(人口減少対策は、プランBの主要部分です)
1)概観
現在行われている政策(プランA)では、日本経済の没落と日本の発展途上国への没落は避けられないと思われます。
既に、識者が、プランAの問題点を指摘しています。
しかし、問題点を指摘しても、問題が解決する訳ではありません。
また、ドラえもんのように、お願いすると問題解決できるロボットはいません。
問題の正解は、誰も知らないのですから、解決方法の提案をして議論を進める方法が、唯一の可能なアプローチです。これは、ビジョン(プランB)の作成です。
日本の専門家は、ヒストリアンだらけで、ビジョナリストは絶滅危惧種です。
つまり、専門家に任せておいては、問題は永久に解決しません。
筆者は、素人(しろうと)ですが、プランBについて、ビジョンの要件を考えてみます。
今回は、人口減少問題です。
人口減少自体が問題であるという主張と、労働生産性の向上があれば、人口減少自体は問題ではないという主張があります。
(a)人口減少が課題
(b)労働生産性が課題
(b-1)労働生産性が上がればよい
(b-2)「労働性生産性の向上率>人口減少率」(経済規模が縮小しない条件)は必要。
人口減少への対策としては、出生率の向上と移民が、労働生産性の向上としては、DX、特に、ロボットの導入が検討されています。
(b-2)の条件で、人口減少対策の労働生産性の向上を考えた場合には、DXの総合進展標(DXI)は次になります。
DXI=(DXによる労働生産性の向上速度)+(人口の減少速度)
ここでは、人口減少の符号は、マイナスを想定しています。
筆者の見落としがあるかも知れませんが、DXIのような指標が議論されることは稀です。
DXIの国際比較をすれば、日本のDXの問題の大きさがわかると思われます。
2)出生率の向上
出生率の向上は、重要な課題ですが、効果が出るまでに20年程度のタイムラグがあり、近未来の問題解決にはなりません。
3)移民
移民については、基本的には、日本政府は原則、反対を貫いています。
しかし、実態は、研修生として、低賃金の労働者を受け入れる一方で、高度人材の移住には失敗しています。
移民を受け入れるか、受け入れないかという視点には、バイナリーバイアスがあります。
リモートワークであれば、移住せずに、海外から労働に参加できます。
マイクロソフトなどのGAFAMがモジュール開発を、インド(バンガロール)やウクライナで行っている例が知られています。
iPhoneのように世界中で水平分業すれば、国内の労働力は、製品製造にかかわる労働力の一部にすぎません。
ジョブ型雇用で、DXに取り残されているとこうしたメリットを受けられないので、「移民を受け入れるか、受け入れないか」という議論になってしまいます。
もちろん、国際ネットワークで分業して、経営するには、DXを進めること、英語を標準言語とすることが不可欠です。
欧米の競合企業が、国際ネットワークで分業している時に、日本企業だけ、国内でクローズした年功型雇用を続けることは、極端に不利な条件で経営を続けることになります。
アメリカの大学が日本に分校を作る計画が進んでいます。日本に住んでいて、アメリカの大学の卒業証書が手に入るようになれば、変化が生じるかも知れません。
追記:
記事を書いてから、日経新聞を見たら、11月22日の一面に、短期滞在型の移民労働者の話とリモートワークの海外労働者の話がでていました。
日本以外の国際労働市場に、日本人が出かける例が増えているようです。
年金制度は、書き換える必要があります。
近い将来、若年層が、老人に貢いでくれる年金はなくなるでしょう。
ただし、それは、国民年金を除いてでしょう。
4)ロボット
今回の記事を書くきっかけはロボットです。
2022年11月22日の日経新聞に、テスラが働くヒト型ロボット「オプティマス」の開発を進め、1年で試作機にこぎつけたと書かれています。マスク氏によると3から5年後に2万ドル(280万円)以下で、出荷する計画だそうです。
ヒト型ロボットのソフトウェアは、自動運転のソフトウェアを書き直すことで、開発コストと開発時間を短縮しています。
この記事には、編集部が、過去に、日本の技術がどのようなロボットを開発してきたかというヒストリーをたくさん載せています。また、ある先端企業のCTOにコメントを求めていて、CTOは、テスラが1年でここまでできることは評価できると発言しています。
オプティマス(170cm、73kg)に、対抗できそうな国産ロボットには、川崎重工のフレンズ(2022年、168㎝、54kg、10㎏の荷物を運べる)があります。
オプティマスは、ホンダのアシモ(2000年)より、2本脚走行技術が遅れているという専門家もいます。しかし、2000年は、現代制御のアルゴリズムが改善されて、実用化した時期です。現在では、2000年頃にハードウェアの機能のかなりの部分がソフトウエアで代替可能になっていると思われます。また、画像認識については、テスラが強いと思われます。
日本のおかれた人手不足の状況は、アメリカ以上に深刻です。
テスラより先に働くヒト型ロボットの開発を進める日本企業があっても当然だと思いますが、そうした話は、フレンズくらいで、少ないです。フレンズは、実用化の時期と予定価格を明らかにしていません。
インタビューを受けた高齢のCTOも、ロボット開発は、自分の仕事とは考えていないように見えました。ロボットが売れても、自分の収入が増えるわけではないからです。
マスク氏の場合には、ツイッターと同じように、ロボット開発会社のテスラの株式を所有していますので、リターンがなければ、自分の財産が減ってしまいます。その差は大きいと思われます。
つくば市には、公道をロボットが走行できる特区が2か所あります。11月20日には、ロボットの公開走行イベント(つくばチャレンジ2022)があり、見に行きましたが、見学者はすくなかったです。
人気がない理由は、99%がヒト型ではなく、車輪で走るロボットだからだと思います。4足ロボットを1台だけ見かけました。
車輪で走るロボットは、イオンモールなどでも見かけますし、試験走行を見ても、今更、何が新しいかよくわかりません。
イベントを見る限り、日本のロボット技術の優位は既に過去のものになってしまって、国際競争力はなくなっているように見えます。
5)もしも、AAがBBだったら
「もしも、高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)と同じように、「もしも、AAがBBだったらという形式」で考えることは応用がききます。
テスラのロボットについて考えます。
マスク氏の経営の速度は中途半端ではありません。
テスラの自動車を、トヨタと共同で開発した時期には、テスラは、トヨタの自動車に追いつくには、時間がかかるだろうと予想されていました。
2022年現在では、少なくとも、EVについては、テスラは、トヨタの先を走っています。
ツイッターの組織改革も、ビジネススクールの教材になりそうな短期間で、組織を組み替えています。
ヒト型ロボット「オプティマス」の開発ができたのも、こうしたビジネスのスピードがあってのことと思われます。
そう考えると、テスラのロボット開発が、日本企業にとって脅威になる可能性も高いと考えられます。
ところで、「もしも、AAがBBだったら」に、「もし、イロン・マスク氏が、日本の総理大臣だったら」という組わせを考えてみました。
小説にでもすれば、面白そうに思いましたが、たぶん、現役の人をテーマに書くと、支障がでそうなので、やめることにしました。
ただ、この組合せであれば、「検討します」、「有識者会議に図ります」などと、スピード感のない答弁をすれば、ぼぼ100%クビになると思います。
閣僚の発言は、官僚が原稿をつくっているので、閣僚の責任ではないのかも知れませんが、その場合には、官僚のクビが飛んでいると思います。
問題があるのに、解決を先送りして、スピードがないことは、解決を困難にするので、恐らく、解雇の対象になる気がします。
「もしも、AAがBBだったら」を考えてみると、現状の問題点が明確に浮かび上がってきます。