露出を補正するーその1(darktabel第4回)

アナログ写真を撮るときの基本は、焦点(ピント)と絞りとシャッター速度です。ピントは、静止物を撮影する場合には、マニュアルを使うことがありますが、ほぼ、自動におかませです。カメラとレンズが与えられた場合のカメラマンの腕は、光源をいじれない野外の場合には、構図、シャッター速度、絞りをどのように上手に決められるかかかわります。構図が決まっている場合であれば、シャッター速度と絞りをどう決めるかで写真が決まりました。シャッター速度と絞りについては、カメラの入門書にも説明があるので、ここでは、繰り返しません。しかし、次図にあるようにISOも問題になることは頭の片隅に置いてください。要するに、真っ白な写真や、真っ黒な写真は、明らかに露出の失敗なので、露出を補正する必要があります。

 

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露光



露光

レンズ交換式カメラなどの高価格帯のカメラでは、プログラムモード、絞り優先モード、シャッター速度優先モード、マニュアルモードが設けられていることが多く、絞り優先モードを例えば、オリンパスペンではAであらわしています。口径は英語では、apertureなので、絞り優先モードはAとあらわされているのです。 darktableの画像情報は次のようになっていて、日本語(左)の露光が1/200、英語(右)では、exposureになっています。1/200は露光時間、つまり、シャッター速度の意味になります。

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画像情報


カメラには+/-のマークがついていて、これを増減すると、基準露光量が変化します。アナログ写真の時代に、適正な露光量を求めるときに、標準的なグレーのパネルを準備して、それを写した場合に、絞りとシャッター速度が適正になるように、オートの操作系を決めました。したがって、画面の中の白黒の平均値が、基準グレーより、ずれれは、基準露光量は適切でなくなるため、カメラマンが、基準露光量を修正する必要が生じます。特に、画面全体が、黒っぽかったり、白っぽかったりする場合は、自動では、露光量が適切でなくなります。典型的な場合は、雪や晴天時の砂浜があります。この場合には、基準露光量をシフトする必要があります。

このようなわけで、カメラのオートは、基準露光量が、適切でない場合には、露出が過多、または、過小になるという暗黙の約束がありました。これに対して、現在のデジカメでは、光量を測定し、シーンを自動判別して、自動的に露出を調整するオートモードがついています。つまり、2種類のオートモードがあるわけで、実際に、2種類のオートモードを採用しているカメラもあります。しかし、こうした経過を知らない人には、オートモードの違いは分かりにくいので、最近では、2種類以上のオートモードを採用するカメラは減っていると思います。

デジタルカメラの特徴

フィルムカメラの時代には、ISOはフィルム1ロールは同じで、予想される状況にあったISOのフィルムを選んで、カメラにセットすると、1本撮り終わるまでは、ISOは変えられませんでした。また、ISO感度も、64から1600くらいまでで、ISO800以上はノイズが乗るので、積極的には使いませんでした。この場合には、絞り優先で、撮影すると、基準露光量から、カメラがシャッター速度を自動で設定してくれます。基準露光量が不適切な場合には、シフトをすれば、シャッター速度が自動的に補正された値になります。これが、絞り優先モードの本来の意味です。

デジタルになって、2つの大きな変化が起こります。手振れ補正とISOの拡大です。

手振れ補正

フィルム時代には、プロのカメラマンは出来る限り三脚をつかうことが原則でした。アナチュアが、ほとんどサービスサイズでしかプリントしませんでしたが、A4以上の用紙に印刷し、あるいは、リバーサルフォルムをプロジェクターで投影すると、手持ちの場合には、問題点がみつかることが普通でした。シャッター速度も、1/60秒よりながくなると、ほぼ、手振れの影響が現れました。現在では、1/15秒以上を手持ちで撮影できることがあります。もちろんその限界は、カメラの性能と、カメラマンの技量に依存しますが。また、コンパクトカメラでも、マルチショットを使って、シャッター速度限界を超えている場合があります。これは、1/15秒の代わりに、1/60秒の写真を5枚とって合成することで、手振れを防ぐ方法です。要するに、三脚を使わずとも、手振れをおこさす、許容できるシャッター速度の最大値が大きくなったのです。

