(科学のミームの欠如に注意すべきです)
1)「人口戦略会議」の人口予測
「人口戦略会議」の人口予測が公表されました。
あまりに、非科学的なので、コメントを書いておきます。
毎日新聞は次のように要約しています。
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民間の有識者らで作る「人口戦略会議」は24日、全自治体の4割に当たる744自治体で、人口減少が深刻化し、将来的に消滅の可能性が高い「消滅可能性自治体」に該当するとの試算を公表した。2020~50年の30年間で、子どもを産む中心世代となる20~30代の女性の人口が50%以上減少する推計を根拠とした。日本創成会議が14年に公表した896自治体より減少した。
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<< 引用文献
744自治体に消滅の可能性 全国の4割 人口戦略会議が試算 2024/04/24 毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/e4eee359d38bf9c2fda8693f0efc35e3cc1cf7ae
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原資料は、以下で入手できます。
<< 引用文献
【人口戦略会議・公表資料】『地方自治体「持続可能性」分析レポート』2023/04/24
https://www.hit-north.or.jp/information/2024/04/24/2171/
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今回は、2014年の分析を踏まえつつ、新たな視点として、人口の「自然減対策」(出生率の向上)と「社会減対策」(人口流出の是正)の両面からの分析を行っています。
2014年は、「社会減対策」を扱っていなかったようです。
2)問題点
コホート分析は、1歳の子どもが20歳になる20年後までは、出生可能な女性の数を正確に予測できます。この部分は、因果モデルです。その先はトレンドモデルであって、因果モデルではありません。
つまり、「2020~50年の30年間」を一律に扱うことは、統計処理の間違いです。
これが気にならない理由は、トレンドと因果モデルの区別ができていないからです。
出生率は、所得の関数です。所得が原因で、出生数(結果)が決まります。
つまり、所得を無視した人口予測は、因果モデルを無視しているので、科学的に間違いです。
『地方自治体「持続可能性」分析レポート』は、帰納法と中抜き経済に洗脳されています。
ここには、法度制度のミームが働いています。
市場経済と因果モデルで考えれば、最大の課題は、生産性をあげて、所得をあげることです。
これがデザイン思考の問題解決法です。
トレンドは、因果ではないので、運命でも、必然でもありません。
北海道のニセコ町のように、時給が5000円になれば、人口移入が起こり「社会減対策」は不要になります。所得が増えれば、出生率も上がります。
少子化対策に、外国人労働者をいれるべきと主張する人もいます。
しかし、賃金が上がらなければ、外国人労働者は日本にはきません。
因果モデルで考えれば、原因は、賃金が安いことであり、市場経済を無視した中抜き経済が幅をきかせていることにあると推測できます。
過去のEUの最貧国のアイルランドは、現在は、IT先進国になり、EUで最も豊かな国になりました。
アイルランドでは、ふるさと納税のような中抜き経済は行なっていません。
日本の地方自治体で、外国人が、全て英語で生活できる環境を整備したところは少ないと思います。
年功型雇用で、公務員の英語のトレーニングをするのではなく、ジョブ型雇用で、英語の出来る人を2倍位の賃金で雇う方法が市場経済です。
中抜き経済をやめない限り、若年層の賃金は上がらないので、出生率はあがらないはずです。
トレンド予測では、人口が減ります。移入と移出はゼロサムです。
全ての自治体の人口が増加することはあり得ません。
つまり、この問題提示は、不可能問題になっています。
因果モデルで考えること、帰納法ではなく、デザイン思考をしないと解決策は見つかりません。
人口が減っても、自治体が経済的に維持できれば、消滅することはありません。
問題は、自律した経済活動ができてないことにあります。