ミームの研究(25)自民党のミーム

国際科学会議(ISC)は、科学者の 「使命と原則」のトップで、「科学と社会にとって重要な主要な問題を特定し、それに対処します」といっています。

 

複数の問題があるとき、何が一番重要な課題であるかという判断は、課題が与える影響と因果モデルのルーツに近い課題の優先を考えます。

 

政府は、温暖化対策、科学技術立国、経済発展など複数の課題を設定しています。

 

これらの課題の中で、何が一番重要な課題でしょうか。

 

自民党公明党政治資金規正法改正に関する実務者が15日会談し、両党で主張が異なっていた政治資金パーティー券の購入者の公開基準について、自民党側は「10万円超」と公開対象にすることを盛り込んだ条文案を正式に提示ました。

 

<< 引用文献

自民がパー券公開基準10万円案を正式提示 政治資金規正法改正で公明に条文案示す 2024/05/15 FNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/d212d2f3a902b1a184996574077a7e8f6951d00a

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政治資金規正法改正はどこまで改正されるでしょうか。

 

公開基準額は現在の規正法は「20万円超」とされており、公明党は「5万円超」に大幅に引き下げるよう主張し、「10万円超」にとどめる自民党と見解が分かれていました。

 

今回の会談で、「5万円超」はなくなり、自民党単独の「10万円超」に収束しています。

 

「課題の中で、何が一番重要な課題か」は、判断する主体によって異なります。

 

政治資金規正法改正のプロセスが示している事実は、議員の最優先課題は、選挙に当選することであり、そのための資金確保に比べ、政治資金規正法、温暖化対策、科学技術立国、経済発展などは、第1に重要な課題ではないということです。

 

そして、議員は、選挙に当選するためには、政治献金と、見返りの補助金が不可欠であると考えていると思われます。

 

つまり、すべての行動は、選挙の当選というミームに支配されていることになります。

 

そうであれば、政治資金規正法、温暖化対策、科学技術立国、経済発展などは、第1に重要でない課題の解決は期待できないことになります。

 

これらの問題を解決するためには、「選挙に当選すること」が第1の主題であり、そのために、資金確保が全てに優先する状況を変える必要があります。

 

非常に簡単ではありますが、問題の解決法にとりかかる前に、問題の優先順位という視点が重要であることがわかります。

 

現在、与党は、選挙に当選してから、問題解決プロセスを提案しています。

 

本来は、問題解決プロセスを提示して、そのプロセスに賛同する場合に、投票することが民主主義のプロセスです。

 

この順番が逆になっている原因は、政治資金と当選への寄与度に応じて、補助金を配布する必要があるためと思われます。

 

つまり、政策の第1の目的は、問題解決ではなく、補助金をお礼に配ることになっていると思われます。

 

この政策をすれば、既得利権が固定化されて、産業構造は変わりません。

 

問題は、何1つ解決しないことになります。

 

政治資金規正法、温暖化対策、科学技術立国、経済発展などの問題は、1つも解決しないと考えることが合理的な推論になります。

 

実際に、日本では、イギリスのグリーンブックで提示されているような政策評価のプロセスはすべて排除されています。

 

これは、政策には効果が期待できないので、効果の計測を排除したいからです。

 

日本は、経済成長せず、途上国に転落しています。

 

当選してから政策を決定する政党に投票することは、補助金を受け取る利害関係者以外には、リスクの高い行動になります。

 

例外的に、政策評価が表に出る場合があります。

 

国内で唯一テレビ向け液晶パネルの生産を続けていた「シャープ」が生産を終了すると発表しました。

 

関テレはつぎのように、伝えています。

 

14日、シャープが生産終了を発表したのは「テレビ向けの大型液晶パネル」です。

 

シャープは国内で唯一、堺市にある子会社SDP=「堺ディスプレイプロダクト」の工場で生産を続けていました。

 

しかし、液晶パネル事業の低迷などが影響して、2022年度は、およそ2600億円の赤字に。

 

ことし9月までにテレビ向けの液晶パネルを生産している堺の工場の稼働を停止する方針を固めたということです。

 

