初めてのdarktable3.6(3.4改訂版)(3)

これは、2021年1月5日と2021年1月6日に書いた、初めてのdarktable3.4の改訂版です。

元の記事は以下にあります。

露光の説明の課題 2021/01/06

初めてのdarktable3.4(3) 2021/01/05

表示参照ワークフローの概要(1)

dakrktableでは、ワークフローを選択して編集できますが、その前に、ワークフローの概要を先に説明したいと思います。今回は、歴史的な表示参照ワークフローを説明します。

表示参照ワークフローは、カラーフィルムが普及した1970年頃から、2010年頃まで、カラー写真を撮影するために用いられたワークフローです。ここでは、2000年から2010年頃に主に使われた、デジタルカメラを想定して説明します。

図1を説明します。一番左が実世界で画像のダイナミックレンジは22EVあります。バーは上が明るい部分、下が暗い部分に相当します。これに対して、センサーのダイナミックレンジ(RAWのダイナミックレンジ、赤い四角の左のバー)は8EVです。(注1)Jpeg(ディスプレイ、赤い四角の右のバー)のダイナミックレンジも8EVです。RAW現像とは、センサーのRAWデータ(赤い四角の左のバー)を読みこんで、目の反応に合わせて、明るい部分に重みをつけたベースカーブ変換をして、赤い四角の中央のバーのRAWデータをつくります。次に、トーンカーブで微調整をしたのちに、Jpeg(赤い四角の右のバー)データに変換します。

Jpegデータが、真っ白でも、真っ黒でも、何が写っているのかわかりません。つまり、平均的にグレーが入っているJpegデータが情報量の多いJpegになります。カメラで、撮影することは、実世界の22EVから8EVを切り取ることに相当します。この時、22EVの平均の明るさ(グレー)を、Jpegの平均グレーに対応させます。つまり、カメラの露光を変えることは、赤い箱で書いた3つのバーがセットで移動することに相当します。

例えば、図1では、白飛びしますので、ETTR(右側合わせて露出)するには、図1の青い矢印の分だけ、赤い箱を移動させます。こうすると、白飛びが減りますが、実際の画像は明るい部分を取り込んでいるのに暗くなります。

カメラの露光の説明は、基本的には、図1で出来上がっています。トーンカーブが内蔵されているカメラが多いのも、図1を前提としているからです。

注1:Realから、切り取った、RAWのダイナミックレンジは、現在では、8EVよりひろく、10から14EVあります。ただし、表示参照ワークフローの発想は、ダイナミックレンジが8EVの時代のものなので、図1では、8EVにしてあります。詳しくは、以下の図3の説明を見てください。

ベースカーブという用語は、darktable以外で見ることは少ないです。ベースカーブもトーンカーブとして、扱っている場合もあります。darktableで、ベースカーブとトーンカーブを区別している理由は、ベースカーブが大きな変換、トーンカーブが小さな変換で、画像に与える影響の大きさが違うためです。

 

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図1 一般的な表示参照ワークフロー

 

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図2 ETTR(右側合わせて露出)の露出

マニュアルと解説の課題

カメラ付属のマニュアルを含めて、カメラの解説には、多くの問題点が存在します。マニュアルや解説を読んでもよく理解できないことが多いのですが、その大きな原因に、執筆者がよくわかっていないことがあげられます。これは何も、執筆者が不勉強だと言っているわけではありません。カメラの操作法は、フィルム時代に出来上がります。フィルム時代にプロだったカメラマンは、その時代の操作法に熟練しています。カメラメーカーは、まず、熟練したプロのカメラマンに使ってもらおうとして、フィルム時代のカメラの操作方法を踏襲したカメラを作り、フイルムに準じた説明をします。混乱の原因は、この時に、生まれたと思います。例えば、フィルム時代では、1ロール撮り終わるまで、ISOを変えることはできません。しかし、デジタルカメラであれば、1枚ごとにISOを変えることができます。しかし、ISOを変えると、カメラの中で何が変わるのかについては、カメラのマニュアルには何も書いてありません。キャノンや富士フィルムのデジカメでは、1枚の画像に、ISOを変えた2枚または3枚の画像を合成して、ダイナミックレンジを広げているようです。しかし、ISOを変えるとなにが変わるかはよくわかりません。また、合成された画像がJpegであればわかりますが、RAWでは、合成の影響がデータにどのように反映されているのかがわかりません。あるいは、暗所の撮影では、ISO100か、ISO200で長時間露光するというフィルム時代の方法を踏襲するべきか、ISO3200くらいまでなら、ノイズが少ないので、シャッター速度を気にしないように、ISOをあげるべきか、あるいは、高ISOでマルチショットで撮影して、後で、画像合成するのがよいのかがわかりません。ISO200で、三脚を持ち出して撮影すれば、それなりのきれいな写真は撮れますが、折角、高ISOでノイズの少ないセンサーを積んだ新しい カメラを買っても、高ISOのショットを封印するのであれば、買い替えなければよかったと思う人も出てくると思われます。こうした疑問に応えるには、デジタルカメラのISOのメカニズムの説明が必須なのですが、マニュアルには記載がありません。

