(帰納法とデザイン思考を考えます)
1)経済合理性の前提
経済学では、経済合理性を仮定します。
実際のデータには、放蕩息子の経営者も含まれています。
したがって、帰納法では、経済合理性の仮定は導かれません。
2)グライダー
リリエンタールは、空を飛ぶために、鳥の飛行を研究しました。
鳥の飛行から、帰納法によって、飛行機を作ろうとしました。
リリエンタールは、グライダーの理論の基礎をつくりました。
しかし、飛行機を作ることは出来ませんでした。
飛行機のプロペラは、鳥にはありません。
鳥を研究しても、プロペラを発明することはできません。
プロペラを発明するには、鳥の羽ばたきの機能に注目して、機能をデザインする必要があります。
3)ロケット
宇宙空間にまで飛んでいくロケットには、鳥のようなモデルはありません。
推論を帰納法に限定している限り、永久にロケットを生み出すことはできません。
ロケットは、力学を応用したデザイン思考によって生まれています。
グライダーは、帰納法で実現できますが、ロケットは、帰納法では作れません。
グライダーの設計実績のあるエンジニアを雇っても、ロケットを作ることはできません。
4)ジョブ評価
ジョブ型雇用では、給与は能力に基づきます。
この能力は、(ロケットの例の)デザイン能力であって、(グライダーの例の)実績ではありません。
デザイン能力を評価するためには、評価する人にも、デザイン能力が必要です。
バブル崩壊以降、日本企業の成長が減速しました。
多くの日本企業は、中国企業との価格競争に敗れて、リストラをしています。
例えば、ソニーは、バブルの頃までは、多くの研究所を持っていましたがコストカットのために、殆どの研究所を閉鎖してます。
多くの日本企業は、部門のリストラの時に、過去の実績を基準にしています。
この方法は、一見すると成果主義のように見えますが、成果主義とは、過去の実績を基準に評価することではなく、デザイン能力を評価する方法です。
過去の実績を基準にして、部門のリストラをした結果、日本企業には、グライダーの設計実績のあるエンジニアはいるが、ロケットの設計の出来るエンジニアはいないような状況になっています。
この原因には、過去の事例を暗記する教育のカリキュラムにも問題があります。
5)ブルシット・ジョブ
アメリカの文化人類学者デヴィッド・グレーバー氏は、2018年の著書「ブルシット・ジョブ―クソどうでもいい仕事の理論(Bullshit Jobs:A Theory)」で、無意味な仕事の存在と、その社会的有害性を分析しました。
コリン・ジョイス氏は、アイルランド共和国の変化を説明しています。(筆者要約)
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1979年のローマ法王(教皇)ヨハネ・パウロ2世のアイルランド訪問は、国を挙げての大イベントだった。
1985年、巡礼者がローマから飛んで来られるように、パウロ2世が訪問した聖地であるノックに主要空港がノックに建設された。
1985年までは既婚者が家族計画に基づいて処方された場合にしか、避妊具は入手できなかった。
1996年まで、離婚は憲法により禁止されていた。
1986年の国民投票では、有権者のほぼ3分の2が離婚を認める憲法改正案に反対票を投じた。
小児性愛者の司祭によるスキャンダルや、各地に存在したマグダレン洗濯所(そこに収容された未婚の母から生まれた女の子らは連れ去られて事実上「売り渡され」、収容女性たちは奴隷労働をさせられていた)などでの長年にわたる虐待事件が発覚したことが主な原因になった。
その結果、今のアイルランドでは、カトリック教会の権力は、後戻りできないほどに縮小した。
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<< 引用文献
むしろアイルランド共和国側が統合を拒否する日......日本人の知らない北アイルランドの真実(その2)2024/03/01 Newswwek コリン・ジョイス
https://www.newsweekjapan.jp/joyce/2024/03/post-300.php
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1985年のアイルランド共和国の人の行動は、カトリック教会という文化人類学で説明できます。
2024年には、カトリック教会の権力は、後戻りできないほどに縮小して、カトリック教会という文化人類学では、現状を説明できません。
江崎貴裕氏は、「データや分析のための数理モデル入門」のなかで、「あるデータを説明できるモデルが、さらに別の新しいデータをたまたま良く説明できるとは考えにくい」という原理で、交差検証法を説明しています。
データサイエンスの世界では、帰納法は、使えないことが多いと考えられています。
帰納法を使った仕事(「ブルシット・ジョブ―クソどうでもいい仕事の理論(Bullshit Jobs:A Theory)」)は、クソどうでもいい仕事です。
キャスターの辛坊治郎氏、が2月26日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」で、次のように発言しています。
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政治資金規正法の穴がこれだけ誰の目にも明らかになっているわけですから、国会で今、すべきことは政治資金収支報告書を巡る一連の騒動で明らかになった政治資金規正法の穴を1つずつふさいでいくことです。それにもかかわらず、政治倫理審査会を公開にするか非公開にするかに議論が集中しています。最終的には与党が譲歩して一部もしくは全て公開になるのでしょう。そして、与党も野党も“頑張った感”を出して体裁を繕うのでしょうね。それで終わりです。これでは何も変わりません。
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<< 引用文献
政倫審の“公開・非公開”議論に辛坊治郎が苦言「国会が今、すべきは政治資金規正法の穴をふさぐことだ」2024/02/26 ニッポン放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/1ad150d31ae1f5033f65d5a06d5146e18bb68f23
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「政治資金規正法の穴を1つずつふさいでいくこと」はデザイン思考です。
これは、経済学の思考法でもあります。