トッド氏の正義論(14)

1)日本のAI研究の現状

 

野口悠紀雄氏は、日本のAI研究のレベルを改善する必要があると主張しています。

 

見出しを並べると、次になります。

世界のAIトップ大学ランキング、1位はMIT、約3分の1が米英

 

日本や欧州は大学改革が必要、トランプ関税は産業構造転換の障害

 

U.S.News調査では中国が断トツ、日本の大学は上位100位に入らず

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将来の国力決める「AI教育・研究」上位100大学に日本は1校だけ、製造業大国の転換遅れる日独仏韓  2025/08/21 Dimond 野口悠紀雄

https://diamond.jp/articles/-/370904

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野口悠紀雄氏は、「製造業中心の産業構造から新しい時代の産業構造に転換しつつあるなかで、大学など高等教育機関のAI教育・研究の充実度の差を如実に示すものだ」といいます。

 

この部分の主張は、トッド氏とは異なります。トッド氏は、情報産業の一部(特に、金融関係)については、否定的な評価をしています。製造業から、情報産業へのレジームシフトを手放しで喜べないという立場です。

 

自動運転自動車であれば、自動運転のソフトウェアと制御装置があれば、エンジンやモーターは不要か、それともフルセットの自動運転車をめざすのかという違いです。

 

フルセットの自動運転車を目指すのであれば、国内に製鉄業がなくなると、不利になります。

 

あるいは、半導体では、情報産業ではなく、製造業ですが、半導体が自前で出来なくなると、ソフトウェアの開発に問題が生じます。

 

こうした点を考えれば、製造業から、情報産業へのレジームシフトを手放しで喜べないと思います。

 

さて、野口悠紀雄氏は、「日本のAI研究のレベルを、世界レベルに改善する必要がある」という主張です。

 

今回は、そのためにはは、何が必要かを、中国を参考に考えます。

 

2)中国のAI

 

最初に、トッド氏が注目するエンジニアを見ます。

 

以下が、Geminiの回答です。

中国の工学系大学の卒業者数は、他の先進国と比較しても突出しています。例えば、中国教育部が発表するデータによると、2020年代に入ると、毎年およそ100万人以上の工学系学士号取得者を輩出していると推計されています。これは、アメリカやヨーロッパ諸国を合わせた数よりも多いとされており、中国の科学技術力向上における重要な基盤となっています。

この傾向は、2025年まで続いており、中国政府の「中国製造2025(製造強国戦略)」や「次世代人工知能発展計画(AI発展計画)」といった政策と連動して、今後も理工系人材の育成が重点的に推進される見込みです。

 

ここに出て来る、「次世代人工知能発展計画」は2017年に公開されています。

国务院关于印发新一代人工智能发展规划的通知(国務院による次世代人工知能開発計画の公布に関する通知)

https://www.gov.cn/zhengce/content/2017-07/20/content_5211996.htm

NEDO 北京事務所仮訳

https://www.nedo.go.jp/content/100903937.pdf

 

