ミームの研究(3)4つのパラダイム

(グレイ氏のパラダイム論とミームの関係を考えます)

1)グレイ氏のパラダイム

 

マイクロソフトのグレイ氏は、科学には、経験科学、理論科学、計算科学、データサイエンスの4つのパラダイムがあると考えました。

 

クーンのパラダイム論では、科学は、パラダイムを交代しながら、あるところでは、不連続に進化します。

 

この2つを組み合わせれば、少なくとも次の同じ対象に対して、次の科学のパラダイムのシフトが起こっていることになります。

 

経験科学=>理論科学

経験科学=>計算科学

経験科学=>データサイエンス




図1は、そのイメージを示しています。



図1 パラダイムの交代



 

 

計算科学が出現した結果、それまで、理論科学では、解けなかった問題が解決可能になりました。このパラダイムシフトは、次のように書けます。

 

理論科学=>計算科学

 

同様に次のパラダイムシフトがあります。

 

理論科学=>データサイエンス

 

計算科学=>データサイエンス

 

つまり、データサイエンスは、既存の経験科学、理論科学、計算科学を侵食しておおきくなっています。

つまり、図1には、修正が必要です。

 

ただし、線の細かな修正をした絵は書きにくいので、以下では、図1は、修正を含んでいるものとして扱います。



一方、クーンは、パラダイムを乗り換えることは極めて困難で、世代交代が必要であると考えました。

 

2)ミームパラダイム

 

クーンは、パラダイムを乗り換えるには、世代交代が必要であると考えましたが、これは、世代交代すれば、パラダイムの乗り換えができる訳ではありません。

 

パラダイムは、世代をこえて引き継がれることもあります。

 

その場合には、パラダイムは、ミームになります。

 

理論科学と計算科学の根幹は、決定論の世界なので、ミームを大くくりにすることはできます。

 

こうすると、経験のミーム決定論ミーム、確率論のミームが整理できます。



図2は、科学のミームを表しています。




図2 科学のミーム



 

 

 

3)縦軸の課題

 

図2では、縦軸は、パーセントにとってありますが、何のパーセントかが明示していません。

 

これは、縦軸の選択には、自由度が高いことを示します。

 

企業の3つのミームに分けることも可能です。

 

アメリカの株式評価額は、GAFAMに偏っています。

 

これから、図2をアメリカの企業の評価額に置けば、データサイエンスのシェアが大きくなります。

 

従来の産業区分は、1次、2次、3次産業でした。

 

3次産業には、観光とIT産業が含まれます。

 

この2つの生産性は大きく異なります。

 

なので、産業区分は、科学のミームに従った方が合理的です。

 

縦軸を人口にとることもできます。

 

人口の多いミームは、経験のミームです。

 

一方、アメリカでは、GDPの多いのは、確率論のミームです。

 

経験のミームでは、確率論のミームの結果は理解できません。

 

教育によって、確率論のミームを理解できる人を増やすべきですが、確率論のミームが理解できる人の割合を50%以上にするのは、容易ではありません。

 

従来の民主主義では、識字が出来れば、自分で考えて、正しい投票が可能であるという前提がありました。

 

しかし、産業の中心が、確率論のミームで構成されてきる現状では、確率論のミームが理解できなければ、自分で考えて、正しい投票をすることは不可能です。

 

なぜなら、確率論のミームが理解できないと、データサイエンス産業が、まともな産業が、単なるピンハネ産業なのかの判断ができません。

 

こう考えると、アメリカで民主主義の分断が起こることは、必然的な結果になります。

 

経験のミームの人に、確率論のミームで構成されている内容を話せば、わかることはありません。

 

話せばわかるのであれば、確率論の学習は不要になります。

 

まだまだ、考える余地がありますが、グレイの4つのパラダイムのメガネを通して、世界を見ると、色々な発見があります。