理系の経済学(5)2つの経済学

(2つの経済学の可能性を考えます)

 

1)経済学の課題

 

経済学が解決すべき課題は、貧困の解消です。

 

このために、経済成長を最大化する方法を研究してきました。

 

コブ=ダグラス型関数は、よく使われる生産関数のひとつです。

 

コブ=ダグラス型関数は次の形をしています。

 

Y=A*f(K,L)

 

Y = 総生産量(通常は1年の総生産量)

K = 資本ストック

L = 労働投入量

A = 全要素生産性

 

ここでは、生産関数は、資本ストックと 労働投入量の関数です。

 

つまり、生産を最大化するには、資本ストックと 労働投入量を増やす必要があります。

 

生産関数は、一工場または、一部門の生産をモデル化しています。

 

複数の工場や複数の部門がある場合、資本ストックと 労働投入量の合計値は一定になります。

 

この条件下で、最適な資源(資本、労働量)を配分するには、どうすれば良いかが課題になります。

 

評価関数は、付加価値の最大化で、そのための最適な資源配分解を求めることが課題です。

 

評価関数の最大化する解を求めるという問題設定は、制御工学やデータサイエンスと同じで、工学のデザイン思考の基本的なパターンです。

 

評価関数の最大化する解を求めるという問題を理解する基本的な手順は以下です。

 

第1に、一番簡単な問題と一番簡単なにアルゴリズムを使って、実際にコーディングして、問題を解きます。この段階では、問題のイメージをつかむことに重点をおきます。



第2に、一番効率的と予想される、複数の複雑なアルゴリズムを使って問題を解きます。この場合には、アルゴリズムはコーディングしないで、既存のライブラリを使います。

 

この学習方法は簡単に言えば、中抜きです。

 

データサイエンスでは、学習すべき内容は膨大です。なおかつ、毎年のように新しいアルゴリズムが開発されています。それをフォローすることは、不可能ですし、無駄です。

 

実装してみるアルゴリズムだけに、検討対象を限定します。

 

経済学を、評価関数を最大化する資源配分の解を求める問題に限定して考えるスタンスが、理系の経済学です。最適化問題が理解できていれば、それで十分とします。

 

従来の経済学を自動車のようなものと考えれば、理系の経済学は、飛行機のようなものです。

 

自動車の経済学は、気にしないことにします。

昔、マルクス学者の美濃部東京都知事は、一般向けに経済学の講義をしていました。美濃部氏は、池田勇人内閣のブレーンでもありました。

 

ただし、美濃部氏の説明を、最適化問題アルゴリズムとして理解することは困難です。

 

なので、使えないと判断します。

 

飛行機の経済学が可能になったのは、ここ20年くらいのことです。

 

パソコンの能力が、前世紀のスーパーコンピュータを凌駕し、クラウド上に公開されたデータがあるようになってからです。

 

2)市場原理

 

経済学の知見では、最適な資源(資本、労働量)を配分する方法には市場原理しかないという結論になっています。

 

市場原理は、クラウドサービスやスマホがない時代の解法です。

 

市場原理は、価格比較のコストがゼロであるという前提で定式化されていますが、実のところ、価格比較サイトのない時代には、、価格比較のコストは、非常に大きなものでした。

 

また、インターネットが普及するまでは、通信コストは膨大でした。特に、国際電話のコストは大きかったです。

 

こうしたリマークには配慮しますが、現時点では、市場原理が最有望な方法です。

 

ただし、市場原理には、市場がない独占の場合、市場取引に乗りにくい環境が無視される問題点がわかっていて、補正が必要です。

 

また、日本には、労働量を市場原理で配分できないという致命的な欠陥があります。

 

3)2つの学問

 

従来の経済学には、理由は不明ですが、流行があります。

 

2%インフレ目標は、流行にすぎません。

 

自動車の経済学と飛行機の経済学は、共存するのでしょうか。

 

データサイエンスが出現したときは、アルゴリズムは、統計学アルゴリズムでした。

 

現在のデータサイエンスは、統計学を超えるアルゴリズムをもっていますが、スタート時点は、統計学と競合していました。

 

2024年時点では。データサイエンスは、統計学を呑みこんでいます。

 

AIには、半導体GPUを使います。

 

現在、GoogleAppleMicrosoftは、独自の半導体を作って使っています。

これは、統計学の範疇では、できません。

 

クラウドを使った住民投票を政治に反映する試みがあります。

 

これは、従来の自動車の政治学に比べれば、飛行機の政治学です。

 

ここ2年ほどの間に、電気調理器が進歩しています。

 

家電メーカーは、著名は料理学校とタイアップした製品を出しています。

 

しかし、調理学校は、自動車の調理学校から、飛行機の調理学校にグレードアップすべきです。

 

調理学校で、自動調理のプログラミングを教えるべきです。

 

写真学校では、生成AIによる合成写真のコーディングを教えるべきです。

 

自動車タイプと飛行機タイプの2つの学問は、経済学だけでなく、多くの学問で発生しています。

 

専門学校や大学の現在のカリキュラムが崩壊するまでに残された時間は少ないです。