Jpeg編集ソフトとしてのdarktable(darktable3.0第8回)

2020-03-21 作成

2020-03-25 改訂

Jpegファイルの存在

RAW現像ソフトは、デジカメのRAWファイルを現像することが目的です。たとえば、デジカメの画像データがJpeg中心であった時には、アドビ社の写真編集はPhotoshopで行いました。RAWになって、Lightroomが出てきました。

写真編集ソフトは次の2グループに大別できます。

darktableとくに、RGBワークフローを使うようになって、RAWとJpegの劇的な違いに気づいて、画像はできるだけRAWで撮影、保存するようにしています。RAWで撮影するというのは、Jpegの露光を無視して、RAW優先の露光で撮影するという意味です。

しかし、手もとには、古いJpegファイルがありますし、望遠コンデジや、スマホのように、RAWをサポートしていない機種もあります。最近では、RAWサポートが広がっているので、うれしいことですが、手持ちの機種では、非サポートもあります。

gimpの問題点

こうした状況では、Lightroomの購入はともかく、今更、Jpegだけのために、photoshopを購入するのもないだろうという気もします。なので、gimpが考えられる選択肢になります。ただし、gimpには次の問題点があります。

  1. データ長が2.8までは、8ビットでした。この問題は、2.10で解決されています。

  2. 言及されていることがほとんどないのですが、混色の演算が、darktableとは違います。darktableと同じ混色になるソフトはKritaです。

2.は、今後も解決されることはないと思われます。なので、darktableを使う選択肢もありと考えます。

カメラ付属のRAW現像ソフトとdarktableの比較

Nikon、Cannon、Olympusのカメラを持っているので各社のカメラのRAW現像ソフトをdarktableと比較してみました。これらのソフトでは、Jpegと各社のRAWフォーマットファイルが読み込んで編集できます。なお、昔、Pentaxの付属RAW現像ソフト(SilkypixOEM版)を使ってみたところ、EXIFを読んで、他社のカメラで作成したJpegがサムネイルで表示されないというすごい仕様になっていました。RAW現像ソフトを自社で作っている3社については、Jpeg編集上のそうした不都合はありません。

なお、darktableはCannonのCR3フォーマットにまだ対応していませんが、これは、CR3フォーマットはDNGフォーマットに変化しないとライトテーブルで表示されないことを意味するので注意してください。

RAW現像の機能が多いのは、Nikon, Cannon > Oylupusですが、Jpegの編集可能性は、Olympus > NIkon, Cannonでした。NikonやCannonのRAW現像ソフトでは、Jpegファイルはホワイトバランスを変更できません。この2社のソフトは古いバージョンに比べると大幅に機能強化されましたが、RAWでしか操作できない機能が増え、メニューから使える機能を探すのが大変なので、Jpeg編集は、やりにくいと思います。Olympusは、RAW現像機能は2社に比べると、基本的な操作に限定されますが、Jpegで変更できる機能は、こちらの方が多いです。

darktableのJpeg編集機能は、Nikon、Cannonよりはるかに多いです。

サンプル1は、PanasonicJpegをdarktableで編集したものです。使うべきか、否かは別にして、darktableとOlympusのRAW現像ソフトでは、Jpegでも、基本的には、全てのモジュールが使えます。Nikon,CannonはJpeg処理できるモジュールが限定されます。この2社のソフトの画像処理のパイプラインの設計思想は、darktableと異なっていると推定されます。

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サンプル1

 

OlympusのRAW現像ソフトでもほとんどのRAW編集機能がJpegでも使えます。ただし、一部では不具合が見られました。サンプル2は、サンプル1と同じ、jpegOlympusのRAW現像ソフトで処理した例です。空の部分にノイズが載っています。

 

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サンプル2

 

Olympusのカメラでは、色々なフィルターが使えることがセールスポイントになっています。サンプル3はサンプル1と同じJpegファイルにドランチックシーンのフィルターを適用した例です。ここでも、サンプル2と同じように、空の部分にノイズが載っています。ただし、これは、他のアートフィルターではおこりません。

なお、darktableでアートフィルターに相当する機能は、スタイルファイルになります。ただし、これは、トーンカーブを変更するので、RGBワークフローでは利用はおすすめできません。

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サンプル3

 

