相は書簡で述べていた。
オルバン首相は「ハンガリーは電力とガソリンでウクライナを支援している。それなのにウクライナは、ハンガリーに供給しているパイプラインを爆撃する。極めて非友好的な行動だ! ハンガリーは、トランプ大統領の平和追求にあらゆる成功があることを願っている」と言った。
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トランプ、ウクライナのパイプライン攻撃に激怒...和平交渉への影響は?2025/08/25 Newsweek シェーン・クロウチャー
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/08/566794_1.php
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スロバキアのデニサ・サコバ経済相は、ウクライナによるドローン攻撃によってロシアからの原油供給が停止されたことを確認し、「損害の程度を調査中であり、輸送は停止される見通し」と述べています。
スロバキアはこれまで比較的中立的な立場を保ってきましたが、今回の攻撃によりエネルギー供給の不安定化が現実のものとなりました。
2025年8月現在、ウクライナによるドルジバ・パイプラインへの攻撃に対して、EUは公式な非難声明や制裁措置は発表していませんが、加盟国間で対応の温度差が顕著になっています。
これは、驚くべきニュースです。
ウクライナが、ドルジバ・パイプラインを破壊したのであれば、ハンガリーとスロバキアには、ウクライナを支援する経済的なメリットはありません。
ハンガリーとスロバキアがウクライナ支援を離脱する確率が高まったといえます。
しかも、ドルジバ・パイプラインへの攻撃をウクライナは否定していません。
ノルドストリームの爆破事件の首謀者の1人とみられるウクライナ人男性は、随分前に逮捕されています。
つまり、この記事の発表の日付は調整可能です。
ノルドストリームの爆破事件のウクライナ人首謀者のニュースは、ドルジバ・パイプラインへの攻撃の後で、発表されています。
つまり、この記事の発表時期は、反ウクライナ支援を強化するように作用します。
2-3)タークストリーム
ABC殺人事件にヒントをもらえば、ドルジバ・パイプラインへの攻撃へのウクライナの関与(A殺人事件)、ノルドストリームの爆破事件のウクライナ人の関与(B殺人事件)の後には、Xエネルギー施設破壊へウクライナの関与(C殺人事件)が起き、EUは、ウクライナ支援から撤退するストーリーになります。
このXにあてはまる可能性の高いパイプラインは、TurkStream(タークストリーム)天然ガスパイプラインです。
ブラザーフッド(Brotherhood)天然ガスパイプラインとソユーズ(Soyuz)天然ガスパイプラインの利用は、2024年12月までで、現在は、供給は停止しています。
つまり、2024年12月までは、ウクライナは、ロシアからヨーロッパに向かう2つの天然ガスパイプラインから、ガスを抜き取ることが可能でしたが、2025年1月から、このルートで天然ガスを入手できなくなりました。この抜き取りは、購入国がウクライナ支援として、抜き取り量に相当する代金を立て替えていたと思われますが、ロシアとしては、天然ガスの代金が支払われる限りは、その差は不問で、供給を続けていました。
この状況が、2025年1月に激変していました。
ウィキペディアの「TurkStream」は次のように書いています。
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2025年初頭にウクライナ経由のヨーロッパへのガス輸送が停止した後、タークストリームはロシアがヨーロッパに直接ガスを供給できる唯一のガスパイプラインとなる。2023年までに、タークストリームを経由したロシアのガス輸送量は既に23%増加し、167億立方メートルに達する。国営エネルギー会社GOTAの元社長、ゴハン・ヤルディム氏によると、これによりさらに150億立方メートルのガス輸送が可能になるという。2025年1月11日、ウクライナはロシアにあるタークストリームのガス圧縮ステーションをドローンで攻撃した。しかし、ガス輸送は中断されなかった。
