Darktable事始め(darktable3.0第1回)

2019-10-09作成

2020-03-08改訂

2020-03-09改訂

2020-03-25改訂

darktable3.0とは何か?

筆者は、2019年10月から、darktableを使い始めました。そのときには、darktableのバージョンは2.6で、数あるRAW現像ソフトの一つでした。darltableは毎年クリスマスにバージョンアップします。2019年のクリスマスには、darktable3.0がリリースされました。

darktable3.0は、darktable2.6のバージョンアップではなく、他に例のないまったく新しいRAW現像ソフトです。

このWEBを参照されている方は、カメラメーカー付属のRAW現像ソフトを使ったり、LightroomPhotoshopを使ったり、RawTherapieを使ったことがあったり、あるいは、これから、使ってみようと考えられていると思います。そうした中で、darktableを使うべきか考えていると思います。

筆者も最初はそうしたユーザーの一人でした。WEBを見たり、you tubeを見ると、darktableのモジュールの説明があり、モジュールの使い方をひとつひとつマスターしていけば、思うようなRAW現像ができると考えていました。この記事の最初のバージョンはそうした立場で書かれました。

しかし、クリスマスにdarktalbe3.0が出て、世界が変わりました。

3.0では、RGBワークフローというベースカーブに代わるワークフローが本格的に導入されました。darktableには現在77のモジュールがあります。RGBワークフローによる現像では、従来のLab色空間をつかった現像は、問題があるとして退けられます。77のモジュールのうち、17のモジュールは利用が推奨されないモジュールで、従来の操作と互換性のために残されるが、新規ユーザーは使うべきでないとされます。さらに、3つのモジュールは注意して使う(使わなくて済むならば使わない方がよい)モジュールに指定されました。

これらを推奨しているのは、RGBワークフローとフィルミックRGBモジュールの開発者であるAurélien PIERREさんです。もしも、77のうち20のモジュールを廃止するのであれば、今までの、darktable開発者のうちの1/3くらいの人は、「あなたの開発したモジュールが使い物にならないので、削除する」といわれていることになりますので、心穏やかでない人も多いはずです。筆者のこの後に続いて書いたdarktableの記事も1999年分は、ほぼ、削除対象になります。ですので、3.0のマニュアルは、両論併記で、ここまで過激ではありません。

また、WEBやyou tubeにはRGBワークフローを正しく理解できていない解説も多々あり、それが、更に混乱を深めています。混乱を避けるには、次のように割りきった方がよいと思います。

darktable3.0には、darktable2.6以前の使用法は参考にならない。

PIERREさんはRGBワークフローを使えば、次のわずか4つのモジュールで処理の少なくとも80%を実行できるといいます。

  1. 露光

  2. ホワイトバランス

  3. カラーバランス

  4. フィルミックRGB

RGBワークフローはあまりに劇的な変化です。ですから、背景の理論を理解せずに、試行錯誤で使い方をマスターするのは、きつい部分があります。理論については、このブログの「RGBワークフローへの道」で書いていますので、そちらをご覧ください。とはいえ、理論は書く方もきついので、読む方も容易ではないでしょう。

なので、これから、2.6の古い記事を順次改訂して3.0に合わせてみたいと思います。

第1回目の参考にRGBワークフローの例を示します。左が、RGBワークフローです。右が、従来のベースカーブを使ったワークフローです。RGBワークフローの特徴は、広いダイナミックレンジを保持するため、中間トーンは滑らかに表現できる点です。

なお、RGBワークフローが関係するのは、トーンと色関係のモジュールになります。トリミング、レンズ補正等の形状に関するモジュールは影響をうけません。逆にいえば、2.6までのトーンと色に関するモジュールは露光とホワイトバランスを除けば、ほとんど作りなおす必要があります。 

 

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RGBワークフローの例

ベースカーブワークフローの問題点

darktable3.0以外のRAW現像ソフトは、多少の差はありますが、全て「ベースカーブワークフロー」を採用している点で共通しています。このワークフローの問題点は以下です。

  • ベースカーブを使うことで、RAWデータの暗部の情報を切り捨ててしまうため、中間トーンが表現できない。(明と暗の対比画像になってしまう。上の画像参照)

  • Lab色空間を使うとダイナミックレンジが6.5EVを超えるとトーンと色が独立でなくなり、モジュールがうまく機能しない。

いいかえれば、RAWのダイナミックレンジが6.5EV以下であれば、従来のワークフローは機能しますが、これを、超えると、破綻してしまう。

つまり、ダイナミックレンジで言えば、理論的な最大値は、RAW(12EV)、Jpeg(8EV)ですが、実際のダイナミックレンジはセンサーとプリンタの性能のためRAW(8EV)、Jpeg(8EV)、Lab色空間(6.5EV)、印刷(7EV)しかなく、これらが、ほぼ、6.5EVに収まっていたため、ワークフローの破綻が目立たなかったのです。darktable3.0以外の現在のRAW現像ソフトがそれなりに機能しているのは、RAW現像の早い段階で、ベースカーブを通して、ダイナミックレンジを6.5EV以下に切り捨てているからであると思われます。

