極上の焼き芋の焼き方(71)

焼き芋羊羹と焼き芋の話(3)

アルミホイル加熱の事例研究

今回は、実際に、アルミホイルとトロ箱を使った焼き芋羊羹の実例を示します。

実は、現時点では、細部の条件設定による違いは不明です。しかし、(69)に書いたように、サツマイモをアルミホイルで包むと、細部の温度設定の違いは、殆どきかなくなりますので、アバウトでよいと思っています。

  • サツマイモをアルミホイルで包んで、170度であれば、合計120分加熱します。

  • 加熱の途中または、加熱の後で、トロ箱で保温すると、糖化が更に進んで、糖蜜が出るようになります。

  • アルホイルで包んで焼くと水分が飛びにくいので、より、水分の少ない焼き芋がお好みの場合には、最後にアルミホイルを開けて、追加加熱して、水分を飛ばします。ただし、このときに、アルミホイルについた糖蜜は焦げてしまいます。

実例を示します。

表1が、オーブン付き電子レンジのオーブンの加熱条件です。

タイプ1は、120分連続加熱です。保温は加熱後に行います。

タイプ2は、加熱を60分x2に分割しています。保温は加熱後と加熱の間に行います。

この例では、保温時間がやたらと長いですが、これは、面倒なので、放っておいたためです。大きく、効果があるのは60分くらいまでだろうと推測しています。

最後に、焦げないように、140度で30分加熱して、水分を飛ばしました。なお、この後で、170度で試して見ましたがサツマイモは焦げなかったので、現在は、乾燥温度は、170度でよいと思っています。

タイプ1とタイプ2ともに、約350gのサツマイモを使いました。重量変化はどちらもほぼ同じでした。すなわち、次です。

生芋  350g

焼き芋 300g

乾燥後 280g

写真1が、出来上がった焼き芋です。上のタイプ2の方が糖蜜が多いように見えます。糖蜜は、下にたまるので、写真1は、アルミホイルを開けて、サツマイモの上下を入れ替え、下になっていた方を写真に写しています。なお、サツマイモをアルミホイルで包むと糖蜜が出るので、加熱の途中で、一度、上下を入れ替えた方がよいと思いました。

写真2は、焼き芋の断面です。タイプ1とタイプ2に、差はありません。実際に、食べてみて、区別はつきませんでした。

なお、その後で、170度120分で、トロ箱で保温しない場合も、試して見ましたが、糖蜜が少ないように感じました。ただし、サツマイモの個体差があるので、正確には、わかりません。トロ箱で保温しても、特に、電気代はかかりませんので、時間がない場合には、トロ箱保温を省略する方法もありますが、時間があれば、トロ箱保温を薦めます。

写真3は、焼き芋のアルミホイルを開いて、170度で30分追加加熱して、水分を飛ばした状態です。糖蜜が、サツマイモの皮につくので、サツマイモの皮の部分が一番甘くなります。この部分は、乾燥させすぎると飴になってしまうので、食感を保つにはその前で、乾燥を中止すべきです。写真3のように、アルミホイルについた糖蜜は焦げてしまいますので、スプーンなどで、乾燥させずに、アルミホイルについた糖蜜をとって、サツマイモに載せて食べる方法もあります。

今回の方法で、焼き芋の甘さについては、ほぼ、目的を達成したと判断しています。保温時間と保温方法は、アバウトですが、少し変えても、大きな差はないと考えています。

 

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表1 加熱条件

 

 

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写真1 焼きあがった焼き芋(上:タイプ2、下:タイプ1)

 

 

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写真2 焼きあがった焼き芋の断面(左:タイプ2、右:タイプ1)

 

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写真3 アルミホイルを開いて、170度で30分追加加熱した焼き芋の例

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梅を撮る(1)

被写対象の選択

梅の花が咲いてきたので、すこし、撮影法を整理してみます。というのは、花の撮影は、山の風景などと異なり、ある意味では、何でもありなので、今まで、筆者は、深入りしてこなかったからです。

撮影する場合に、画角やレンズの明るさが影響しますが、とりあえず、写真1くらいの数の花をいれるとして、試した結果、換算120㎜くらいであれば、APS-Cで、F値にこだわらずにボケた写真が撮れることがわかりました。換算120㎜が良いというのは、50㎜では問題があるという意味ではありません。50㎜だと、梅の木の下の方にある花しか大きく写せませんが、120㎜あると、ある程度は手の届かないところにある花も撮影できます。シャッターチャンスが増える点で、120㎜がお薦めと考えます。(注1)また、コントラスト方式の自動焦点カメラでは、被写体が、梅の花のように白い場合には、焦点が合いにくくなります。特に、望遠では、その傾向が強まりますので、マニュアルフォーカスに切り替えるなどの注意が必要です。

問題は、花の選び方です。以下では、ライティングも含めて論じますが、これは、ライティングが必須というわけではなく、自然光で撮影する場合でも、光の実態を把握しておく必要があるという意味です。

問題点を写真1で説明します。一番の問題は、花の選抜の仕方と思います。フレームの中に、花弁が落ちてしまって、ガクだけになった花が入っているのは論外です。写真1を見ると、花の中央のめしべのあたりが赤い花と、茶色い花があります。明らかに、茶色い花は古い花で、赤い花は新しい花です。写真1をみれば、わかりますように、赤い花の方が、花弁が白いです。従って、綺麗な梅の花の写真を撮るには、花の選抜が重要です。大まかには、1本の木全体が満開近くなると、良い花は少なくなります。

第2に、花の付き方の問題があります。写真1では、後ろ向きの花はなく、横向きの花が2つあります。できれば、後ろ向きの花は入れたくありません。梅の花は、枝に対して向きが固定されていて、花の向きは、変更できないので、良いものを選ぶしか方法はありません。