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つまり、ウクライナによるタークストリームパイプラインの破壊(C殺人事件)は既に行われ、未遂になっています。
ウクライナは2025年、ロシアのミサイル攻撃により国内のガス生産能力が大幅に損なわれ、深刻なガス不足に直面しています。
この攻撃は、ブラザーフッド天然ガスパイプラインとソユーズ天然ガスパイプラインの停止をうけて行われています。
現在、ウクライナで、国外から天然ガスを調圧できるルートは、トランスバルカン・パイプラインだけです。
トランスバルカン・パイプラインは南北間のガス輸送を目的として設計されていますが、逆方向にも利用できます。
トランスバルカン・パイプラインの当初計画では、ロシアの天然ガスをバルカン半島に送ることが大きな役割で、需給調整のために、逆向き使用も可能な施設であったと思われます。
2025年7月、2024年末の、ブラザーフッド天然ガスパイプラインとソユーズ天然ガスパイプラインの停止から。6か月を経て、ウクライナはトランスバルカン・パイプラインを経由して、外国(アゼルバイジャン)産天然ガスの輸入を開始しました。
ロシアは、8月6日、南部オデーサ州のガス関連施設(トランスバルカン・ガスパイプラインによりギリシャとウクライナを結ぶルートの一部と)を攻撃し破壊しました。
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ロシア、ウクライナ南部のガス施設攻撃 冬季備蓄に打撃 2025/08/06 ロイター
https://news.yahoo.co.jp/articles/53d31c5548fe3ed884d9f5d5fa7f8c69fba18849
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ヨーロッパとアメリカは、ロシアに対して、経済封鎖をすれば、戦争に勝てると主張しました。
2024年12月に、ブラザーフッド天然ガスパイプラインとソユーズ天然ガスパイプラインを停止した結果、現在、ウクライナは、エネルギー封鎖に見舞われています。
ウクライナの石油産出量(2025年推定)は、年間産出量:約 150万トン前後、日量換算:約 30,000〜35,000バレル/日で、主な産地はポルタヴァ州、リヴィウ州です。
ウクライナは欧州で第2位の天然ガス埋蔵量を持つ国です。ウクライナの天然ガス産出量(2025年推定)は、年間産出量:約 180億〜200億立方メートル(BCM)で、主な産地は、ドニプロペトロウシク州、ハルキウ州、ポルタヴァ州などです。今まで、国内消費の約60〜70%を自給しています。
戦争により一部施設が損傷して、天然ガスの生産量は減少していますが、戦争の影響で産業活動や人口の減少により需要が縮小した結果、自給率は上昇傾向にあります。
戦争による一部施設の損傷は、前線に近い部分で、西ウクライナの影響は少ないと思われます。とはいえ、30%は輸入する必要があります。
ウクライナは、ドルジバ・パイプラインへの攻撃に続いて、今後、タークストリームパイプラインの破壊をするのでしょうか。この攻撃は、EUの支援を後退させる可能性があります。
一方、ウクライナは、天然ガスの総消費量の30%の輸入ができていない可能性が高いです。
ロシアは、ナポレオン戦争を冬将軍の力でのりきりました。
ウクライナ戦争の結末に、冬将軍が暗躍する可能性があります。
最後に、Copilotが解説する、エネルギー戦争の解説を添付します。
3)エネルギー戦争
Q:ウクライナ戦争の「エネルギー戦争としての構造」とは何ですか
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ウクライナ戦争は単なる領土紛争ではなく、「エネルギー戦争」としての構造を持つ地政学的な対立でもあります。これは、エネルギー資源・供給網・価格・インフラをめぐる戦略的な駆け引きが、戦争の本質に深く関わっていることを意味します。
ウクライナ戦争の「エネルギー戦争」としての構造:主な要素
- ロシアのエネルギー覇権と武器化
ロシアは天然ガス・原油の主要輸出国であり、エネルギーを政治的武器として活用。
欧州へのガス供給を制限・停止することで、経済的圧力をかけ、制裁への対抗手段として機能。
