(23)The fixation of belief ver.2.0
(Q:The fixation of belief の新バージョンにお気づきですか)
1)GPT4
AI開発企業のOpenAIは現地時間2023年3月14日、生成AIの最新版「GPT-4」を発表しました。
GPT-4はGPT-3.より、推論性能が向上して、「専門的・学術的なベンチマークでは人間レベルのパフォーマンスを示す」といいます。
GPT-4は司法試験の模擬試験で受験者の上位10%相当の合格点を獲得したが、GPT-3.5では下位10%程度でした。
グーグルも2023年3月14日、生成AIを「Gmail」、「Google ドキュメント」、「Google スプレッドシート」といった「Google Workspace」アプリ全般に組み込むと発表しました。文章の自動生成といった機能が導入されるそうです。
司法では原則は、「疑わしきは罰せず」といいますが、これは建前にすぎません。
例えば、DNA鑑定で、人物が特定できても、その確率は、100%にはなりません。
つまり、現実には、司法では疑わしい場合には、有罪になります。その判定基準の確率は、罪の重さの関数になっていると予想されます。
また、パースの科学的な意見集約の方法では、白黒がつかない場合も多くなりますが、司法では、白黒をつけることが原則なので、科学的な方法が使えないことも多いです。
そうなると、前例(判例)主義になりますので、パターンマッチングが主な手法になります。
画像認識に見られますように、AIのパターンマッチングの能力は、人間を超えています。
つまり、機械学習とチューニングが上手くいけば、「司法試験の模擬試験で受験者の上位10%相当の合格点を獲得」できて当然と思われます。
2)専門家の敗北
司法で、過去の前例(判例)主義を使った判決では、人間は生成AIに勝てません。
司法で、罪の重さに対応した判定基準の確率を計算する場合では、裁判官による判決のバラツキの大きさにおいて、人間は、AIに勝てません。
このような限定的な、しかし、司法では、メジャーな条件では、人間は、AIに道を譲るべきです。
司法判断の一部をAIに譲れば、弁護士や裁判官に失業者がでます。
だからと言って、AIができる部分を、AIを使わずに、人間の弁護士や裁判官にまかせ続ければ、それも、問題を引き起こします。少なくとも、労働生産性の向上にブレーキをかけるので、国が貧しくなってしまいます。
このAIと知識労働者の競合問題は、弁護士や裁判官に特異的ではなく、医者や学者など全ての知識労働者で起こります。
筆者は、最近のパースの「The fixation of belief」のような論文を見ています。
日本には、英語で書かれた英米哲学の専門家がいます。
こうした専門家の英語能力は、筆者の英語能力より高いです。
なので、従来は、日本人の英米哲学の専門家が、日本語で、書いた英米哲学の解説を読むことがもっとも効率的な英米哲学の学習方法でした。
しかし、スノーの「二つの文化と科学革命」に見られるように、日本人の人文科学の研究者の科学的なリテラシーは高くありません。それは、個人の資質ではなく、スノーが反対した、文系と理系を分けるというカリキュラムに原因があります。そして、人文科学者は、科学的文化は、ギャップを埋めれば人文的文化で理解できるという前提で、英文を解読して、和文に訳しています。
これは、科学の立場で書かれた英語の文献の和訳としては、誤訳が入る可能性が高いことを意味します。パースも、哲学者である前に、科学者でしたので、パースの著書の和訳には、問題がある可能性が高いです。
そこで、筆者は、パースの理論は、英語のウィキペディアをGoogle翻訳で読んでいます。
Google翻訳には、10から20%程度の間違いがありますが、和文がおかしな場合には、元の英文にあたることにして、ともかく、英語のウィキペディアをGoogle翻訳で読みます。
原文の英語を読むより速く、大量の情報が処理できます。
英語のウィキペディアの情報量は、日本語のウィキペディアの情報量の数倍あります。
つまり、この方法を使うと、日本語の文献を読んでいた場合の数倍の情報を得ることができます。
英語のウィキペディアを書いている人は、英語を母国語とする英米人です。
この人たちの英語力は、日本人の英米哲学の専門家の英語力より高いです。
パースの哲学の解説としては、英語のウィキペディアの方が、日本語のウィキペディアより、信頼性が高くなります。
日本語のウィキペディアを読むより、英語のウィキペディアのGoogle翻訳を読む方がはるかに、効率的で、正確な学習方法です。
Google翻訳には間違いがありますが、英語で得られる情報の量と質が、日本語で得られる情報の量と質を凌駕していますので、トータルで考えれば、英語のウィキペディアのGoogle翻訳の圧勝です。
こうして、横のモノを縦にすることで、生計を立てていた専門家は、不要になっています。
英語能力が高い専門家は必要ですが、それは、今まで英語で書かれてなかった内容を英語で発信する場合になると思われます。
3)マイクロソフトbing
今のところGPT4は、有料です。
しかし、Microsoft BingチャットはすでにGPT-4ベースになっています。
筆者は、Microsoft Bingチャットのウェイティングリストに登録しました。
これは、巧妙に出来ていて、Microsoft Bingをデフォルトのブラウザーにするとウェイティングリストの順番が早くなるようになっています。
GoogleのChromeは、Gmailと連動していますので、Googleはユーザー情報を把握しています。
Microsoft Bingチャットに登録することで、Microsoftはユーザー情報を把握しています。
これで、Microsoftは、Googleと同じスタート地点についています。
Microsoft Bingチャットはユーザーと対話します。
ここがポイントです。
対話することによって、Microsoftは、Googleよりはるかに高度なユーザー情報を取得することができます。
対話の内容を分析することで、Microsoftは、ユーザーのレベルをかなり正確に評価することができます。
これは、人間の対話と同じです。
対話の受け答えをみれば、その人の知的レベルは、正確に判断できます。
Google検索が使えなくなった原因は、ネット上のフェイク情報やコピー情報の氾濫です。
現在、まともな情報と使い物にならない情報を識別することが課題になっています。
筆者は、その最も基本的な判断基準は、情報の発信者の信頼性になると考えます。
ウィルス対策ソフトが、リンク先は危険なサイトなので、接続しないことを推奨するというワーニングを出すのと同じです。
ここでの問題は、詐欺ではなく、発信する情報の信頼性です。
チャットが入れば、Microsoftは、検索情報の信頼性の点で、Googleを越える可能性が出てきました。
Googleも当然、そのことには、気付いていますので、巻き返しをはかっています。
4)A:The fixation of belief の新バージョン
パースは、The fixation of beliefで科学的な意見集約の方法 以外に、望ましくはないが、実際に使われている3種類の方法を提示しました。
(1)意見を変えない確執
(2)権威による方法
(3)形而上学(あるいは筆者の解釈では、前例主義)
(4)科学的法
科学的方法が基本ですが、司法のように、科学的ではないが、白黒をつけたい場合があります。その場合には、権威による方法か、前例主義が使われています。
しかし、チャットにより、情報発信はの信頼性を判断して、信頼性の高い人の意見に重みをつけた意見集約は可能です。
これは、パースが想像していなかった世界です。
ですから、The fixation of beliefのver.2が、出てきていると解釈できます。
これは、全く新しい意見集約の方法であることに注意すべきです。
引用文献
Open AIが「GPT-4」発表──マルチモーダル化、文章・画像を併用した質問に対応 2023/03/15 Newsweek 冨田龍一
https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2023/03/open-aigpt-4.php