オランダ病を理解する(5)

1)2種類のデータ

 

前回、「2001年から2020年に米国で工学系博士号を取得した上位20カ国」と「エンジニアの人口」の2種類のデータを扱ったので、2種類のデータの関連を確認しておきます。

 

事前情報がない場合、想定される関係は、次になります。

 

<1>エンジニアの数と米国で工学系博士号を取得した人数は、概ね比例する。

 

<2>データ入手が困難な国では、推定値がばらつく。

 

図1と図2では、2つのデータをプットしています。

 

図1と見ると、2つのデータの間には、相関があるように見えますが、中国とインドのデータの影響が大きいです。

 

そこで、図2では、中国とインドを除いてプロットしています。

 

図1 エンジニアの数と米国で工学系博士号を取得した人数(国別)



 

 

 

図2 エンジニアの数と米国で工学系博士号を取得した人数(国別、中国とインドを除く)



 

日本、ロシア、バングラデシュが、外れ値になります。

 

ロシアとバングラデシュのデータは、あてにならないと思われます。

 

留学生数を技術者数でわると、技術者の内の博士過程の留学経験のある人の割合の指標になります。

 

これを図3に示します。

 

図3 技術者の内の留学体験のある人の割合の指標

 

図3から、日本の技術者は、鎖国状態にあることがわかります。

 

OJTは、年功型雇用に結びつき、技術の固定化と鎖国状態を実現します。

 

図3は、OJTの効果を示していると思われます。

 

図4 おおよその相関関係



 

図4は、おおよその相関関係を示しています。

 

図4のラインが、標準的な留学生比率であり、台湾とカナダは比率が高くなります。

 

一方ロシアは、アメリカとは分断されているので、比率が低くなります。

 

トッド氏が、高い評価をしているイランは、ここでも、技術者の内の留学経験のある人の割合が高くなっています。

 

図4のラインで考えれば、日本の使える技術者の人口は、70万人を下回り、30万人程度と思われます。

 

20歳から34歳の間は、15年です。

 

30万人を15年で割れば、2万人になります。

 

2025年の大学入学者数は約64万人なので、2万人であれば、3.1%になります。

 

大学ランキングにのっているレベルの大学の工学系の卒業者数を考えると、概ね妥当な数字と思われます。

 

2)システムの安定性

 

オランダ病をシステム工学で考えれば、システムの安定性の問題になります。




図5 物理学の履修率



 

図5は、物理学の履修率のイメージ図です。

 

システムが安定している場合には、履修率のグラフは、水平になります。

 

システムが不安定な場合には、履修率のグラフは右下がり、または、右上がりになります。

 

オランダ病の特徴は、システムの安定性がなくなっていることです。

 

システムの安定性がなくなれば、グラフの右下がり、または、右上がり傾向は加速度がついて、止まらくなります。





図6 日米の一人当たりGDPの変化と比率

図6は、日米の一人当たりGDPの変化と比率を示しています。

 

時系列は因果ではないので、以下の説明は、仮説の作成のみで、検証にはならないことに注意してください。

 

1990年以降失われた35年になりますが、図6は、35年が大きく3つにわかれることをしめしています。

 

PERIOD1:1990-2000年

 

PERIOD2:2001-2012年

 

PERIOD3:2013-2024年

 

PERIOD1

この時期の日本の一人当たりGDPアメリカと大差がありません。

 

PERIOD2

この時期の日本の一人当たりGDPアメリカの75%前後です。

 

PERIOD3

この時期の日本の一人当たりGDPアメリカの75%から35%に低下しています。

 

2021年以降は、ドル換算の一人当たりGDPが下がっています。

 

これは、円安の影響です。

 

PERIOD3では、システムは安定性を欠いています。

 

PERIOD2とPERIOD3の間の違いは、アベノミクスクラウドスマホの普及、AIの進歩など複数の要素があります。

 

時系列は、因果ではないので、このうちどれが主要因かは、グラフからは判定できません。

 

システムが安定を欠いていることは、飛行機で言えば、墜落を始めて、加速度がついている状態です。

 

今までの政策を継続することは、墜落を放置することになるので、最大のリスクになります。

 

PERODO2とPERIOD3の経済政策の違いが、墜落の主要因である可能性があります。

 

時系列グラフは因果を示しませんが、経済政策は、原因になることを意図して行われています。

 

経済政策の違いが、墜落の主要因である場合には、経済政策をいったんPEROD2に戻して様子をみるべきです。

 

薬(PERIOD3の経済政策)を飲んで、体調(経済)が悪くなった場合には、いったん、薬の服用をやめます。薬を飲み続けるべきだという医者は、考えらえません。

 

PRIDOD3の薬は、「金融緩和、消費税の増税法人税の減税、歳出の拡大、生産性を無視した春闘における賃金上昇」などです。

 

筆者には、図6は、日本経済の墜落を示しているように見えます。

 

PERIDO3の補助線の傾きは、10年で、1.5倍が、2.5倍になっています。

 

このトレンドでいけば次の10年には、アメリカの3.5分の1になります。

 

システムが不安定な場合には、加速度がつくので、線形のトレンド予測より変化が大きくなります。

 

貧富の差が拡大しているメカニズムが、オランダ病にある場合には、この予測が実現します。