パナソニックの経営改革とバックキャスト条件

パナソニックが、組織の改編に伴って、早期退職を応募し、1000人以上が、応じたそうです。

ここで、パナソニックの経営改革をとりあげてみます。それは、パナソニックの改革の中身をうんぬんするのではなく、このような場合にも、バックキャスト条件の公式が利用できるかチェックするためです。

バックキャストは、フォーキャストとセットです。

1)フォーキャスト

 現在のトレンドの延長で計画を立てる方法です。トレンドの分析の結果を使います。この方法では、過去の実績に、左右されます。ヒューリスティックな思考法で、ファスト回路を使います。

2)バックキャスト

 先に、目標(ビジョン)を描いて、そこに到達するように、逆算して、計画を立てます。この方法は、過去の実績には、左右されません。スロー回路を使うため、脳に対する負荷(思考時間)が非常に多くかかります。

DX0.1が、DX1.0に、変化しても、今までの、DX0.1の流儀を続ける方法が、フォーキャストです。

DX1.0は、バックキャストができないと実現できないので、バックキャストが出来ているか否かを判定する方法が、バックキャスト条件のチェックです。

日本銀行が、金融緩和をするのはフォーキャストです。出口戦略を、考えて、金融緩和をどこかで切りかえますが、それには、バックキャストが必要です。つまり、金融緩和と金融の引締めは、金融政策の上では、対称ですが、脳の使い方としては、非対称になっています。

家を建てるときに、レンガを積んでいけばできるだろうと考えるアプローチが、フォーキャストです。設計図をまず、作って、図面に、合わせて、レンガを組んでいく方法が、バックキャストです。

これだけ書くと、だれも野放図にレンガを積む人はいないと思われるかもしれません。しかし、そうでない点が問題です。設計図の書き方には自由度があります。客観的とは言えません。一方、レンガを積むときには、今までの積み方を調べて、その方法を踏襲すれば、規則性があります。問題は、この規則性は、ヒューリスティックであって、科学ではないことです。しかし、選択の自由は、人を不安にさせますので、こうした規則性を好む人も多いです。

フランスの絶対王政の時代に、統治を調べて、どのような統治が行われるかという規則を帰納的に調べれば、王権神授説ができます。でもこの規則は、科学ではないし、フランス革命で壊れたように、絶対的なルールではありません。実際に、中国の古代から、学者たちは、その時の権力者が権力を持っていることを説明する学説を作ってきています。これは、人間の思考パターンが、注意しないとヒューリスティックに落ちこみやすいことを示しています。

2021/09/24の 読売新聞は次のように、伝えています。


パナソニックが9月末に実施する早期希望退職に、1000人を超える応募があったことが24日、分かった。2022年4月の持ち株会社制移行に伴う組織再編の一環で、退職者には割増退職金を加算する。


 

2021/09/21のNEWS ポストセブンは、次のように、伝えています。


パナソニックの最大の悩みは成長事業を生み出せていないことにある。(中略)

不振の理由はいくつも挙げることができるが、6月に津賀氏の後を継いだ楠見雄規社長は、「自主責任経営ができていなかったため」と指摘する。各カンパニーや各事業部、そして各社員が自主責任で経営すれば、迅速な意思決定と結果責任が生まれるというのである。


これを見ると、「各カンパニーや各事業部、そして各社員が自主責任で経営すれば」というので、バックキャスト条件が満たされていません。

 

2021/05/28のNEWS ポストセブンは、次のように伝えています。


一時は住宅関連事業も成長事業に位置付けていたが、いつの間にか外れている。このように過去の後始末に追われるばかりで成長エンジンが存在しない。それがパナソニックの現状だ。

 ただし、結論を出すのは早すぎる。津賀社長がBtoBへの転身を打ち出してからまだ10年もたっていない。ソニーGにしても2014年3月期、2015年3月期と2期連続で最終赤字を計上した時には6年後に利益1兆円企業になると考えた人は誰もいなかった。

 パナソニックに同様のことが起きないとは限らない。松下幸之助は成功の秘密を聞かれ「成功するまでやることだ」と答えている。BtoBに狙いを定めたなら、粘り強くやり続ける。それが今のパナソニックには求められている。


記事のこの部分は、執筆者の意見ですが、これも、バックキャスト条件が満たされていません。

まるで、レンガを積んでいけば、家ができるような発想です。

 

まとめますと、バックキャスト条件は、情報を抽出するフィルターとして、パナソニックの経営改革の場合にも、有効に使えると思います。

追記(2021/10/04)

日経新聞によると、組織改革後、パナソニックは、10年の長期を考えるため、分割した会社ごとの当面の目標は設定しないそうです。これは、全く、バックキャストが出来ていないことを示しています。

 

  • ソニーパナソニック レガシーの継承か破壊かで明暗分けた「社長の評価」 2021/05/28 MEWS ポストセブン

https://www.news-postseven.com/archives/20210528_1663081.html?DETAIL

https://news.yahoo.co.jp/articles/3921677205713e847c7d8d31a9875f956c3a0776

  • 劣勢のパナソニック リストラ進める新社長が「幸之助イズム」回帰を打ち出す訳 2021/09/21 NEWS ポストセブン

https://news.yahoo.co.jp/articles/4a23ab04ed10ac7bcfbd0b9e001cb415351bba30

 

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