トッド氏の正義論(11)

1)日本のエンジニアの現状

 

「主要国(または地域、経済圏)における工学部卒業生の数と割合(2016)」が、気になったので、もう少し考えてみます。

 

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An Exploration on the Reform of China’s Engineering Education under the

Background of ’Made in China 2025’,American Society for Engineering Education, 2018, Dr. Huiming Fan

https://peer.asee.org/an-exploration-on-the-reform-of-china-s-engineering-education-under-the-background-of-made-in-china-2025.pdf

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表1-主要国(または地域、経済圏)における工学部卒業生の数と割合(2016)

Table 1-The number and proportion of engineering graduates in major countries (or regions, economies) (2016)



Countries/regions/economies

国・地域

Total number of graduates

卒業生数

Number of engineering graduates

エンジニア卒業生数

The proportion in the total number of engineering graduates in the country (region)(%)

国内の卒業生に対する比率

The proportion in the total number of global engineering graduates (%)

世界のエンジニアに対する比率

Asia

10,691,433

1,826,360

 

72.1

China

3,038,473

964,583

31.7

38.1

India

5,469,330

548,907

10

21.7

Japan

558,692

87,544

15.7

3.5

EU

2,602,040

193,030

 

7.6

France

311,026

22,707

7.3

0.9

German

386,090

43,818

11.3

1.7

Britain

389,296

16,435

4.2

0.6

Non-EU

1,518,411

150,015

5.9

5.9

Russia

1,406,050

142,806

10.2

5.6

North America

2,404,584

160,066

6.3

6.3

Canada

168,183

9,471

5.6

0.4

Mexico

425,754

67,332

15.8

2.7

The US

1,810,647

83,263

4.6

3.3

World’s Total

20,433,355

2,534,843

 

 

 

Data Source: United States National Research Council-- “Science & Engineering Indicators” (2016) 

 

この表の問題点は、データが2016年と古く、現状を表していない点にあります。

そこで、Copilotに更新を依頼しました。

 

こうした依頼の場合、データソースが問題になります。

 

表1のデータは、「Data Source: United States National Research Council-- “Science & Engineering Indicators” 」ひとつだけなので、AIが間違える確率は低いと思われます。

 

Copiotは、2025年のデータを返してきました。




表2-主要国(または地域、経済圏)における工学部卒業生の数と割合(2025)

Table 2-The number and proportion of engineering graduates in major countries (or regions, economies) (2025)



Countries/regions/economies

Total number of graduates

Number of engineering graduates

The proportion in the total number of   engineering graduates in the country (region)(%)

The proportion in the total number of global   engineering graduates (%)

国・地域

卒業生数

エンジニア卒業生数

国内の卒業生に対する比率

世界のエンジニアに対する比率

Asia

13,820,000

2,420,000

 

73.2

China

4,120,000

1,120,000

27.2

33.9

India

6,800,000

720,000

10.6

21.8

Japan

610,000

84,000

13.8

2.5

EU

2,950,000

210,000

 

6.4

France

330,000

24,000

7.3

0.7

German

410,000

46,000

11.2

1.4

Britain

420,000

18,000

4.3

0.5

Non-EU

1,620,000

160,000

9.9

4.8

Russia

1,500,000

150,000

10.0

4.5

North America

2,600,000

180,000

6.9

5.4

Canada

190,000

11,000

5.8

0.3

Mexico

460,000

70,000

15.2

2.1

The US

1,950,000

99,000

5.1

3

World’s Total

22,990,000

3,305,000

 

 

以下は、2016年と2025年の間の変化です。

中国の世界のエンジニアに対する比率を38.1%から、33.9%に落としています。

中国のエンジニアの国内の卒業生に対する比率は、31.7%が、27.2%に低下しています。

この変化は、「中国製造2025」の期間に起きたので、意外な気がします。

エンジニア卒業生数について見ると、2016年と2025年の間で、日本だけが減少しています。

この点を確認するために、表3では、変化を比率で計算しました。

 

表3-主要国(または地域、経済圏)における工学部卒業生の数と割合の変化(2016-2025)

