(政治資金パーティ問題をデザイン思考で扱います)
1)近況
2023年12月19日、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)容疑で最大派閥の清和政策研究会(安倍派)と志帥会(二階派)の両事務所を家宅捜索しました。
特捜部による自民派閥への強制捜査は、日本歯科医師連盟からの1億円の裏献金事件で2004年の平成研究会を家宅捜索、以来、約19年ぶりです。
12月11日に、堀江貴文氏は、X(旧ツイッター)で「東京地検特捜部も巨悪がなくなって存在意義が薄れやしないかと必死に重箱の隅を突いている感じはするよね」と発言しています。
<< 引用文献
堀江貴文氏 パーティー券裏金問題に言及「必死に重箱の隅を突いている感じはする」 2023/12/11 東スポWEB
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小林 啓倫氏は、企業の経営陣の音声を分析して、「決算発表会で語られなかったことを明らかにする」Speech Craft Analyticsというボストンの企業が開発したAIを紹介しています。
<< 引用文献
エリートだった金融業界の人間が「軒並み失業」の危機…人間を超える投資AIの「ヤバすぎる実力」 2023/12/19 現代ビジネス 小林 啓倫
https://gendai.media/articles/-/120669?imp=0
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このAIは、うそ発見器ように、企業の経営陣の発言の真意(隠蔽発言)を読み解きます。
もっとも、パーティー券裏金問題では、「適切に対応」、「精査し対応」、「控える」といった発言を繰り返した議員がいましたので、AIがなくとも、有権者は、それらの発言には、裏の意図があると判断できます。
企業の経営陣の隠蔽発言は、株式の売買に反映されます。
議員の隠蔽発言を、有権者はどこに反映できるでしょうか。
2)問題点の抽出
デザイン思考では、問題点を抽出して、問題を解決するための設計図を作ります。
特捜部は、2004年にも、政治資金規正法違反の家宅捜索をしていますが、2023年にも、パーティー券裏金問題が再発しています。
つまり、特捜部の操作は、「合法か、違法か」という視点では、必要な捜査ですが、政治資金規正法違反の再発防止効果はなかったことがわかります。
この点では、堀江貴文氏の「重箱の隅を突いている」という指摘には、合理性があります。
さて、ここで、デザイン思考をするには、まず、何を作るべきかを考えます。
筆者は、ここでは、「政治資金の運用を見える化するシステム」の設計と考えます。
これは1案なので、他の提案もあり得ます。
政治資金規正法は、20万円以下の記載は、不要になっています。
このことから、政治資金規正法の設計思想は、「政治資金の運用を見える化するシステム」ではなく、「政治資金の運用を隠蔽するシステム」と判断できます。
なぜなら、「政治資金の運用を見える化するシステム」という設計思想からは、20万円以下は記載しなくてもよいという設計は出て来ないからです。
政治資金規正法は、政治資金の浄化をしたふりをして、その実は、キャッシュバックでつながった利権構造を温存するための法律であると判断できます。
つまり、政治資金規正法は、政治字資金浄化ウォッシングに他なりません。
補足:正確には、規正法は政治団体の会計責任者に収支報告書の提出義務を課していて、不記載罪などの罰則は5年以下の禁錮または100万円以下の罰金です。これでは、議員の対する歯止め効果はありません。(12/31追記)
3)問題の解決
デザイン思考では、設計図は、設計思想を実現するための道具に他なりません。
もっと良い道具(設計)が見つかれば、使っている設計図をそれに入れ替えます。
「政治資金の運用を見える化するシステム」としては、政治資金規正法は、機能しないことがわかりました。
つまり、もっとよい「政治資金の運用を見える化するシステム」を設計する必要があります。
「政治資金の運用を見える化するシステム」は、政治資金規正法のような法律でつくることも可能ですが、問題解決ができる道具であれば、法律に限定する必要はありません。
スウェーデンでは、政治の個人献金は電子決済サービスで行い、すべての明細が公表されます。政治家は、給与・ローンも公開され、贈収賄は極めて難しくなっています。
<< 引用文献
政治資金の透明性確保 スウェーデンの不正対策/政治資金の透明化に向け 現状の課題と効果的方法 2023/12/14 テレビ朝日 大下容子ワイド!スクランブル
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だからといって、「政治の個人献金は電子決済サービスで行う必要がある」という法律を作ることは、必須条件ではありません。
政治家が、「政治の個人献金は電子決済サービスで行」っていれば、法律がなくとも問題解決ができます。
つまり、政治家や政党が、「政資資金を電子決済サービスで行い」、その結果をWEBで公開すればよいことになります。
もしも、政治家や政党が、「政資資金を電子決済サービスで行わない」場合、その政治家や政党は、キャッシュバックによる利権政治を行なっていると判断できます。
与党だけなく、野党も、このような「政資資金の電子決済サービス情報」の公開計画を提案しませんので、与党同様のキャッシュバックによる利権政治を行なっている可能性が高いです。
有権者が、「政資資金の電子決済サービス情報」の公開をしない政治家や政党に投票しなければ、「政治資金の運用を見え化するシステム」が実現できます。
筆者は、政治家や政党が、「政資資金の電子決済サービス情報」の公開は、基本は、政治家や政党が自主的に行なうべきと考えます。
しかし、もしも、そこに虚偽記載の可能性があるとしたら、「政資資金の電子決済サービス情報」の公開サイトの信頼性について、オンブズマン、検察、弁護士会などの第3者が評価をすればよいと思います。
筆者には、現在の検察の活動は、「違法が、合法か」に限定されているように見えます。
政治資金規正法は、ざる法ですが、本来の目的(設計思想)は、政治資金の浄化にあります。
デザイン思考に基づけば、政治資金の浄化に有効であれば、「合法か、違法か」に限定されず、より広い活動をした方が、遵法のパフォーマンスがあがると、筆者は考えます。
4)追記
調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革を巡る議論が停滞しています。使途公開や未使用分の国庫返納に対し、自民党は消極的な姿勢を崩していません。
この問題も、法律が成立しなくとも、野党が自主的に対応することが可能です。