株価の予測可能性~株式の勉強(8)

米国の株式市場が下がっています。

5日に公開された昨年12月開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨を受けた利上げ(政策金利の引き上げ)観測の高まりや長期金利の上昇が、今まで市場を牽引してきたハイテク株の株価を押し下げています。

2022/01/22のブルームバーグは、「ナスダック100指数は直近高値からの下落率が今週、10%を超えて調整局面入り。同指数の時価総額は1月に1兆7000億ドル(約193兆円)余り減少した」と伝え、UNHAPPY NEW YEARのキャプション付きで、株価の変動グラフをのせています。

2022/01/21のブルームバーグは、「ノムラ・オーストラリアの金利ストラテジスト、アンドルー・タイスハースト氏は『21日の債券相場上昇は投資家のポジショニングが伸びきっていたことと、ウクライナを巡る米ロの緊張継続による世界的なリスクオフの結果だ』と分析し」ています。つまり、ウクライナ情勢もマイナス要因です。

データサイエンスで考えると、金利ストラテジストや、アナリストの発言には、問題が多くあります。株価変動がランダム現象であれば、全体の確率は計算できますが、個別銘柄の変動は予測できません。

時系列データは、因果モデルではありません。ですから、テクニカル分析には、科学的な根拠はありません。

定常のランダム過程であれば、回帰が働きますので、上がりすぎた株価は下がりますし、また、その逆も起こります。平均値が変動しなければ、正規分布を決定するのは、標準偏差になりますので、ボラリティを見て考えることが基本になります。

時系列データで、予測できる範囲は、この程度です。ウクライナ情勢のようなノイズが入ると、対応できなくなります。

時系列データ以外に、株価を予測する手法は次の2つです。

1)先行指標をみる これは、出生率ー>人口増加ー>経済成長といった、タイムラグのある指標を使う方法です。人口について言えば、日本経済の先行きは、惨憺たるものです。もちろん、労働生産性を人口減少以上に上げれば、経済は拡大します。そのためには、予測される人口減少を上回る速度で、労働生産性を上げる目標を設定して、達成することが必要です。 生産年齢人口のピークは、1995年の8716万4721人でした。2020年には、この値より、13.9%減っています。つまり、過去30年で、労働生産性が、大幅に上がっていれば、日本経済は、成長していたはずです。

2)因果モデルを使う

株価が値上がりするのは、会社が、モノやサービスを売るからです。つまり、良質な、モノをサービスをつくることのできる労働者がいる企業は、中期的には、株価が上がります。そのような労働者のいない企業の株価はあがりません。

現在販売する価値の中心は、モノではなく、サービスです。サービスの中で、労働生産性が圧倒的に高いのは、ソフトウェアです。それは、ソフトウェア技術者が、一度、良質なソフトウェアをつくれば、ソフトウェアが、人間に代わって価値を生み出すからです。自動運転のソフトウェアができれば、そのソフトウェアは、運転手の代わりに、お金を稼いでくれます。10人の運転手を雇うには、1人の10倍のお金がかかります。しかし、ソフトウェアであれば、コピーするだけで済みます。クラウドの借料が増えますが、増加は微々たるものです。 こうして、ソフトウェアを使うことで、劇的な労働生産性の向上が可能になります。GAFAの企業価値が非常に大きくなっているのは、ソフトウェアの性質そのものです。 労働者の中で、富を生み出す源泉は、優秀なソフトウェア技術者になります。

こう考えると、GAFAの株価が、バブルで一時的に実態を離れて高くなっていた可能性はありますが、優秀なソフトウェア技術者を抱えていない企業が、大きな労働生産性の向上を成し遂げることはありえません。

バブルは起こりますので、バブルかどうかは、考える必要がありますが、ソフトェア技術者の数を議論している企業が、成長することは、因果モデルからいってありえません。