NEDOの和訳から、見出しを並べます。

次世代人工知能発展計画

一.戦略的動向

二.全体要求

(一)指針となる考え方。

(二)基本原則。

(三)戦略的目標。

(四)全体的配置。

三.重点任務

(一)開放・協働型の人工知能科学技術イノベーション体系の構築。

1.次世代人工知能基礎理論体系の構築。

2.次世代人工知能要素・基盤技術体系の構築。

3.人工知能イノベーションプラットフォームの統一的配置。

4.人工知能高度人材の早急な育成・集積。

(二)ハイエンド・高効率のスマートエコノミーの育成。

1.人工知能の新興産業の大々的な発展。

2.産業のスマート化・高度化の早急な推進。

3.スマート企業の大々的発展。

4.人工知能イノベーションの重要ポジションの創出。

(三)安全で便利なスマート社会の構築。

1.便利で高効率なスマートサービスの発展。

2.ソーシャルガバナンスのスマート化の推進。

3.人工知能を利用した公共安全保障能力の向上。

4.社会の付き合い・共有・相互信頼の促進。

(四)人工知能分野の軍民融合の強化。

(五)ユビキタス・安全・高効率のスマート化インフラ体系の構築。

(六)次世代人工知能の重大科学技術プロジェクトの先見的配置

四.資源配置

(一)財政誘導、市場主導による資金支援の仕組みの構築。

(二)人工知能イノベーション拠点の最適な配置と整備。

(三)国内外のイノベーション資源の統一的計画。

五.保障措置

(一)人工知能の発展を促進する法律法規及び倫理・規範の制定。

(二)人工知能の発展を支援する重点政策の整備。

(三)人工知能技術規格及び知的財産権体系の構築。

(四)人工知能の安全な監督管理及び評価体系の構築。

(五)人工知能労働力研修の大々的強化。

(六)人工知能科学知識普及活動の広範な展開。

六.組織・実施

(一)組織・指導。

(二)実施の保障。

(三)試験・試行。

(四)世論の誘導。

 

表紙を除いて、全21ページ。戦略的動向(背景)は2ページ。残りの19ページには、何をするかが書かれています。

 

「次世代人工知能発展計画」は、これから作る法律についても書かれていますので、法律の上位の戦略になります。

 

中でも、最重要は、次になっています。

4.人工知能高度人材の早急な育成・集積。

高度人材チームの構築を人工知能の発展における最重要課題とし、育成と誘致を組み合わせることを堅持し、人工知能教育体系を整備し、人材備蓄と梯形編隊の整備を強化し、特に世界のトップレベル人材及び青年人才を早急に誘致し、中国の人工知能人材の重要ポジションを形成する。

ハイレベルな人工知能イノベーション人材及びチームを育成する。発展の潜在力を有する人工知能リーダー人材を支援・育成し、人工知能の基礎研究、応用研究、運用維持などの面における専門的な技術人材の育成を強化する。複合型人材の育成を重視し、人工知能の理論、方法、技術、製品、応用などに通じる専門的な複合型人才、及び「人工知能+」経済、社会、管理、規格、法律などを掌握する分野横断的な複合型人才を重点的に育成する。重大な研究開発任務及び拠点プラットフォームの整備を通じて、人工知能の高度人材を集め、若干の人工知能重点分野において一群のハイレベルイノベーションチームを形成する。国内のイノベーション人材、チームが世界トップの人工知能研究機関との協力・交流を強化するよう奨励・誘導する。

高度人工知能人才の誘致を強化する。専門ルートを開拓し、特別政策を実施し、人工知能高度人材の正確な誘致を実現する。神経認知、機械学習、自動運転、スマートロボットなどの世界のトップ科学者とハイレベルイノベーションチームを重点的に誘致する。プロジェクト協力、技術コンサルティングなどの方式により人工知能人才をフレキシブルに誘致することを奨励する。「千人計画」など既存の人材計画を統一的に利用し、人工知能分野の優秀人材、特に優秀な青年人才の誘致業務を強化する。企業の人的資源のコスト計算に関する政策を整備し、企業、科学研究機関による人工知能人才の誘致を奨励する。

人工知能学科を整備する。人工知能分野の学科の配置を整備し、人工知能専攻を設け、人工知能分野の 1 級学科の設置を推し進め、できるだけ早くモデル校に人工知能学院を設置し、人工知能関連学科・コースの博士、修士課程院生の募集枠を増やす。高等教育機関が既存の内容をもとに人工知能専攻の教育内容を広げ、「人工知能+X」の複合専攻育成の新モデルを形成し、人工知能と数学、コンピューター科学、物理学、生物学、心理学、社会学、法学などの学科・専攻教育との交差融合を重視することを奨励する。産学研(企業・大学・研究機関)連携を強化し、高等教育機関、科学研究機関が企業などと提携して人工知能学科の整備に取り組むことを奨励する。

 

3)日本のAI戦略

 

