2035年に、協調運転で、信号機が無くなり、交通事故は激減する

ここでは、自動車の協調運転を考えます。なお、煩雑になるので、歩行者の問題は別途、論じます。

現在の自動運転は、GPSと自動車のカメラの画像を分析して、ハンドル操作の判断をしています。高速道路の場合には、自動運転が容易な訳は、カメラには、車線の境界線と自動車以外の映像が、含まれていないためです。そこでは、カーナビと同じレベルの精度のGPSのデータが使われているはずです。そこには、車線の境界線や横断歩道のデータは含まれていません。

現在の自動運転のアルゴリズムには、協調運転は含まれていません。協調運転は、現在の道路交通法にも含まれています。例えば、信号機のない交差点で、2台の自動車が、出会った場合に、どちらが優先するかという一般ルールが決まっています。交差する2車線の一方に止まれの標識がついている場合もあります。このルールは、2台の自動車が同時に、交差点に達した場合で、一方が、明らかに、先に交差点に達した場合には、適用されません。このため実際には、ドライバー同士が、お互いの顔を見て、ルールを確認してから、発進します。

交差点の優先運転を、協調型の自動運転で行うのであれば、2台の自動車が通信して、調整をしてから、発進することができます。こうすれば、交差点での出会い頭の交通事故は無くなります。更に、交差点に達する前から協調運転をすれば、先に到達する自動車の速度を早めに、遅れて到達する自動車の速度を遅めに設定できれば、交差点で、一旦停止は不要になりますので、CO2の発生量を減らすことが可能です。

現在は、信号機のある交差点と信号機のない交差点では、信号機のある交差点の方が安全と考えられています。交差点で、事故が起こると信号機がつけられることがありますが、これは、信号機を付けると安全性が向上すると考えられているためです。

信号機の機能は、協調運転をすることです。協調型の運転が可能になると、信号機は不要になります。信号機が赤で、交差車線に自動車がない場合には、信号機は無駄な一旦停止によるCO2の発生源で、渋滞の原因にもなります。こう考えると、信号機は撤去して、協調運転に切り替えるべきです。

自動運転が協調運転をすると、信号機は、人間が運転する場合にのみ必要ですが、これは、自動車のフロントディスプレイの前景の上に、バーチャルな信号機を画像合成すれば、不要です。

現在、カーナビに使われているフロントディスプレイでは、画像表示を、リアカメラに限って使っていますが、これは不合理です。ドライブレコーダーがついていれば、フロントカメラもついています。また、リア画像にサイドカメラの画像を合成している場合もあります。つまり、自動車の周辺に全て、カメラを設置して、死角をなくすことは、データ収集の上では問題がなくなっています。

そこで、全ての自動車に死角のない4台以上のカメラがついて、お互いに通信して、協調運転をする場合を考えます。カメラの設置目的は、死角をなくすことです。協調運転で、データ通信を行なえば、どこまで死角がなくなるでしょうか。

自動車が、交差点に近づいた場合を考えます。同じ車線に自動車が見えますが、手前の自動車で、後ろの自動車が隠れて見えません。協調運転であれば、データ上には死角はありません。メインディスプレイの自動車の表示を半透明にすれば、重なって見えない部分も表示できます。自動車の間に、バイクや自転車があっても表示されます。バイク、自転車、歩行者などは、目立つ色で、表示することも可能です。

これらの表示は、最近の高性能カメラを使えば、日没や夜間でも可能です。

次に、交差点を左折するとします。左折した先に、何があるかは、見通しの悪い交差点では、現在は、左折するまでわかりません。しかし、協調運転であれば、そのデータは受信しているので、表示可能です。つまり、現在のリアカメラと同じように、交差点を左折した先の画像も、メインディスプレイの一部に表示できます。

フロントディスプレイは、仮想空間ですが、リアルにない長所があります。

こう考えると、信号機は、できるだけ早急に廃止して、協調運転に切り替えれば、交通事故が激減することがわかります。

今、何をすべきでしょうか。

  • 全ての新車に、4台以上のカメラの設置と通信装置の設置を義務づける。

  • 協調運転に必要な、通信プロトコルを決めて、通信装置にプロトコルを実装する。

  • 将来のソフトウェアのバージョンアップに対応したソフトウェアモジュールの規格を決めて、とりあえずは、データ処理をしないダミーモジュールを実装する。

つまり、自動車の耐用年数を10年とすれば、2025年以降の販売する全ての新車には、カメラと通信機器のハードの設置を義務付け、後付けで、ソフトウェアモジュールを追加できるような互換性を担保しておく必要があります。

監視カメラとの連携も考えるべきです。

なお、この種の技術革新は、中国が先行しているはずです。DXでは、どこかが成功してから模倣するという戦略は、できません。それは、成功の要因が、プロトコルとソフトウェア開発にあるためです。先手必勝です。

なお、自動車工業会の自動運転ビジョン(2015年)には、協調運転が全く入っていませんので、このままでは、時代おくれです。既に、古いので、改訂版を期待したいと思います。この2015年のビジョンのレベルのソフトウェア技術では、生き残りは困難と考えます。

  • 自動運転に関する取り組み 日本自動工業会

https://www.jama.or.jp/safe/automated_driving/

 

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