内容は、7割が、カーネマンのファスト・アンド・スローです。
解説は、おおかまに言えば、
1)システム1(ファストシステム)感情による判断
2)システム2(スローシステム)理性による判断
という構成で、システム1には、バイアスがあるので、システム2に切り替える必要があるというものでした。
つまり、講師の方は、正しいシステム(システム1)と正しくないないシステム(システム2)があるので、システム2を使うべきであるという解釈でした。
講演のあとオンラインで、「正しいシステムにする方法はあるか」のという質問が出ていました。
これに対する講師の回答は、「方法はない。カーネマンも方法はないと言っている」でした。
これは、筆者のカーネマン解釈とは、異なります。
筆者の理解では、以下です。
1)システム1(ファストシステム)ヒューリスティックによる判断
2)システム2(スローシステム)因果モデルによる判断
線分の両端に矢印をつけると、長さが違って見えることは、認知バイアスです。
しかし、ファストシステムとスローシステムは、同じ認知バイアスでもレベルが違います。
最近の脳科学では、システム3とシステム4もあることがわかっています。
以前にも指摘したように、次の対応があります。
ファストシステム<=>フォーキャスト
スローシステム<=>バックキャスト
意思決定をするときに、正しい判断ができるだけの十分なデータが得られることは稀です。
このため、進化の生存戦略では、不十分なデータで、早く意思決定できる遺伝子が組み込まれています。その一つがファストシステム(ヒューリスティック)です。
ファストシステムでは、正しい選択より、速い判断に価値がおかれています。これは、生存には有効な戦略です。
しかし、現在では、自然科学や統計学の因果律が使えます。また、データサイエンスの進歩によって、意思決定に使えるデータが入手できるようになりました。
つまり、ヒューリスティックをスローシステムに切り替えるハードルが低くなりました。
このハードルは、スローシステムをアルゴリズムとして使うことで、更に、低くなっています。
DXの恐ろしいところは、スローシステムは、作るまでは大変ですが、一旦、DXに組み込めば、ファストシステムより、低いコストで、ただしい結果が出せることです。(注1)
つまり、DXを導入すると、ファストシステムを止めて、スローシステムに切り替えることになります。
DXが入れば、ヒューリスティックな仕事をしていた人は、失業します。必要は人材は、スローシステムをDXに組み込む開発部隊と、システムのメンテナンス部隊だけです。
2021/11/28のミモレは、「日本では現状維持を強く望む社員が多く、例えば新業態を開発する際にIT化が必須という状況になっても、ITスキルの獲得を嫌がる社員がたくさんいます。諸外国と比較して新しい業態へのシフトは簡単ではありません」といっています。
「現状維持を強く望む社員」とは、ヒューリスティックで仕事をしている人です。システム1(ファストシステム)と、システム2(スローシステム)は、脳の別の部分にありますから、システム2のトレーニングをしていない場合には、システム1から、抜け出せなくなります。
おそらく、これが、現状と思われます。
注1:
DXで、アルゴリズムによる自動実行が可能になる訳は、それが、データ(エビデンス)に基づく、判断だからです。これから、ある判断が、システム1か、システム2か、どちらかを反転するには、エビデンスの有無を調べればよいことがわかります。
- 日本だけ、物価が上がっても給料は上がらない残念な理由2021/11/28 ミモレ
https://news.yahoo.co.jp/articles/e8bfdca80f108633ac60d42bcc4370ab4560d874?page=1