日本政府のAI戦略は、次にあります。

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AI戦略

https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/index.html

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このHPの見出しは以下です。

人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)

AI戦略関連資料

AI関連予算(主要な施策)

 

トップには、法律が来ています。中国方式であれば、ヒエラルキーは、「戦略=>法律、予算、人材」になります。

 

日本政府のヒエラルキーは、「法律=>戦略」です。

 

違和感がありますが、先に進みます。

 

戦略で引用されているのは、次の文書で、2025年にもかかわらず、中間とりまとめになっています。

AI 戦略会議・AI 制度研究会・中間とりまとめ 2025 年2月4日

https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/interim_report.pdf

この文書の目次を引用します。

目次

概要 

  1. はじめに 
  2. 制度の基本的な考え方 

1. 近年の AI の発展 

2. 関係主体 

(1) 主な主体 

(2) 国外事業者 

3. イノベーション促進とリスクへの対応の両立 

(1) イノベーションの促進 .

① 研究開発への支援

② 事業者による利用

(2) 法令の適用とソフトローの活用 

(3) リスクへの対応 

4. 国際協調の推進 

(1) AI ガバナンスの形成 

(2) 国際整合性・相互運用性の確保

  1. 具体的な制度・施策の方向性 

1. 全般的な事項

(1) 政府の司令塔機能の強化、戦略の策定 

(2) 安全性の向上等 

① AI ライフサイクル全体を通じた透明性と適正性の確保.

② 国内外の組織が実践する安全性評価と認証に関する戦略的な促進

重大インシデント等に関する政府による調査と情報発信

2. 政府による利用等 

1) 政府調達

2) 政府等による利用 

3. 生命・身体の安全、システミック・リスク、国の安全保障等に関わるもの 

  1. おわりに 

 

2017年の「次世代人工知能発展計画」の見出しの内容がほとんど抜け落ちています。

 

この文書の目的は何でしょう。

 

「I. はじめに 」には次のように書かれています。

EU においては、2024 年 8 月、AI に関する包括的な規制である AI Act が発効した。AI Act は、4段階のリスクに応じたアプローチを採用し、人間の安全や基本的権利を脅かす AIについてはその市場投入や使用を禁止し、人間の健康・安全や民主主義・法の支配に重大な害を及ぼす恐れのある AI についてはハイリスクな AI システムとして市場投入前に影響評価・適合性評価を行う義務を課すといった規制を導入している。また、汎用 AI モデルの提供者には、技術文書の作成や学習データの開示等の透明性の義務を課し、学習の計算量が 1025 FLOPs を超える等システミック・リスクを伴う汎用 AI モデルの提供者にはモデル評価の実施やインシデントに関する報告義務を上乗せで課すといった規制を設けている。

 

米国においては、2023 年 7 月以降、AI のリスク管理に関する情報共有や AI システムがもたらす可能性のある社会的リスクに関する研究、サイバーセキュリティへの投資等を実施する旨のボランタリー・コミットメントを米国の大手 AI 開発企業が発表した。また、2023 年 10 月、安全保障上のリスクへの対応のため、国防生産法に基づき、学習の計算量が1026FLOPs を超える潜在的なデュアルユース基盤モデルを開発する米国の事業者に対し、モデルの訓練、開発又は製造に関する活動内容等の情報を継続的に政府に提出するよう指示する内容を含む大統領令を発出した。なお、本大統領令は 2025 年 1 月 20 日に撤回され、同年1月 23 日に、AI に関する新たな大統領令が発出されており、2023 年 10 月 30 日の大統領令の下でとられた政策や規制等の措置の見直しと、行動計画の策定が指示されている。その他、カリフォルニア州においては、2024 年 9 月、AI が生成したコンテンツの透明性を高める州法 SB942 と、AI の学習に使用したデータを開示する州法 AB2013が制定された。

 

これから、AI戦略の目的は、AIが、レントシーキングを妨害しないように、AIの開発を止めることにあります。

 