自動露光の問題

さて、今回、darktableの解説で、躓いたのは、自動露光の問題です。

たとえば、Wikiの「露出 (写真) 」には、次のように書かれています。


自動露出の限界

自動露出はカメラ内のTTL(Through The Lens)露出計の測定によって適正露出を割り出している。TTL露出計は反射光式、すなわち一旦ものに当たって反射した光を測定するタイプの露出計である。この露出計は反射率18%を適正露出の基準としている。18%グレーの反射板を自動露出で撮影すると、常に適正露出となるように設計されている。この数字は色々な反射率を持つ色の混ざった被写体の平均的な反射率が18%であるところからきている。

しかし、被写体の反射率が18%からかけ離れているときはどうであろうか?例えば白の反射率は例えば雪の場合60%から72%ぐらいである。このような被写体に対すると、露出計は光量が実際よりも多い(反射率72%と仮定すると18%の4倍=2EV分の光量)と判断し、実際よりも暗く写そうとする。その結果、自動露出で白っぽいものを撮ると露出アンダーとなる。


これは、典型的な説明ですが、「18%グレーの反射板を自動露出で撮影すると、常に適正露出となるように設計」という表現は、よく使われる説明ですが、意味不明です。「露出計は光量が実際よりも多い(反射率72%と仮定すると18%の4倍=2EV分の光量)と判断し、実際よりも暗く写そうとする。」の方がよくわかります。露出計がグレーを見ているわけではなく、光の量を見ているだけのはずです。フィルムの場合には、ISOに応じた適正な光の量があり、それより、ネガまたは、印画紙は、光量が、過大では白くなり、過少では黒くなります。シーンの光量が多い場合には、絞るまたは、シャッター速度を短くして、フィルムに入る光の量を減らすはずです。ただし、古いカメラは、自動調整がおバカさん(メカニック)なので十分に調整できないと思われます。マニュアルには、補正の方法の改善として、部分測光などが書かれていますが、人間の目の光に対する応答が十分に補正されているのでしょうか。

なお、TTL露出計のwikiの説明は以下です。

 


デジタルカメラ デジタルカメラにおいて、撮影用に使われる撮像素子そのものを使って露出を決定する方式のものが存在する。デジタル一眼レフカメラなど、旧来のカメラと同様なTTL露出計を用いているものも存在するが、コンパクトデジタルカメラでは撮像素子を用いる方式が主流である。


しかし、WEBを見ていたら、現在のデジカメにはTTL露出計はついていないよという説明もありました。こちらが、普通と思います。であれば、露光の説明にTTL露出計は入れて、欲しくないです。

また、露出 (写真)には以下の、説明がありました。


白とびと黒つぶれ

特定のフィルムや撮像素子において、白とびと黒つぶれが起こる限界の露出の幅の大きさをラティチュードあるいはダイナミックレンジという(フィルムではラティチュード、デジタルではダイナミックレンジという場合が多い)。ラティチュード、あるいはダイナミックレンジの幅が広いほど白とび・黒つぶれは起こりにくい。

ネガフィルムはダイナミックレンジが広い(10~11EV)。これに比べてリバーサルフィルムやデジタルカメラは狭く(5~6EV)、白とび・黒つぶれを起こしやすい。


デジタルカメラは狭く(5~6EV)」の表記にびっくりです。また、(10~11EV)はモノクロフィルムで、カラーフィルムは、より小さいと思います。

さて、問題は、筆者の理解は、現在の自動露光システムはフィルム時代を踏襲して、次のようにできていると考えているのですが、確認できなかったということです。

  • 出力の画像(フィルム時代であれば、印画紙の画像、デジタルカメラであれば、モニターの画像(注2))の最適な画像は、18%グレーになることである。

  • 入力は、フイルムに合わせた光の量を設定する。そこで、得られたフレームの光(デジカメであれば、センサーの信号強度)の濃淡の平均を出力画像の濃淡の平均に合わせる。こうすると、結果的に、18%グレーに見える画像ができる。

もっと、かみ砕いていえば、図3の問題です。図3は前の図1とほぼ同じですが、説明しやすいように、バーの上にL、C、Rのラベルを付けた点と、Lのバーの長さを少し長くした点が違います。バーを長くしたのは、次の2点を表現するためです。

  • フィルムの場合には、ダイナミックレンジが8EVでも、端で、感度が徐々に悪くなるので、白飛びと黒飛びの部分にグラデーションができ、目立ちにくい。

  • デジタルカメラでもセンサーサイズが1インチ以上の機種では、8EVを越えるダイナミックレンジがある。

図3で、左の実世界の22EVに対して、自動露出をかけると、赤い四角がどこに来るのかを説明しようとしてつまずいたわけです。

今のところ、上記の答えでよいと思うのですが、確認できていないので自信がありません。

間違いがわかれば、追って、訂正したいと思います。

注2:

カメラのモニターにしても、パソコンのモニターにしても、モニターの性能が、画像のチェックの品質を大きく左右します。しかし、この点については、マニュアルはほとんど触れていません。

  • 露出 (写真) Wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%B2%E5%87%BA_(%E5%86%99%E7%9C%9F)#%E9%9C%B2%E5%87%BA%E8%A3%9C%E6%AD%A3

https://ja.wikipedia.org/wiki/TTL%E9%9C%B2%E5%87%BA%E8%A8%88

 

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図3 一般的な表示参照ワークフロー

 

 

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