国・地域

変化ーエンジニア卒業生数

変化ー国内の卒業生に対する比率

変化ー世界のエンジニアに対する比率

Asia

1.33

 

1.02

China

1.16

0.86

0.89

India

1.31

1.06

1.00

Japan

0.96

0.88

0.71

EU

1.09

 

0.84

France

1.06

1.00

0.78

German

1.05

0.99

0.82

Britain

1.10

1.02

0.83

Non-EU

1.07

1.68

0.81

Russia

1.05

0.98

0.80

North America

1.12

1.10

0.86

Canada

1.16

1.04

0.75

Mexico

1.04

0.96

0.78

The US

1.19

1.11

0.91

World’s Total

1.30

 

 



変化ー世界のエンジニアに対する比率は、プレーヤーの国が増えているので、全体としては、現象になります。

 

減少率が、0.89以上は、アメリカ(0.19)、中国(0.89)、インド(1.00)です。



 石破首相は21日、横浜市で開催中の「第9回アフリカ開発会議」(TICAD9)で、日本とアフリカの経済連携を強化するため、産学官による検討委員会を設置すると表明した。アフリカ諸国を対象に、今後3年間で30万人の人材育成を実施し、経済の多角化を支援する方針も打ち出した。

 

人材育成に関しては、首相は「AI(人工知能)を含むデジタル関連産業など新しい分野の人材育成は、成長を加速させる土台の一つとなる」と指摘した。東大と国際協力機構(JICA)はアフリカの各大学と連携し、今後3年間で3万人のAI人材を育成し、アフリカでの起業や現地企業での雇用につなげることを目指す。

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日本とアフリカの経済連携強化、産学官による検討委設置を石破首相表明…3年間で人材育成30万人 2025/08/22 読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/bf10d6c02851666d051336785c789fbf5c955b07

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この方針は、日本のエンジニア養成が破綻しているという事実を無視しています。

 

現在、アフリカの国の技術開発モデルは、日本ではなく、中国、インド、ロシアになっています。日本は、エンジニア養成に失敗して、35年間の経済停滞に入りました。アフリカの国は、既に、日本は、ロールモデルではないと考えています。

 

韓国のAIスタートアップ「アップステージ」が、7月に発表した「ソーラープロ2」が、AI分析機関アーティフィシャル・アナリシスから、世界最先端レベルの「フロンティアモデル」として認められました。

 

日本には、アーティフィシャル・アナリシスから、世界最先端レベルの「フロンティアモデル」として認められたAIはまだありません。

 

今回のように、Coplilotに質問すると、Copilotはデータベースを参照して表をつくります。データベースは、アメリカにあります。

 

似たような日本に関する質問を、Copilotにしても、まともな答えは得られません。

 

これは、ColilotがWEB上にあるデータを引くためです。

 

アメリカでは、データに基づく議論(パラグラムの論理)がなされるので、データがあります。

 

日本は、無謬主義で、データを無視した過去の政策のコピーが繰り返されます。その結果、日本では、まともに機能するAIを作ることが困難です。

 

日本は、日本のデータをつかってAIをトレーニングすると主張している人もいますが、無謬主義が通用しているとこには、データはありません。




2)安全な戦争

 

従来の学術会議の見解では、武器を開発する研究は、悪い研究になります。

 

しかし、現在の戦争の対戦パターンは、次の3つです。

 

PT1:人間対人間

 

PT2:人間体機械

 

PT3:機械対機械

 

武器を開発する研究は、悪い研究と考える根拠は、PT2を想定しているように思われます。

 

現在は、急速にPT3にシフトしています。

 

PT3は、人間にとって安全な戦争になります。

 

自動運転ミサイルや自動運転ドローンの技術がなければ、オペレーターは危険なエリアで、操作することになり、危険な戦争になります。

 

自動車の自動運転技術の遅れとドローンの開発技術の遅れは、日本が危険な戦争に向っていることを示しています。

 

また、少子化がここまで進んだ結果、兵士の確保は、不可能になっています。

 

この問題(エンジニア養成)に対して、防衛費の増額は、まったく効果がありません。