新NISAの背景(1)

1)新NISAの概要

 

2024年1月から新NISAがスタートします。

 

年間投資枠は、「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円の計360万円です。

 

また、非課税保有期間は無期限化され、非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)と大幅に拡充されています。

 

簿価残高方式での管理となっており、売却した際には簿価ベース(投資した時の取得価額)で枠の再利用ができます。

 

2)政府の意図

 

三ツ谷 誠氏は、政府には、次のような意図がある可能性を否定できないと指摘しています。(筆者要約)

 

<

 

ポイントは、日銀のETF(上場投資信託)の含み益です。

 

ETF(EXCHANGE TRADED FUND)は、日経平均TOPIXなど株価指数に連動するように運用されている指数連動型の投資信託です。

 

日銀は、2013年黒田緩和から金融緩和の手段として、ETFの買入を行い、その額は、2023年6月末の段階で60兆円超です。つまり日銀は日本株を60兆円超保有している。

 

日銀は本来は、株式を保有すべきではありませんので、どこかの時点で、ETFを売却すべきですが、金額が大きすぎて、売却に伴い、株価が変動するリスクがあります。

 

また、11月8日、衆院財務金融委員会で植田日銀総裁は、ETFの含み益が、8月末時点で24兆円程度あると答えています。

 

つまり、60兆円には、24兆円の含み益があるので、売却すれば、24兆円の収入が得られます。

 

資産構成に占める「株式等」の割合は、日本が11.0%、米国の39.4%、EUが21.0%です。

 

60兆円売却するには、日本の11%をあげる必要があります。

 

仮に、ED並みの21%に「株式等」の割合をあげられたと仮定すると、我が国家計の保有する金融資産の総額2,000兆円から、200兆円の資金が株式市場に流れ込みます。

 

これは、60兆円を売却するには十分な額です。

 

しかし、200兆円が、米国株投資に向かう可能性もあります。

 

以上です。

 

200兆円は、2000兆円の10%です。

 

日本の資産構成に占める「株式等」の割合11.0%は、220兆円になります。

 

日銀の60兆円は、220兆円の27%に相当しますので、金融緩和によって、日本経済は、資本主義から大きく逸脱したことがわかります。

 

60兆円の売却は容易ではありません。

 

唐鎌大輔氏は、200兆円が、米国株投資に向かうと、円安になる可能性があると指摘しています。

 

日銀は、ETFを売りたい状況にあります。

 

新NISAで、債権や株式市場に参入する人は、素人が多いので、ハイリスク・ハイリターンを狙う人は少ないと思われます。

 

そうなると経営の安定している大企業の株式を購入するか、ETFを購入することになります。

 

3)バブルの可能性

 

EFTは、市場平均に連動するので、リーマショックのような市場全体が大きく下がる場合を除いて、大きく株価が変動することはありません。

 

米国株のETFは、1990年以降に、バブル崩壊で2度値崩れをしています。

 

リーマンショック以降は、大きく値崩れしていません。

 

新NISAでは、日銀所有の日本株ETFが売れるかが、ポイントになります。

 

新NISAでは、日本株の収益には、税金がかかりませんが、米国株の収益には、アメリカの税金がかかっています。その差は10%です。

 

日本株ETFの利回り、米国株のETFの利回り、10%の3つの要素を勘案することになります。

 

リーマンショック以降の実績をみれば、米国株のETFが有利になります。

 

問題は、日本株も、米国株も、現在の状態がバブルであるか、否かの判断になります。

 

2023年12月5日の日経新聞には、ジム・ロジャーズ氏の見通しが載っています。(筆者要約)

 

 

世界の株式市場の指標である米国株は、2012年以来、米国の歴史上最長の上昇を続けています。

 

一方、上昇を続ける株は減りつつあり、2024年末までには、殆どの株式市場は問題を抱えるでしょう。

 

日本には、人口減少、移民受け入れを認めない等の問題があります。

 

日銀は、まだETFを購入するお金があるので、2024年に株価が下がる可能性は低いでしょう。(筆者注:ロジャーズ氏は、日銀は、今までどおり、ETFを買って、株価を買い支える可能性が高いと考えている)

 

私は、日銀がETFを購入するのに合わせて、(筆者注、日本株の)ETF保有していましたが、かなり、高値をつけた段階で売却しました。(筆者注、日銀の買い支えを見越して、ETFを購入して、価格があがった時点で、利益を確定した)

 

日本では新たな世代が株式投資をはじめており、資金流入の勢いがあります。2024年には、日経平均株価は4万円を突破するかもしれません。

 

歴史上、通貨安で、経済を再生させた国はありません。日銀は、金利を、市場に委ねるべきです。

 

世界中で、債権、株、不動産はバブルの様相を呈しています。残された割安な投資対象はコモデティです。実物資産への投資は良い選択です。

 

ロジャーズ氏は、「世界中で、債権、株、不動産はバブルの様相」と判断しています。

 

バブルが崩壊すれば、ETFの株価もさがります。

 

ロジャーズ氏は、世界で、バブルは崩壊すると考えます。日本では、日銀が政策を変更しなければ、株価が下がる局面では、日銀は、ETFを購入します。その結果、2024年に日本株が下がる可能性は低いと考えています。

 

もちろん、2025年以降はわかりません。ただし、日銀が買い支えれば、崩壊の時期は、他の国よりは、若干遅れる可能性はあります。

 

三ツ谷 誠氏は、日銀が、ETFを売る場合を想定していますが、ロジャーズ氏は、日銀にお金があれば、当面は、株価が下がる局面では、日銀は、ETFを購入すると考えています。

 

2024年に、新NISAで、新たな世代が株式投資を始めます。

 

2024年に、米株はともかく、日本株が大きく下がれば、政権が転覆します。

 

そのリスクを考えれば、2024年には、日銀は、ETFを購入して、株価を支えると思われます。

 

ただし、日銀は、どこかで、ETFを売却して、株式市場から、退出するはずです。



参考文献は、まとめて後で紹介します。

 

今回は、ここまでです。

 

【免責事項】

この記事は、有価証券への投資を勧誘することを目的としておらず、また何らかの保証・約束をするものではありません。投資に関する決定は読者自身のご判断において行っていただきますようお願い申し上げます。