これが理解できれば、なぜ、法律が戦略より先にあるかが理解できます。

 

野口悠紀雄氏は、「日本のAI研究のレベルを、世界レベルに改善する必要がある」といいます。

 

日本政府は、レントシーキングを妨害しないように、AIの開発をブロックしています。

 

これが理解できれば、野口悠紀雄氏の主張は、実現しないことがわかります。

 

2017年に中国は、「次世代人工知能発展計画」をつくりました。

 

2025年に、日本政府は、AIの開発戦略を持っていません。

 

日本政府が提示しているのは、「AI戦略」であって、「AI開発戦略」ではないので、政府がウソをついている訳ではありません。

 

日本政府は「AI開発戦略」を作りたくないのだと思います。

 

「AI開発戦略」を作ることは容易です。

 

生成AIに、「次世代人工知能発展計画」をモデルに、日本板の「AI開発戦略」を作ってくださいと依頼すれば、草稿が出来あがります。

草稿をもとに、分担して、加筆修正とすり合わせを行えば、2か月あれば、日本板の「AI開発戦略」が作れます。

 

最終チェックを人間が行えば、AIを使うことに問題はありません。

 

AIを使うことに問題がある場合は、AIが正しく、人間が間違っている場合です。

 

実際には、そのようなケースが多発しています。

 

英文の和訳では、AIの翻訳が、人間の翻訳を越えています。

 

もちろん、AIも人間も誤訳をしたり、分かりにくい翻訳をします。

 

なので、「AIの翻訳が、人間の翻訳を越えている」という意味は、AIの翻訳を人間が訂正する必要がないという意味ではありません。

 

しかし、人間が翻訳したあとで、自動翻訳をみると、明らかに、AIの翻訳の方が分かりやすい場合も多くあります。

 

このように、自動翻訳が出てきても、人間の翻訳者は、ゼロにはなりませんが、自動翻訳を併用すると生産性が劇的にあがるので、必要とされる翻訳者の数が激減します。

 

同様のことは、裁判官、弁護士、官僚でも起きています。

 

ひな形があり、内容を更新するような作業は、AIは、効率よくこなします。

 

「AI戦略」は、そのようなAIの弊害(?)をブロックする目的で作られています。

 

なお、検索では、次の文献もヒットしましたが、政府の取り扱いは分かりませんでした。

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次世代人工知能推進進戦略

https://www.soumu.go.jp/main_content/000439134.pdf

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4)双一流

 

双一流(そういちりゅう)とは、世界一流大学・一流学科の略称です。中華人民共和国が2010年代に実施をはじめた高等教育政策であり、21世紀中葉に高等教育強国を築き上げることを目標としています。2017年9月21日、中華人民共和国教育部は42校が一流大学に、140大学から465学科が一流学科に選ばれたことを発表しました。「双一流」は5年に1度見直しが行われます。

 

このシステムは、インデックスファンドに似ています。

 

インデックスファンドでは、業績のよい企業の株を組み合わせます。企業の業績が悪くなると、その企業の株が売られ、その企業は、このパックから外されます。代わりに、業績のよい別の企業の株が購入され、パックに入ります。

 

インデックスファンドでは、トレーダーの主観は入らず透明性が高くなります。

 

野口悠紀雄氏は、クアクアレリ・シモンズ社(以下QS)の大学の世界ランキングと、U.S.Newsの調査を引用しています。

 

世界の一流大学を、インデックスを使って評価して、「双一流」を選択すれば、透明性が高くなります。

 

大学側は、各段の資料を準備する必要がなくなります。

 

この方法の欠点は、レントシーキングができなくなることです。

 

文部科学省は、レントシーキングに拘り、重点大学の申請に、膨大な資料を準備させ、文部科学省が設定した審査委員が審査します。

 

この基準は、QSなどの大学の世界ランキングの基準とはことなりますので、審査を通った大学のランキングが上がるとは言えません。

 

さて、最後に中国語のウィキペディアの「双一流」を紹介しておきます。

 

