衆議院選挙前に与野党の公約の目くらましを取り除く

衆議院選挙前に各党が公約を出して活動を活発化させています。

マスコミは、公約の文字や、個別の活動について記載しています。

しかし、日本の政党の公約は、支持母体の要求をホチキスで閉じたもので、体型的には、矛盾の塊です。

また、目くらましが含まれています。目くらましというのは、実現するつもりが全くない人気取りのための公約です。形式的にごく一部の政策だけを実現して、本質から目をそらさせる、目くらましの方法もあります。貧困対策に、10万円の現金をくばることがあります。しかし、これは、本来、減税政策で対応すべき内容ですから、目くらましです。ふるさと納税は、交付金の配分政策を変えないための目くらましです。目くらましの議論に、参加すると、本質の議論が抜けて、改革が先送りされて、長期的には、経済発展が阻害されるので、避けるべきです。

公約の実現比率を計算して、民主党政権の公約実現率が高かったと評価する人もいます(2021/10/16の現代ビジネス)が、単一の公約の重さの違いを無視して集計しても意味がありません。(なお、バイアスがあるかもしれませんが、2012年の馬淵澄夫政調会長代理の作業チームの公約実現率の評価は3割でした)

民主党政権は、事業の無駄を見直せば、打ち出の小槌のように、財源が、出て来ると言いましたが、それは、無理で、消費税増税に動いています。この経過は以下で、論じました。

日本の政治は、エビデンスに基づいているのか? 2021/10/10

2016/07/08の証券会社カタログも、民主党政権の重要な政策は、財源がなく、実現しなかったと分析しています。

つまり、民主党政権の失敗は、財源を含む経済改革に手が付けられなかったことが原因です。

このように考えると公約のポイントは、経済政策の実現性に集約できると思われます。

ところが、今回の衆議院選挙の公約は、与野党ともに、バラマキのオンパレードで、これは、過去の民主党政権の政策の繰り返しにすぎません。つまり、持続不可能な政策であり、経済や社会システムを棄損してしまいます。

経済学を少しでもかじった人であれば、目を覆いたくなります。

ばらまき政策は、目くらまし、そのものですから、この部分は、見なかったことにすると本質がみえます。

2021/10/16の日経新聞(5面)で、村田啓子氏は、「労働者が成長分野に移る労働移動を活発化する必要がある。労働者がより付加価値の高い仕事をして、その対価として賃金が持続的に上がっていくことが大事だ」と述べています。

これは、池田内閣の所得倍層計画そのものです。

2021/10/18の ニューズウィークで、小幡 績氏は、モノに投資するのではなく、長期的に、教育を改善して、人を作らないと経済成長はないといっています。

この辺りが、経済学のイロハの教える経済成長戦略です。

村田啓子氏の「労働者がより付加価値の高い仕事をして」という事項は、DXに他なりません。

つまり、経済政策、特に、DXの実現性をフィルターにして、公約を読み解けば、目くらましが取り除けます。

過去の例で言えば、安倍、菅政権の構造改革やDXは目くらましです。菅政権では、政権末期に、デジタル庁を作りましたが、活動期間の1年の間のDXの遅れは目を覆うばかりで、コロナウイルスのデータを保健所がファックスで集計していましたので、実績はゼロです。

保守政権は、基本的に、既存の社会経済システムを保持することを目的とした支持団体を政権基盤にしています。つまり、社会変革(労働者が成長分野に移る)や、DXは、既存の社会経済システムを破壊するので、反対です。

2021/09/25のニューズウィークで、パックンは、「アメリカから見ると自民党はめっちゃリベラルです」と言いますが、このリベラルは、実は、めくらましです。

2021/10/15の産経新聞は、岸田政権が「衛星ビジネス、電波法の外資規制撤廃見送」ったことを伝えています。

2021/10/18の朝日新聞は、日本記者クラブでの各党党首の討論会を以下のように伝えています。


候補者の一定数を女性に割り当てるクオータ制の導入をめぐっては、首相は「環境整備や意識改革を進めずして、単なる目標、さらには法律のしばりをつくっても、現実、なかなか変わらない」と述べた。これに対し、立憲民主党枝野幸男代表は衆院選参院選比例区の制度の改正を主張。「(比例名簿の)1位には女性が同順位で並ぶ、2位には男性が同順位で並ぶ、こういうやり方を認めてもらえれば、すぐに比例区は男女同数になる」と訴えた。


