パラダイムと集団思考~集団思考の事例研究(3)

パラダイム集団思考

パラダイムは、クーンの提唱した概念です。

なお、日本語版のwikiは理解できなかったので、基本、英語版を使っています。

オックスフォード哲学辞典の説明は以下です。

クーンは、ニュートンのプリンシピアやジョン・ドルトンの新しい化学哲学のシステム(1808)などの特定の科学的研究が、自由形式のリソース、つまり、後続の研究が構造化される概念、結果、および手順のフレームワークを提供することを示唆しています。 通常の科学は、そのような枠組みまたはパラダイムの中で進行します。 パラダイムは、厳格なアプローチや機械的なアプローチを課すことはありませんが、多かれ少なかれ創造的かつ柔軟にとることができます。

言い換えますと、実際の科学実験や調査をする上では、理論とデータ以外の構造化される概念、結果、および手順のフレームワークに依存しています。

手順のフレームワークは、操作主義と見ることもできます。

クーンは、科学は、データとデータを支える理論だけでなく、それ以外のパーツを含んでいること、そのパーツの世代交代(パラダイムシフト)が起こることを提唱しました。

科学哲学の説明では、引用されないクーンの分析結果に、パラダイムシフトは、世代交代によってしか起こらないという結果があります。

今回の問題提起は、この部分です。パラダイムは、特定の分野の科学者集団で、共有されます。そして、クーンは、パラダイムシフトは、年寄がリタイアして、世代交代が起こって、実現するといいます。典型的なパラダイムシフトには、ニュートン力学から、相対性理論への変更があります。クーンによれば、アインシュタイン相対性理論を発表しても、物理学者の誰もが、相対性理論を常識として理解して活用するまでには、世代交代の時間が必要です。

第1の論点は、パラダイムシフトにかかる時間が、世代交代の時間より、大きい場合も、小さい場合もあるだろうということです。

第2の論点は、ある集団がパラダイムシフトに乗り遅れてしまう、つまり、古いパラダイムから抜け出せない場合があるだろうということです。この場合には、古いパラダイムは、集団思考です。

つまり、2つの論点を合わせると、

パラダイムシフトの速度>ある集団のパラダイムシフトにかかる時間

の場合には、集団思考が発生するはずです。

第1の論点の速度が速い例は、情報科学です。一昔前には、知識の半減期は7年といわれていましたが、AIが出て、更に、パラダイムシフトの時間が短縮しています。世代交代まで、パラダイムを入れ替えない生活習慣では、10年たたずに廃人になってしまいます。基本的な速度はムーアの法則が決めていると思われます。

第1の論点の遅い例は、年功型の組織です。これは、時定数が大きいうえに、新人に組織のルールを教え込もうとしますから、世代交代によるパラダイムシフトをさらに遅れさせています。

つまり、

パラダイムシフトの速度の速い分野>パラダイムシフトにかかる時間が特に大きな集団

デジタル化>年功型組織

になります。

この図式が、合っていれば、日本がIT後進国であるのは、年功型組織が、集団思考になっているためであると要約できます。

 

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