ISO感度

ここのところ、ISO感度の上限は、とどまるところを知らない感じで、フルサイズカメラであれば、1万前後でも問題がないという人もいます。そこで、ISOを積極的に上げて撮影する方法も、実用性がでてきました。

以上の2つは、露光量の三角形に直接に関係します。ですから、アナログ時代の制約に縛られずに、自由に写真をとってもよいという考えが発生します。アナログ時代と同じ方法で撮影するのであれば、ISOは固定にしなければならないのです。しかし、ほとんどの場合には、ISO自動で撮影が行われています。次にその実態を見ます。

絞り優先で露光量を変化させる例

それでは、実際に、基準露光量を+2ev,-2evにシフトした例を次に示します。基準露光量が適切でなくなることが多いことは、よく知られているので、保険をかけるために、カメラの基準露光量だけでなく、その上下も併せて、一度に3枚の写真をとっておけば、どれかが、適正露光量になる可能性が高くなります。特に、あとで、取り直しの効かないシャッターチャンスでは、この方法は有効です。一度に、複数の写真を撮影する方法は、マルチショットと呼ばれます。マルチショットの典型は、動いている対象物を連続して、撮影する方法ですが、露光量を変化させる方法も、マルチショットの一部になります。対象物が静止していて、マルチショットで、撮影条件を変える方法をブランケット撮影といいます。次は、ブランケット撮影で露光量を変えています。

 画像は、RAWとJPEG双方で保存するように設定してあります。基準露光量の場合(0EV)は、絞りF3.5、シャッター速度1/60秒、ISO250でした。これが、-2EVでは、絞りF3.5、シャッター速度1/60秒、ISO100に、絞りF3.5、シャッター速度1/60秒、ISO1000になります。ここでは、露光量を変えるために、シャッター速度が変化する場合と、ISOが変化する場合、その両方が変化する場合があります。

シャッター速度は手振れを防ぐために、1/60秒以下に設定されています。そこで、+2evでは、シャッター速度が変化せず、ISOが変化したのです。三脚を使う場合には、1/60秒の制約を外した方がよかったかもしれません。絞り優先で、撮影した場合に、シャッター速度とISOがどのように設定されるかは、

  1. シャッター速度の制限

  2. ISOの制限

  3. 各社のアルゴリズム

によって、異なります。なお、各社のアルゴリズムとは、条件によって、シャッター速度とISOのどちらを優先するかとういう判断で、これには、メーカー固有の癖があると思います。例えば、ニコンオリンパスを比べると、ニコンの方が、シャッター速度優先が強いように思われました。

ここでは、カメラマンによって考え方は2つに分かれると思います。

  1. 絞りの値が固定であれば、被写界深度が同じなので、シャッター速度とISOにはこだわらない。

  2. どのよう写真を撮るかは、自分で判断したいので、できれば、シャッター速度とISOを自分で決めたい。

残念ながら、現在のカメラの撮影体系は、ISOが大きく変動することを前提としていないため、2番目は非常に困難です。

セットになっているRAWとJPEGでは、同じ情報がEXIFに記録されています。最近のカメラは、暗いところでも使える高感度特性がよく、ISOが3200以上でも問題がないといわれます。暗いシーンは高いISOをいう連想が出来ている人も多いと思います。これは、暗いところを明るく写すためには高いISOが必要になるということです。ここでは、明るいところを、暗く、写すので、ISOは逆に小さくなります。ブランケットは、露光量レベルを-2ev,0ev,+2evと3段階に変える設定です。ISOは自動で、100から1600に設定してあります。絞りは固定になっているので、絞り優先モードが有効になっていることが確認できます。

 

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露光のブランケット撮影

 

今日は、説明が長くなったので、後半は次回に続けます。