情報の見分け方
多くの情報から、価値のある、意味のある情報を抽出するには、判定基準が必要です。
有効な判定基準があれば、無駄な情報に時間を割かれることを回避できます。
価値のある判定基準として、筆者は、今のところ、次を使っています。
1)因果モデル
2)エビデンス
3)バックキャスト条件
最低賃金についても、筆者は、最初は、価値がないと考えていました。
これは、企業が利潤を上げる(原因)に、対して、最低賃金が上がる(結果)が、生ずるのであって、最低賃金は、原因にはならないだろうと考えていたからです。
しかし、最低賃金の上昇(原因)に対して、企業の設備投資の増加(結果)や、同一労働同一賃金の実現(結果)が、生ずるのであれば、話は別で、因果モデルに合致します。
このように、できるだけ多くの因子を、原因と結果のチェーンに当てはめて考えると、賃金体系がルーツになると思われます。
年功型雇用の部分組み換えの可能性
2021/12/07のKYODOによれば、経団連は、春闘で賃上げ目標見送ったそうです。
2021/12/10の0テレNEWS24では、経団連は、「『官製』も『春闘』もない」といっています。
2021/12/13の0テレNEWS24では、「新卒一括採用見直し加速」促す方針であるといっています。
2021/12/07のJIJI.COMで、NECの森田社長は、2023年度をめどに、ジョブ型評価を拡大して、全社員に適用するといっています。
しかし、2018年度以降、役員、管理職らへと段階的に対象を広げてきたNECのジョブ型評価とは、社員が自ら設定した年間目標に基づいて達成度を評価し、処遇に反映させる仕組みだそうです。
つまり、これは、出来高払いのジョブ型雇用ではありません。
森田氏は、「社員の意識や働き方の変化を踏まえ、(社員を一括採用して人材を育成する)『メンバーシップ型』から、自分自身でキャリアを築く『ジョブ型』に移ると強調」していますが、ジョブ型評価は年功型雇用で、ジョブ型雇用ではありませんので、ずれている気がします。
ここ20年の間、NECは、中期経営計画で示した業績目標の未達を、何度も繰り返してきています。
NECの失速の原因を、事業の不振で説明する人があとを断ちませんが、事業の不振は結果であって、原因は、人にあります。つまり、人事制度や、給与制度が、かみ合っていません。
2021/12/02のDIAMOND ONLINEで、野口悠紀雄氏は、「アメリカでは賃金も成長率も高い産業が経済を牽引するが、日本の高賃金産業は参入規制に依存している場合が多い」といっています。
つまり、高賃金を得るには、 参入規制のある分野に就職して、幹部になるのが近道と考えられています。
その結果、まいどニュースのタイトルのように「課長は1032万円、部長は1362万円…日系企業302社の年収調査」といった表現になります。これは、参入規制のある分野の年功型雇用でしか意味のない数字です。しかし、ポストで、賃金が決まるというのは、年功型の発想です。GAFAでは、業績が良ければ、ボーナス(一時金)が多くでます。
さて、NECも経団連も、年功型雇用を段階的に、ジョブ型雇用に切り替えられると考えています。
しかし、上述したように、少なくとも、NECは、ジョブ型雇用とは、かけ離れています。
経団連の各社の実態までは、追跡しきれていませんが、筆者は、恐らく、NECと変わらないだろうと予測しています。
それは、年功型雇用は、チキンゲームだと考えるからです。チキンゲームでは、衝突を開始して、チキン(臆病者)になった方が負けます。年功型雇用では、ダメなことは、皆がわかっています。しかし、チキンになりたくないので、止められないのです。このため、NECのように、年功型に、ジョブ型らしい色を付けます。しかし、本質は変わっていません。
年功型雇用がチキンゲームであることは、早期退職を考えればわかります。
早期退職や解雇では、企業は、仕事のできる人を残して、できない人を解雇したい訳ですが、早期退職を行うと、他でも稼げる人から、やめていきます。
当たり前ですが、ジョブ型雇用では、こうした不合理は発生しません。
2018/09/18の東洋経済で、佐藤 信氏は、一番仕事のできるエリートはGAFAに就職しているといっています。 GAFAでは、業績が上がれば、その人は、億単位のボーナスがもらえますので、年功型や、ジョブ型もどきは、馬鹿らしくて、相手にしません。
2021/12/09の読売新聞に、「パナソニック、テレビ生産を中国の電機大手に委託…自社生産は高性能機種に限定」と出ていました。
これでは、20年前と少しも変わりません。安価で、品質の良くないテレビをパナソニック・ブランドで出せば、ブランド価値が棄損します。
また、Fire TV Stick などの映像出力機器が出てきていますので、テレビには、各段の価値はありません。テレビの受信機は不要です。
結局、パナソニックは、20年間、変われなかったことになります。
まとめますと、日本経済が変われない原因は、年功型雇用のチキンゲームに、原因があるので、年功型雇用の部分組み換えはできないと思われます。
- 経団連「新卒一括採用見直し加速」促す方針 2021/12/13 0テレNEWS24
https://news.yahoo.co.jp/articles/97aa1c49f4f5700a3c60553a93773bc7234ad54f
https://news.yahoo.co.jp/articles/330372883dd9d532e4bb3ccdf0407d56bd159761
- パナソニック、テレビ生産を中国の電機大手に委託…自社生産は高性能機種に限定 2021/12/09 読売新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/bbcfa46570e887dcdce7a24e52c41504e566afef
- NEC、全社員にジョブ型評価 23年度めど拡大 森田社長 2021/12/07 JIJI.COM
https://news.yahoo.co.jp/articles/743c3412119e72b494e7bbf8044af116d861a5f8
https://news.yahoo.co.jp/articles/51c440adb6717e510751080f01a65b3210f6bda0
- 銀行や電力「低成長・独占」産業ばかり高賃金な日本の“貧困” 2021/12/02 DIAMOND ONLINE 野口悠紀雄
https://diamond.jp/articles/-/289167
- 課長は1032万円、部長は1362万円…日系企業302社の年収調査 データアナリティクス職種に大きな伸び 2021/11/27 まいどなニュース