ブランケット撮影の一般理論
筆者は、デジカメが、フィルムカメラと根本的に異なる点は、ブランケット撮影(マルチシーン合成)ができる点だと考えています。
しかし、ブランケット撮影を、しっかりと扱ったテキストはありませんし、ブランケット撮影については、標準規格フォーマットもありません。
そこで、わかる範囲で、ブランケット撮影を整理してみたいと思います。
なお、今回のブログで、ブランケット撮影というのは、マルチシーン合成全般をさすつもりです。
つまり、次のようなものは、全て、ブランケット撮影です。
1)ブランケット撮影
2)パノラマ撮影
3)HDR撮影
4)フォーカス合成撮影
5)ハイレゾ撮影
6)拡張ダイナミックレンジ撮影
問題が多数あります。
1)ブランケット撮影以外では、編集後のJpegファイルは保存されますが、合成RAWファイル、撮影したすべてのRAWファイルが保存されることはまれです。
このあたりは、メーカー、機種で、規格がバラバラで非常に、使いにくいです。
ブランケット撮影の歴史
ブランケット撮影は、フィルム時代から始まっています。
つまり、ISOは固定で、露光を調整する手段として、ブランケットが始まっています。
ブランケットでは、撮影モードにより、絞り、または、シャッター速度を変化させます。
撮影モード 変化する内容 P(プログラムオート) シャッタースーピード・絞り値 S(シャッタースピード優先) 絞り値 A(絞り優先) シャッタースピード M(マニュアル) シャッタースピード
これは、フィルム時代ですので、露光を変えて、3枚の写真を撮影した、後で、3枚の中から、ベストな写真を選ぶという発想です。露光を変えれば、白飛びまたは、黒飛びの発生が変化するという発想です。
この発想が、そのまま、デジタルカメラに、持ち込まれて、しまいます。
例えば、次のような、設定が良く使われます。
絞り優先モードで、F8に固定 ISO感度は最低感度に固定 ホワイトバランスはオート オートブラケットは±2EV、3枚撮影
これは、絞りを変えなければ、被写体深度が変化しないので、オーバーレイできるマルチショットが得られるという考え方です。
一方、「6)拡張ダイナミックレンジ撮影」の目的では、ISOを変化させた、ブランケット撮影が使われています。
動いている被写体に対しては、こちらの方が、合理的です。
絞りの意味
写真撮影の基本は、絞りの調整です。動いている被写体に対しては、シャッター速度優先モードをつかうこともありますが、例外的です。
ISOを優先の撮影も、順列組合せでは、あり得ますが、この手法を用いているカメラマンは、夜空の撮影など、例外的です。そもそも、普通のデジタルカメラで、絞りや、シャッター速度を同じレベルで、ISOを簡単に変更できる機種は少ないです。
4つの撮影モードのあるカメラでは、9割は、絞り優先モードが使われていると言われています。
絞りが多用されるのは、絞りが被写体深度を決めるからです。
フィルムカメラの時代であれば、絞れば絞るほど、被写体深度が深くなります。
解像度を上げるには、絞れということです。
これが、デジタルカメラになると、絞りすぎると、センサーピッチによる回析がおこります。
フルサイズセンサーのカメラで、1000万画素のカメラがあり、画素数を増やさない理由は、ノイズを減らすためと書かれている本が多いですが、最近のサンサーは性能が良いので、筆者は、一番の問題は、回析対策ではなかいと考えています。
センサーの小さなカメラでは、F8からF11位が、回析の影響の出にくい絞りの上限で、それ以上絞る場合には、回析を覚悟する必要があります。フルサイズセンサーのカメラで、1000万画素の場合には、更に絞っても問題が出にくいはずです。
つまり、絞った写真を撮るために、フルサイズセンサーで、画素数の少ないカメラを使う必要があります。
フォーカス合成の威力
ところが、フォーカス合成が出てきた結果、被写体深度と絞りの間には、1対1の対応がなくなりました。
フォーカス合成は、ピントに合っている範囲の画像を繋ぎ合わせて、1枚の画像をつくります。
フォーカス合成の実例は、マクロ撮影が多いので、マクロ向きの機能と思われています。
しかし、フォーカス合成を使えば、F8で撮影した、画像を組み合わせて、F22以上の被写体深度の画像を作ることができます。
現在のフォーカス合成はフォーカスのあっている部分を合成していますが、フォーカスのあっている部分の一部をフォーカスのあっていない部分に画像で、合成すれば、ボケをつくることができます。
つまり、フォーカス合成を前提に考えると
「絞り値<=>被写体深度」
というカメラのテキストにある基本は、使えないことになります。
今回は、ここまでです。
ブランケット撮影の研究をしなければならない理由はわかってもらえたと思います。
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