「双一流」や「次世代人工知能発展計画」を見ると、中国と日本の官僚の間には、大きな能力の差があると感じてしまいます。

 

双一流(世界クラスの大学と一流の学問分野の建設)

世界クラスの大学と一流の学科の建設は「双一流」と呼ばれ、中華人民共和国が2015年から実施している高等教育政策である、21世紀半ばまでに高等教育強国を築くことを目標としている。 2017年9月21日、教育部は建設予定の大学リストを発表し、140の大学から合計465の一流の学科が選定された。 2022年2月14日、国務院の承認を得て、教育部、財政部、国家発展改革委員会は、第2弾の「双一流」建設大学・学科を公布し、「双一流」建設に新たに7つの大学が選定され、「双一流」大学の総数は147となった。

「双一流」構想は、学問分野(グループ)の構築を重視し、世界クラスの学問分野の構築を通じて世界クラスの大学の全体的な構築を推進し、最終的には「双一流」の大学を世界クラスの大学に築き上げることを目指しています。

背景

中華人民共和国教育部

1990年代、中華人民共和国は「211プロジェクト」と「985プロジェクト」を相次いで実施し、一部の大学や専門分野で大きな発展を遂げ、大学の実力を高めた。しかし、この2つのプロジェクトは、選定された大学のアイデンティティが固定化されること、競争の欠如、重複、大学資源の不均衡などの問題を抱えている 。計画を変更し、資源の統合を強化する必要がある。

中国は2011年に「高等教育イノベーション能力強化計画(2011計画)」を実施し、テニュア制度を廃止し、大学間の連携を重視した発展促進を推進しました。2015年以降、2011計画の資金は「双一流」構想に組み込まれました。2020年以降、2011計画の重点プロジェクトも「双一流」構想に組み込まれます。

中華人民共和国教育部は2007年から2014年まで、毎年その業務計画の中で「985プロジェクト」と「211プロジェクト」に言及していた。2013年には初めて「一流大学と重点学科の建設を加速する」と言及した。2014年以降、同業務計画では「双一流」建設に言及している。しかし、2015年以降、「985プロジェクト」と「211プロジェクト」は業務計画の中で言及されていない。

歴史

2015年8月18日、習近平中国共産党中央委員会総書記が主宰する中央改革深化領導小組第15回会議は、「世界一流の大学、一流の学科の建設を協調させる全体方案」を審議・承認した]。2015年10月24日、国務院は「世界一流の大学、一流の学科の建設を協調させる全体方案」を公布した。2016年以降、大学と学科の建設について「双一流」の任務要求を明確に打ち出し、三段階のスケジュールを策定した。世界一流の学科の建設が世界一流の大学の建設を牽引し、「高等教育強国の根本的建設」という最終目標を21世紀半ばに設定した。

2016年2月4日、教育部は『2016年教育部活動重点事項』を公布し、一流大学と一流学科の建設を加速し、「双一流」実施措置を策定することを要求した。 2016年6月3日、「教育部、国務院学位委員会、 国語委員会による一部規範文書の失効に関する通知」が公布され、「国務院弁公庁による行政法規、部門規則、文書の整理に関する通知」(国板判[2016]12号)の要求に基づき、「『985プロジェクト』建設プロジェクトの継続実施についての意見」、「高等教育『211プロジェクト』第三期建設計画補充についての通知」、「『重点特色学科プロジェクト』の実施についての意見」、「『優れた学科イノベーションプラットフォーム』の建設の継続実施についての意見」などを含む一部の規範文書の失効を決定した。最初の2つの文書は、985プロジェクトと211プロジェクトの建設の主な根拠であり、後の2つの文書は、211プロジェクトに該当しない大学が重点支援を受けるための公式文書とみなされている。2016年6月29日、「985プロジェクト」と「211プロジェクト」の一部文書が無効であるとの発表を受け、教育部は新時代の高等教育の重点建設について新たな手配を行うと発表した。985プロジェクト、211プロジェクト、優位性のある専門分野のイノベーションプラットフォーム、特色ある重点専門分野の建設など、これらの重点特色建設プロジェクトはすべて「双一流」に含まれる。現在、教育部などの部門は、2016年に「双一流」建設を開始するための実施方法と支援政策を検討・策定している。