ノルドストリーム爆破やドルジバ・パイプライン攻撃は、エネルギー供給網の脆弱性と戦略性を浮き彫りにした。
ウクライナはロシア産エネルギーの欧州向け輸送ルートの要衝。
戦争によってこのルートが遮断されることで、欧州のエネルギー安全保障が揺らぐ。
ウクライナ自身も、ロシアのエネルギーインフラを攻撃することで、戦略的優位を確保しようとする動きが見られる。
- 欧州のエネルギー転換と脱ロシア依存
戦争を契機に、EUはロシア産エネルギーからの脱却を加速。
LNG(液化天然ガス)の輸入拡大、再生可能エネルギーの推進、中東・北アフリカとの連携強化など、供給源の多様化が進行中。
これは単なる経済政策ではなく、安全保障政策の一環として位置づけられている。
- 価格の乱高下と経済的影響
戦争による供給不安が、世界的なエネルギー価格の高騰を招き、インフレ圧力を強めた。
特に欧州では、電気・ガス料金の急騰が国民生活に直撃し、政治的な不満や政権交代の要因にもなっている。
- インフラ攻撃とサイバー戦争の融合
パイプラインや発電所への物理的攻撃だけでなく、サイバー攻撃によるエネルギー網の麻痺も戦術の一部。
これは「ハイブリッド戦争」の典型であり、エネルギーと情報の融合領域での戦いが展開されている。
まとめ:エネルギーは戦争の「目的」であり「手段」でもある ウクライナ戦争は、エネルギー資源の支配をめぐる争いであると同時に、エネルギーを使った戦術的な攻撃の舞台でもあります。この構造を理解することで、戦争の本質や今後の国際秩序の変化がより鮮明に見えてきます。
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Q:ノルドストリーム爆破とドルジバ・パイプライン破壊の間には、関連がありますか
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結論:直接的な関連は未確認だが、戦略的には連続性がある可能性 ノルドストリームとドルジバの破壊は、ロシアのエネルギー覇権に対する抵抗として位置づけられる可能性が高く、ウクライナの戦略的意図や欧州の対応を読み解く鍵となります。
EUの「インフラ防衛戦略」は、2022年のノルドストリーム爆破や2025年のドルジバ・パイプライン攻撃などを契機に、欧州の重要インフラを保護し、戦略的自立を確保するための包括的な取り組みです。これは単なる軍事防衛ではなく、エネルギー・通信・交通・デジタル・軍需産業など広範な分野にまたがる戦略です。
EUのインフラ防衛戦略の主な柱(2025年時点)
- ReArm Europe計画(欧州再軍備計画、2025年3月)
2030年までに8,000億ユーロ以上の防衛投資を動員する野心的な構想。
重要インフラの保護、軍需産業の強化、AI・量子技術の防衛分野への応用などを含む。
EU加盟国間の共同調達、長期契約による製造能力の拡大、規制の簡素化が進められている。
- Readiness 2030(防衛白書)
欧州委員会が発表した戦略文書で、防空・ミサイル防衛、ドローン対策、軍用燃料インフラの保護などを優先課題として明示。
ウクライナ支援と欧州防衛力の再構築を両立させる方針。
- 財政規則の柔軟化と資金調達
防衛支出に限り、EUの財政ルールから一時的な逸脱を認める「国家免責条項」を導入。
欧州投資銀行(EIB)や民間資本の活用、共同債務による融資制度(SAFE)など、多様な資金調達手段を整備。
- サイバーセキュリティとデジタル防衛
通信インフラや衛星ネットワークの保護、AIによる監視・分析システムの導入が進行中。
NATO首脳会議では、防衛支出のうち1.5%をサイバー・インフラ分野に充てることが合意されました。
- 加盟国間の調整と統合
EUは防衛政策の立案や軍の配備には直接関与しないが、調達・技術開発・規制調和などの分野で調整役を担う。
防衛産業の単一市場化を目指し、域内移転や許可制度の相互承認を推進。
この戦略の意義 EUのインフラ防衛戦略は、米国依存からの脱却と、ロシア・中国などの脅威への対応を目的とした「戦略的自立」の象徴です。ノルドストリームやドルジバのような事件は、こうした取り組みの緊急性を浮き彫りにしました。
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