(法度制度のミームは、なりすまし詐欺広告対策に影響があります)
1)なりすまし詐欺広告
産経新聞は次のように伝えています。
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実業家の前沢友作氏や堀江貴文氏をはじめとする著名人が、SNSの投資詐欺広告に肖像や名前を無断使用されている問題で、米IT大手メタ(旧フェイスブック)がフェイスブックやインスタグラムなどを通じて今年配信した投資広告のうち、半数以上がなりすましとみられることが4月14日、分かりましt。投資広告の配信元の約65%はアカウント名に日本語が含まれていませんでした。
警察庁の集計によると、SNSを使った投資詐欺の令和5年の認知件数は2271件。被害総額は約278億円に上りました。犯人と最初に接触した際に使われたSNSは、男性はフェイスブックが22・1%、女性はインスタグラムが31・5%で最多でした。
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<< 引用文献
メタの投資広告、半数以上が著名人なりすましか 1位は森永卓郎氏、2位に堀江貴文氏 2024/04/14 産経新聞 西山 諒
https://www.sankei.com/article/20240414-JOHY7CAZSBH35BLHKJ7UHZJGSY/
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実業家の堀江貴文氏と前澤友作氏が4月10日、なりすまし詐欺広告について、自民党に直談判し、その後取材に応じました。
堀江氏は次のように発言しました。
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ディープフェイク動画が出てきたり、僕の正規の広告もBANされたり、クレジットカードが止められるなどいろいろな被害が出ている。
(Meta社へ)“削除しろ”と1年以上言ってきたが、なめた対応しかしない。
“うちもいっぱい広告があるから全部は(対応)できない”“ちょっと我慢してくれ”と言われる。彼らは詐欺だとわかって広告を出しているとしか思えない。
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前澤氏は弁護士を通して抗議をしてきたものの、対応が進まないことから、米Meta社を提訴する準備を進めていることを明らかにしました。「GoogleやLINE、Yahoo!は頑張っていると思うが、InstagramとFecebookは本当にひどい。Metaにだけは本当に怒っている」と言います。
<< 引用文献
なりすまし広告めぐり堀江貴文氏「“削除しろ”と言ってもなめた対応しかしない」 前澤友作氏は米Meta社を提訴へ「本当に怒っている」「プラットフォーム規制を」 2024/04/10 Ameba Times
https://times.abema.tv/articles/-/10122046?page=1
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AI人材の育成を目指す「ホリエモンAI学校」を展開するテレワーク・テクノロジーズ(東京都新宿区)4月19日、Metaから広告アカウントなどの凍結を受けたと発表した。同社は詐欺広告と間違えられた可能性を指摘し、Metaの対策を「公式のコンテンツも凍結するずさんなもの」と非難しています。
ホリエモンAI学校のmeta広告アカウントが凍結されたのは4月19日。広告アカウントに紐づけていた荒木賢二郎代表の個人アカウントや、広告運用担当者の個人アカウントまで凍結された。
その後、Metaが定める手順に沿って再審査を請求したが、「アカウント停止に関する決定の再審査はできません」と画面に表示されただけで凍結状態が続いているそうです。
アカウント凍結で仕事にも支障が出ているという同社は、「(Metaによるなりすまし詐欺広告への)対策が動き出している一方で、公式のコンテンツもアカウント凍結するずさんなものであり、また、再審査も受け付けないという状況にある」と苦言を呈しています。
<< 引用文献
なりすまし詐欺広告と“誤認”か 「ホリエモンAI学校」、Metaに広告アカウントを凍結される 運営会社は「ずさん」と苦言 2024/04/19 ITMedia News
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2404/19/news125.html
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2)問題点の整理
問題点は、2つに分かれます。
第1は、なりすまし詐欺広告の被害にあった利用者被害の問題です。
第2は、なりすまし詐欺広告の被害にあった有名人被害の問題です。
2-1)利用者被害の問題
これは、振込口座の信頼度情報の確認問題で、銀行が解決可能です。
この問題に対しては、政府も、銀行も、問題を放棄しています。
振込をする場合に、振込先の企業名、口座番号の他に、信頼性コードを付与すればよいだけです。
振込先の企業名、口座番号に対して、銀行が過去に取引があり、問題がすくない場合には、AやBといったランク付けをすることができます。
銀行が過去に取引がない新興企業の場合には、ランク外になります。
新興企業は、銀行の審査をうけて、手数料を支払うことで、ランクを得ることができます。
この場合、利用者は、お金を企業の口座に振り込むのではなく、いったん、銀行の預かり口座に振り込みます。銀行は、内容を確認して問題がなければ、企業の口座に振り込みます。
この場合、銀行は、なりすまし詐欺広告のリスクをいったん抱えることになります。そのリスクに見合った手数料を銀行が得ることができます。
これは、マスク氏が企業者の一人であった、ペイパルの方式です。
もちろん、振込金額(単体あるいは累積)が小さな場合には、こうした手続きは不要かもしれません。
2-2)有名人被害の問題
これは、なりすまし広告をチェックして、アカウントを停止して、内容を削除する必要があります。
完全を期することは困難ですが、さしあたり、トップ200名程度を対象にすれば、さほど難しくはありません。
トップ200名程度に対しては、追加のセキュリティコードを添付することも考えられます。
前澤氏は「GoogleやLINE、Yahoo!は頑張っていると思うが、InstagramとFecebookは本当にひどい。Metaにだけは本当に怒っている」といっていますので、Meta固有の問題かも知れません。
2-3)Metaの対応
問題のMetaの対応ですが、これは、日本のMetaに固有の問題である可能性があります。
鈴木貴博氏は、「問題の本質は日本的コンプライアンス自体が間違っていること」にあるといい、次の3項目をあげています。
(1)日本社会は形式合理性を重視する
(2)日本社会はIntegrity(誠実さ)を大切にしない
(3)日本社会は巨悪を簡単にあきらめる
<< 引用文献
「ナメてんの?」詐欺広告問題でメタ社に批判殺到!日本社会が「巨悪に弱い」残念な理由 2024/04/19 DIAMOND 鈴木貴博
https://diamond.jp/articles/-/342407
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4月22日の毎日新聞は、派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた自民党の政治資金規正法改正案の概要が判明したと説明しています。
「収支報告書への悪質な不記載があった場合には不記載額を国庫に納付する規定を盛り込む方向で調整」と書かれていますが、あくまで、脱税ではないという解釈に終始しています。
<< 引用文献
議員罰金刑の要件拡大 自民党の政治資金規正法改正案、概要判明 2024/04/22 毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/8e1c3ad037465590a33c7c3978089e919dae3df6
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つまり、「問題の本質は日本的コンプライアンス自体が間違っていること」にあるといえます。
鈴木貴博氏の指摘は、法度制度のミームの問題を指摘しています。
日本のMetaは日本の法度制度のミームに対応した日本的コンプライアンスにしたがったなりすまし詐欺広告対策を提示しています。
これに対して、 前澤氏は弁護士を通して(日本のMetaに、筆者注)抗議をしてきたものの、対応が進まないことから、米Meta社を提訴する準備を進めています。
政治資金問題について、日本の自民党に、抗議をしてきたものの、対応が進まない場合には、米国と掛け合う(黒船を利用する)しか、方策がないのかもしれません。