まとめ

Nikon,Cannon,OlympusのRAW現像ソフトとdarktableをJpegを編集するという立場で比較してみました。

Nikon,Cannonのソフトよりも、darktableじは編集可能なモジュールが多いので、Jpegで撮影した画像データの編集には、Nikon,Cannonの場合は、カメラメーカーのRAW現像ソフトに加えて、darktableを使ってみる価値があります

OlympusのカメラのRAW現像ソフトを使っている場合には、Jpeg編集のために、darktableを使うメリットは小さいと思います。もちろん、モジュールの種類が多いこと、一部で、生ずるノイズの発生が少ないことから、darktableを使うメリットはありますが、その差は、Nikon,Cannonに比べれば小さいです。

おまけ:ヘイズ除去からみるカメラメーカーの戦略

ヘイズ除去とはPhotoshopに2015年頃に追加された靄をとる機能です。darktableやRawTherapieには既に搭載されているので、3社のRAW現像ソフトにも搭載されているだろうと思いましたが、機能を確認できたのは、Olympusだけでした。

ところで、darktableやRawTherapieはソースコードが公開されていますので、ヘイズ処理のソースコードを解読して、アルコリズムを確認して、自社のRAW現像ソフトに組み込むリバースエンジニアリングは、決して難しいことではありません。大学のレベルで言えば、マスターレベルで十分に可能な作業です。

こう考えますとOlympus以外のカメラメーカーが、ヘイズ処理を組み込めないのには原因があるはずです。一般に考えられる理由は次の2つのいずれかでしょう。

  • リバースエンジニアリングが可能なレベルのソフトウェア技術者がいない。

  • 能力のある技術者はいるが、リソースを配分できない。

能力のある技術者いるがその絶対数が少ない、経営不振で、人数を減らして、ともかく新規開発をする人的リソースが不足しているなど、実際には、双方が当てはまると思います。特に、RAW現像ソフトは単品で販売しているわけではないので、人的リソースを配分しても、目に見える利益が上がるわけではありません。この点では、最近は万年赤字のOlympusだけが対応していのもうなずけます。他のメーカーは、RAW現像ソフトは、他社に遅れないでバージョンアップしているイメージを維持するために、赤字にならないレベルで、いやいや最低限の機能更新をしていると思われます。さらに、RAW現像ソフトは、SilkypixOEM版にしているカメラメーカーもあります。現在でしたら、darktableやRawTherapieを指定ソフトにしてしまい、開発に寄付をする戦略もあります。実際に、GISではオープンのQGISに寄付をして、業務に使っている会社もあります。問題は、RAW現像は、カメラのおまけ機能ではなく、カメラの主体機能になってしまったという点にあります。この場合には、RAW現像ソフトを外注してしまうと、カメラメーカーではなくなり、レンズメーカーしか残らくなります。

サンプル4はiPadProで撮影した写真です。右下の周辺がすこし、崩れていますが、中間トーンは非常にきれいに再現されれいます。現時点で、ここまで中間トーンを表現できるカメラメーカーはいないと思います。これは、全て、画像処理のアルゴリズムによっています。このレベルのアルゴリズムを実装できる技術力が、カメラメーカーにはないのです。もちろん、販売台数の圧倒的な差が、かけられる開発コストの差として大きく効いているのですが。

おそらく、デジカメメーカーの競争相手は、スマホだけでなく、Raspberry Piのカメラや、ロジクールのカメラのはずです。

ヘイズ処理をみていくと、このように、現在のデジカメメーカーの製品開発戦略がすでに破綻していることがわかります。

 

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サンプル4

 

目次

Darktable事始め(darktable3.0第1回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2019/10/10/000917

Version3.0.1のリリース(darktable3.0第1回追補)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/13/215303

RGBワークフローの非推奨モジュール(darktable3.0第2回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/13/000000

RGBワークフローの基本操作(darktable3.0第3回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/15/000000

RGBワークフローの基本操作(darktable3.0第4回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/16/000000

RGBワークフローの基本操作(darktable3.0第5回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/17/000000

RGBワークフローの基本操作(darktable3.0第6回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/18/000000

フイルミックRGBの基本操作(darktable3.0第7回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/20/000000

Jpeg編集ソフトとしてのdarktable(darktable3.0第8回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/21/000000

トーンイコライザーの使い方(darktable3.0第9回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/22/000000

フォーカスピーキングモードの使い方:フードフォト編(darktable3.0第10回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/23/000000

カラーゾーンの使い方(darktable3.0第11回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/24/000000

カラーゾーンの使い方:桜の事例(darktable3.0第12回)

予定