このように、現状を変えないことが、保守政権の政策の基本です。

安倍、菅政権で、構造改革が進みませんでしたが、これは、構造改革が、目くらましに過ぎないと考えればわかりきったことです。

筆者は、データサイエンスや経済学の視点でものを考えますので、保守の思想はよくわかりませんが、ニューズウィークの 古谷経衡の猫系作家の時事評論には、 保守の思想が、自由民主党を動かしている事例が多数、示されています。

つまり、自民党構造改革やDXは、目くらましと考えると、安倍政管から続いた現状が理解できます。

立憲民主党と国民民主党には、労働組合を、支持基盤とする議員がいます。日本の労働組合は、業種別ではなく、企業別で、大企業中心で、終身雇用に結びついています。ですから、現状を変えないことを支持します。

つまり、野党の多くは、体制維持であって、社会変革(労働者が成長分野に移る)や、DXには、反対です。

10月15日に第1回目が開かれた「新しい資本主義実現会議」には、日本労働組合総連合会会長の芳野 友子氏が選ばれています。

トヨタ労組を基盤とする立憲民主党の古本前衆議院議員は10月14日、31日投開票の衆院選に出馬しないことを表明しています。

つまり、 トヨタ労組は、EVになると、解雇が発生するので、対立候補を立てるよりも、与党内で、EV反対の現状維持政策をプッシュする方が、よいと判断したと考えられます。

なお、トヨタのEV対策は、重要な論点で、以下で、既に論じています。

アイリスオーヤマがEVを作る日 2021/10/04

一般に、2大政党では、「与党=現状維持、野党=改革志向」になるのですが、日本の場合、「与党=現状維持、野党=現状維持」なので、野党の存在理由がありません。これが、野党の支持が伸びない理由です。もちろん、共産党のように、改革志向の政党はありますが、経済学的に、持続可能であると確信できるだけのデータは出していません。

 

まとめますと、「現状維持か、改革志向か」、「持続可能な経済政策があるか」、「社会変革(労働者が成長分野に移る)や、DXを推進するか」をフィルターにして、目くらましを取り除いてみると、本質が見えます。

その結果、今回の公約は、与野党ともに、現状維持志向で、経済が改善することはありえません。

ただし、クオータ制の導入などがあれば、次の次の選挙では、議員が入れ替わって改革志向が実現して、労働生産性が上がる可能性が見えるところが、唯一の救いでしょうか。

 

  • 民主党政権はそこまでひどかったのか? 安倍政権と比べてみると… 2021/10/16 現代ビジネス

https://news.yahoo.co.jp/articles/e90f2fa1f48369ba19e9ae38b1de467d3bcf5aec?page=2

民主の衆院選公約、実現は3割 2012/10/26 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXDASFS2502Q_V21C12A0PP8000/

  • (現民進党民主党政権時代の失敗について。民主党政権は失敗だったとよく言いますが、何が問題だったか挙げてもらえますでしょうか?(大震災関連の話を除いてお願いします)2016/07/08 証券会社カタログ

https://finance.yahoo.co.jp/brokers-hikaku/experts/questions/q13161415823

https://www.newsweekjapan.jp/pakkun/2021/09/-929-nhk-lgbtq-2.php

https://news.yahoo.co.jp/articles/f58982a60518b757e66e19261f4f2e85b34d69d6

https://www.huffingtonpost.jp/entry/kyoshu_jp_616d1a78e4b079111a4bbbfd

https://news.yahoo.co.jp/articles/c545ddebaaabd87ccbb1ed0d1352c0627a3abfd2

https://www.newsweekjapan.jp/obata/2021/10/post-73.php

  • ニュースウィーク 猫系作家の時事評論 古谷経衡

https://www.newsweekjapan.jp/furuya/

  • 新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html

https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20211015_12628

 

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