「新しい資本主義会議」とグループリーダーシップ

「新しい資本主義会議」のメンバーが決まったという記事が出ていましたので、グループリーダーシップについて、整理して、おきます。

ウィキペディアは、百科事典の内容調べに、使えることはもちろんですが、各国語版を比較することで、国や地域ごとのレベルの差を確認することができます。

Leadershipについては、英語版と日本語版の差は大きく、この分野で、日本が遅れていることがわかります。日本語版は、引用に値しないので、省略しました。

リーダーシップは、日本では、従来は、リーダーが、一方的に、命令するように思われていましたが、欧米流のグループリーダーシップの存在を、日本に紹介した本があります。

2012/11/09 に、伊賀泰代氏が、出版した「採用基準」です。この本によって、リーダーシップとは、誰もが、仮に自分がリーダーであったらどうするかという視点でものを考え、意見を交換することであって、新入社員の採用においても、リーダーシップが求められることが提示されました。だから、「採用基準」になるわけです。英語版のwikiによれば、これは、グループリーダーシップあるいは、リーダーシップチームと呼ばれるもので、ルーツは古いですが、1990年頃から、研究が盛んになっています。

2021/10/14の東洋経済に、「アマゾンは、パワポ禁止」という記事がでていますが、内容は、グループリーダーシップのことです。アマゾンは、2004年から、各自がリーダーシップに基づいた提案書を、パワーポイントではなく、6ページの文章で、書いて提出することを求めています。この提案書は、まず、提案が成立した場合の出口を書いたあとで、手順を書きます。つまり、バックキャスト条件が設定されています。

2004年ですから、これは、伊賀泰代氏の「採用基準」が出る8年も、前のことです。

同じような、グループリーダーシップは、Googleや、アイリスオーヤマでも採用されています。アイリスオーヤマでは、グループリーダーシップを使うことで、アイデアが出てから、製品化する(実装する)までの時間を3か月に短縮しています。

 

「新しい資本主義会議」は、審議会形式で、グループリーダーシップではありません。審議会は、形式的には、委員が答申を書いた形式になっていますが、実際の草稿は、数人(通常2、3人)の官僚がつくります。官僚は、過去の事例に縛られたフォーキャストは得意ですが、バックキャストは不得意です。その結果、新しいアイデアが盛り込まれることは、まず、ありません。過去の成功事例を検索するという思考ルートをたどります。

これは、「新しい資本主義会議」に問題があるというのではなく、審議会形式の限界です。

審議会を作ったあとで、大臣の答弁は、審議会で、よく検討していただいて、その答申を尊重すると返答します。

答申は、予定調和で、新しいアイデアはありませんし、答申が出るまでに、早くとも、3から6か月かかります。これは、アイリスオーヤマであれば、実装が終わって、製品が販売されているタイミングです。スピード感はありません。

グループリーダーシップを採用する立場からすれば、審議会を作るから問題解決できないのだという理解になります。

岸田首相は、ヒアリングをした手帳をかざして、自分は人の話をよく聞くと言いますが、現在のリーダーシップ論では、人の話をよく聞くというのは、グループリーダーシップの方法論を採用していることを指します。

リーダーシップ論からみれば、現在の日本の政府は、1990年頃の米国のレベルです。

米国も、政策提案は、シンクタンクや、官僚のトップが関与しますが、俗に回転ドアと言われるように、官僚のトップは、大統領が変わると総入れ替えになりますので、バックキャストできるだけの柔軟性を保持している点に、強味があります。

 

参考までに、wikiの英語版のグループリーダーシップの条件を、載せておきます。

 


National School Boards Association(USA)によると:

これらのグループリーダーシップまたはリーダーシップチームには、特定の特徴があります。

チームの特徴

  • すべてのメンバーの側に団結の意識がなければなりません。

  • 対人関係がよくなければなりません。メンバーは、貢献し、他の人から学び、他の人と協力します。

  • メンバーには、共通の目標に向かって一緒に行動する能力が必要です。

うまく機能しているチームの10の特徴:

  • 目的:メンバーは、チームに属することを誇りに思い、その使命と目標の達成に邁進しています。

  • 優先事項:メンバーは、次に、いつチームの目標を誰が、どうして達成すべきかを知っています。

  • 役割:メンバーは、タスクを実行する際の役割と、より熟練したメンバーが特定のタスクを実行できるようにタイミングを合わせます。

  • 決定:権限と意思決定ラインが明確に理解されています。

  • 対立:対立は公平に取り扱われ、意思決定と個人の成長にとって重要と考えられています。

  • 個人的な特徴:メンバーは、独自の個性が高く評価され、十分に活用されていると感じます。

  • 規範:一緒に働くためのグループの規範は、グループ内のすべての人の基準として設定され、理解されています。

  • 有効性:メンバーは、チーム会議が効率的かつ生産的であると感じて、楽しみにしています。

  • 成功:メンバーは、チームが成功を収めた時期を明確に把握し、これを平等に共有します。

  • レーニング:フィードバックとスキルの更新の機会が提供され、チームメンバーによって活用されます。


 

  • 採用基準 2012/11/09 伊賀泰代

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  • Shared leadership wiki

https://en.wikipedia.org/wiki/Shared_leadership

https://en.wikipedia.org/wiki/Leadership

  • National School Boards Association wiki

https://en.wikipedia.org/wiki/National_School_Boards_Association

https://news.yahoo.co.jp/articles/bfee2fd46f22e93ca90efa58e2b156d8ad39f727?page=1

  • 政府の新しい資本主義会議メンバー公表、AIの松尾東大教授ら15人 2021/10/15 REUTER

https://jp.reuters.com/article/japan-growth-panel-idJPKBN2H506R

 

 

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