これで、国内でテレビ向けの大型液晶パネルを生産する企業がなくなります。

<< 引用文献

【速報】シャープが「テレビ向け液晶パネル」生産終了へ 国内で生産する企業がなくなる 2024/05/14 関テレ

https://www.ktv.jp/news/articles/?id=12300

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「ことし9月までに」は間違いだったようです。

 

Newsweekには次の修正記事が出ています。

 

(14日配信の記事で、会社側の訂正により、第1段落の「24年上期中」を「25年3月期上期中」に訂正します。また、本文第2段落の「減損損失435億円」の記述を削除します。)

[東京 14日 ロイター] - シャープは14日、堺工場でのディスプレイパネルの生産停止を決定したと発表した。子会社の堺ディスプレイプロダクトが25年3月期上期中(訂正)に生産を停止する。パネル市況の低迷が長期化し、生産を安定的に継続し難い状況となった。

これに伴い、24年3月期に事業改革費用87億0500万円を計上した(減損の記述を削除)。このほか、国内連結子会社の中小型液晶事業関連の建物や機械装置などと合わせて24年1-3月期に1179億円、通期で1223億円の減損損失を計上した。事業構造改革費用も1-3月期に108億円、通期で117億円計上した。

この結果、24年3月期は203億円の営業損失、1499億円の純損失となった。23年3月期も2608億円の純損失を計上しており、2期連続の大幅赤字となった。

25年3月期は営業損益で100億円の黒字、純損益で50億円の黒字を見込む。

<< 引用文献

訂正(14日配信記事・発表者側の申し出)シャープ、堺工場のディスプレイパネル生産停止 前期赤字1499億円 2024/05/15 Newsweek

https://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2024/05/497753.php

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民間会社のシャープは、液晶事業の評価をして、撤退しています。

 

一方、政府が、介入すれば、次のようになります。

 液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)が13日発表した2024年3月期決算は、443億円の純損失だった。14年3月の株式上場後、赤字は10年連続。電機大手3社の事業を統合し「日の丸液晶」と呼ばれながらも、企業統治の不全や海外勢との競争によって低迷し、株価は10年で40分の1以下まで下落した。

 

 この日の決算会見で、スコット・キャロン会長兼最高経営責任者(CEO)は、「今の業績を恥ずかしいと思わないわけはない。引き続き、社をあげて抜本改革に取り組む」と述べた。

<< 引用文献

「日の丸液晶」JDI、上場から10年連続赤字 株価は40分の1に 2024/05/13 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASS5F3F1TS5FULFA01SM.html

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半導体は以下です。

半導体モリー大手のキオクシアホールディングス(HD)が15日発表した2024年3月期決算(国際会計基準)は、純損益が2437億円の赤字(前年は1381億円の赤字)だった。2年連続の純損失で、過去最大の赤字となった。半導体モリーの深刻な不況が響いた。

 

 売上高は前年比16%減の1兆766億円、営業損益は2527億円の赤字(前年は990億円の赤字)だった。

<< 引用文献

キオクシア、過去最大2437億円の赤字 半導体モリーの不況響く 2024/05/15 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASS5H2QD4S5HULFA00NM.html

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キオクシアは、2月に追加投資をしたばかりです。

半導体モリー大手のキオクシアホールディングスが生産能力を増強する。6日、国内で合弁生産子会社を運営する米ウエスタンデジタル(WD)と共同で総額7290億円を投資し、うち経済産業省が3分の1となる最大2430億円を補助すると発表した。国の補助を受けて巨額投資に踏み切るが、赤字脱却の糸口はつかめていない。

<<引用文献

キオクシア、厳冬下の巨額投資  最先端半導体に7200億円、国補助も赤字脱却見えず 2024/02/08 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78316160X00C24A2TB1000/

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これらは、氷山の一角です。

 

政治資金規正法、温暖化対策、科学技術立国、経済発展など、政策効果の計測と公表がなされていない政策の効果も、ジャパンディスプレイやキオクシアホールディングスと同じレベルであると思われます。

 

そして、原因は、選挙の当選が最優先課題であるという、最優先課題の取り違えにあります。