第一期建設

2017年1月25日、教育部、財政部、国家発展改革委員会は「世界一流の大学と一流の学科の建設を協調させるための実施弁法(暫定)」を公布し、5年間の建設サイクルを提案し、2016年から新たな建設を開始するとしました。大学の建設では、総量規制、オープンな競争、動態的な調整が実施されます。同時に、「弁法」は世界一流の大学と一流の学科の建設に関する専門委員会の設立も提案しました。2017年3月12日、第12期全国人民代表大会第5回会議プレスセンターは記者会見を開き、陳宝生教育部長を招き、「教育改革と発展」に関する問題について国内外の記者からの質問に答えました。陳宝生部長は、「ダブル・ファースト」プロジェクトは世界一流の大学と学科の建設を目指していると述べました。その特徴は「中国の特色と世界一流」である。基準は中国の特色と世界一流の有機的な融合である。「双一流」プロジェクトは、「985プロジェクト」や「211プロジェクト」のコピー、アップグレード、または模倣版ではない。部局管轄の大学と地方の大学は、「双一流」プロジェクトの選定範囲において同等である。選定のために「大学」と「分野」の2つのカテゴリに分かれている。選定は「競争選定、専門家選定、政府比較、動的審査」を通じて行われる。大学と分野は競争し、世界一流大学と一流分野建設専門家委員会によって選定され、予備リストが作成されます。政府は国家戦略に奉仕するかどうかに基づいて比較してリストを決定します。最終リストは「985プロジェクト」や「211プロジェクト」のような生涯システムではなく、定期的な動的審査です。 2017年9月21日、教育部、財政部、国家発展改革委員会は、世界一流大学および一流学科の建設に向けた大学・学科リストを発表した。「双一流」リストには、合計140の大学と465の学科が選定された。

2021年12月17日、習近平中国共産党中央委員会総書記は、中央全面改革深化委員会第23回会議を主宰し、「世界一流の大学と一流の学科の建設の深化に関する若干の意見」を審議・承認した。

第2期工事

2022年2月8日、教育部は公式サイトで2022年度業務計画を発表し、「一流大学建設大学と一流学科建設大学のアイデンティティを徐々に希薄化し、一流大学建設大学と一流学科建設大学を総称して「双一流」建設大学と呼ぶ」と明確に提案した。

2022年2月14日、中央全面深化改革委員会第23回会議での審議・承認を経て、教育部、財政部、国家発展改革委員会により『世界一流の大学、一流の分野の建設の深化に関する若干の意見』が公布され、国務院の承認を得て、「双一流」建設大学・建設分野リストが更新され、発表された。第2弾の「双一流」建設大学・建設分野リストによると、新たに7つの大学が「双一流」建設に選定され、「双一流」大学は合計147校となった。また、15大学の16の双一流分野が警告または取り消しとなった。

コンテンツ

ターゲット

「世界一流の大学と一流の専門分野の建設を協調的に推進する全体計画」によると、各大学は一流の専門分野の発展を通じて全体の発展を牽引し、最終的には世界一流の大学となる。世界一流の大学と一流の専門分野の建設を協調的に推進することは、以下の3つの段階に分けられる。

2020 年には、数多くの大学と数多くの分野が世界最高峰のランクに加わり、数多くの分野が世界をリードする分野のランクに加わりました。

2030 年までに、より多くの大学と専門分野が世界最高レベルに達し、多くの大学が世界トップクラスの大学に、多くの専門分野が世界トップクラスの専門分野にランクインし、高等教育の総合的な力が大幅に強化されます。

21世紀半ばまでに、一流大学と一流学科の数と実力は世界トップクラスとなり、中国は基本的に高等教育強国となるだろう。