この状態はセンサーのダイナミックレンジが8EV以下であった、2010年頃まで続いていて、それは、現在のカメラの露光が、RAWとJpeg独立に設定できないことに現れています。RGBワークフローでは、RAWしかあつかいませんので、撮影時に、カメラに表示されるJpegの明暗に関係なく、白飛びしない最も明るい露光を選択して撮影する必要があります。過去のとったRAW画像データで、露光がJpegに引っ張られて適切でない場合には、RGBワークフローは十分にその能力を発揮できないことがあります。

現在のセンサーのダイナミックレンジは最大で14EVあるので、今までのワークフローは、センサーの性能を全く引き出せていないことになります。

darktable3.0のトーンイコライザーを使うと、画像のダイナミックレンジをチェックすることができます。

筆者のスマホJpeg画像は、2EV以下のこともあり、悲惨な状況です。

フルサイズセンサーのカメラのメーカーのWEBにはサンプル画像が提供されている場合があります。RAWのサンプルは少なく、ほとんどはJpegですが、この画像をダウンロードして、ダイナミックレンジを調べることができます。センサーのダイナミックレンジは14EVあるのですが、多くのJpeg画像のダイナミックレンジは4EV以下です。印刷時に破綻しないメリットはありますが、大型センサーをつかうことによるダイナミックレンジの長所はほとんど失われています。

注)カメラのダイナミックレンジは以下で調べられます。

1.7インチコンデジであるキャノンのPowerShot G11,G12,G16のダイナミックレンジは全て8EVです。

G11の発売が2009年10月2日で、最後の機種G16の発売は2013年 9月12日でした。

http://www.photonstophotos.net/Charts/PDR.htm

darktable3.0の問題点

クリスマスから2か月間実際に、RGBワークフローを試したり、情報収集しました。その結果、RGBワークフローは、濃淡のトーンについては、ほぼ問題を解決してると思います。ただし、色については、未完成です。この点については、開発チームも理解していて、今後モジュールを改訂または追加する予定のようです。

開発チームは使用が推奨されない、あるいは改訂すべきモジュールはほとんどが2010年頃にコーディングされてものであるといっています。つまり、6.5EVのワークフローが合理性を持っていた時代に作られています。

次の大きなバージョンアップは、今年のクリスマスになりますので、その時点では、色の問題も解決していると思われます。

ですから、全面的にRGBワークフローに乗り換えるべきかは、これらを勘案しての判断になります。

darktable利用上の注意点

WINDOWS版の印刷

windows版のdarktableには印刷モジュールがありません。印刷する場合には、作業ファイルをいったんJpegに保存して、プリンターのユーティリティを使うか、Jpegを読み込んで、印刷できるソフトを使う必要があります。

キャノンのCR3の対応問題

キャノンは、最近になって、RAW画像のフォーマットを従来のCR2から、CR3に変更しました。CR3の仕様は公開されていないようです。CR3タイプのRAW画像ファイルには、2019年9月現在では、darktableはまだ対応していません。解決には、もう少し、時間がかかると思われます。CR3のRAWファイルは、ライトテーブルには表示されません。現時点で、CR3ファイルを編集する場合には、アドビのソフトでdngに一度変換する必要があります。

 目次

Darktable事始め(darktable3.0第1回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2019/10/10/000917

Version3.0.1のリリース(darktable3.0第1回追補)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/13/215303

RGBワークフローの非推奨モジュール(darktable3.0第2回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/13/000000

RGBワークフローの基本操作(darktable3.0第3回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/15/000000

RGBワークフローの基本操作(darktable3.0第4回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/16/000000

RGBワークフローの基本操作(darktable3.0第5回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/17/000000

RGBワークフローの基本操作(darktable3.0第6回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/18/000000

フイルミックRGBの基本操作(darktable3.0第7回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/20/000000

Jpeg編集ソフトとしてのdarktable(darktable3.0第8回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/21/000000

トーンイコライザーの使い方(darktable3.0第9回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/22/000000

フォーカスピーキングモードの使い方:フードフォト編(darktable3.0第10回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/23/000000

カラーゾーンの使い方(darktable3.0第11回)

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2020/03/24/000000

カラーゾーンの使い方:桜の事例(darktable3.0第12回)

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