第3に、ライティングの問題も重要です。写真1では、花弁に影ができています。逆光は避けるにしても、順光にするか、斜めにするか、影はどの程度まで許容するかを考える必要があります。側光で、良い光線が得られると、半分透き通ったような花弁の色が得られますが、良い花で、この光線を得るのは非常に困難です。

第4に、背景、特に、背景の色は重要です。晴れの日は光線が強すぎて減光フィルターを付けないと、絞りが開放側では、撮影できないことがあります。曇りの日にはその問題はありませんが、曇り空は、背景色としては、さえません。青空、または、木の緑が背景にあると、梅の白色が映えます。

 

注1:

120㎜を大きく超えても、もちろん、撮影できます。ただし、望遠が大きくなると、画質が悪くなるリスクが増えます、また、梅の木の上の方の花になれば、なるほど、カメラの位置を変えても、光線の修正が難しくなります。いずれにしても、梅の花の撮影は、一見自由度が高いように見えますが、実際には、非常に制約が多いです。例えば、サクラは一斉に咲くので、撮影時期が限定されます。梅の花はバラバラに咲いて、花もサクラよりは長くついています。だからと言って、綺麗な被写体の花を探すことが、サクラより簡単とは言えないのです。

 

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写真1 梅の花 34㎜(換算56㎜)F5.6

 

 

 

ドラえもんの認知バイアス補正メガネ

認知バイアス

認知科学が進歩して、様々な認知バイアスが広く知られるようになりました。図1の上のメガネなしの図は、心理学の教科書によく出てくる認知バイアスの例です。同じ線の長さが異なって見える例です。認知科学が進歩して、認知バイアスは、できれば、放置しないで、補正すべきであるという認識がひろまってきています。つまり、図1の上の図を見て、わかりましたで済ませるのはよくない、できれば、補正すべきであるという考えです。図1の下の図は、この考えに基づいて、2つの線が同じ長さに見えるように、線の長さを補正したものです。この図のように、認知バイアスを補正できれば、人間は世界(目で見えるものなど)をより正確に把握できるはずです。現在は、VRが発達していますから、メガネをかけると図1の上の図が、下の図に自動変換することは、技術的には可能です。そこで、ここでは、そのような認知バイアスを補正するVRメガネを考えます。

 

 

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図1 認知バイアスとその補正

認知バイアス補正メガネ

認知バイアス補正メガネが発明されたとして、それを通じて、見える世界を考えれば、今あるバイアスが理解できます。こうした発明は、ドラえもんの得意技なので、ここでは、ドラえもんが、認知バイアスメガネを発明して、のび太君に渡したと仮定して、のび太君になったつもりで、世界を見ます。

  • スーパーマーケット

認知バイアス補正メガネをかけて、のび太君は、チョコレートを買いにスーパーマーケットに行きます。お菓子の棚には、いろいろなチョコレートが並んでいます。この278円のホワイトチョコが美味しそうだなとのび太君は思います。そこで、メガネのスイッチをONにします。278円の表示は、バイアスを除いた300円表示に切り替わります。ホワイトチョコレートは、半分透明になって、存在感がうすくなりました。となりのブラックチョコはしっかり見えています。のび太君があれっと思って成分表示ラベルとみると、その訳が分かりました。ラベルのとてもきれいなホワイトチョコは、砂糖がたくさん入っている代わりに、カカオがほとんど入っていないのです。写真は、実際の中身とは違うのです。のび太君は、流石、認知バイアス補正メガネだと感心します。

  • 静香ちゃんのお友達

スーパーの帰りに、道で、静香ちゃんがお友達を連れて歩いているのに出会います。静香ちゃんの連れているお友達は、ものすごい美人です。静香ちゃんの3倍くらい魅力的に見えます。そこで、のび太君はメガネのスイッチをONにします。認知バイアス補正メガネはお化粧による認知バイアスを補正して、すっぴんの顔を見せてくれます。すっぴんでくらべると、静香ちゃんは、お友達よりはるかに美人です。のび太君はほっとします。

まとめ

こうした事例を作ってみると、よく、認識していない認知バイアスがあることに気づかされます。ストーリーを作ることは頭の訓練になります。

 

 

 

食楽懐石 風土庵(Food-An)~つくば市とその周辺の風景写真案内(323)

食楽懐石 風土庵(Food-An)

食楽懐石 風土庵(旧店名 ブラッスリー・ラ・リラ風土庵)は、古民家レストランです。ただし、古民家は前面に出ている訳ではなく、あくまで、地元の旬の食材で料理をだすというコンセプトのようです。旧店名からすると、もともと、フレンチだったようですが、現在は、フレンチも時に混在する和食(懐石)のようです。料理は予約のみで、昼食は12時から、夕食は17時から、テーブルと椅子の数だけ1回転で料理を2時間くらいかけて出すコンセプトです。

2013年には、茶室を作ってます。食事客は申し込めば利用できるようです。他に、料理教室や、おせちのテイクアウトもしています。

写真1は、古民家です。瓦屋根で、ガラス戸になっているので、あまり、古い感じはしません。

写真2は、天井を見上げた写真です。大きな木の梁がみえます。

写真3は、薪ストーブです。テーブルと椅子のおいてあるところは、木の床になっていますが、この部分は、元の民家の時には、土間だったと思われます。

 

 

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写真1 風土庵

 

 

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写真2 風土庵

 

 

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写真3 風土庵

 

小町の館の水車(土浦市)~つくば市とその周辺の風景写真案内(322)

小町の館の水車(土浦市

土浦市にある小町の館は、小野小町のお墓があるということにちなんで作られた施設で、農産物直売所、展示場、売店、体験作業施設と水車小屋があります。

写真1が、体験作業施設です。写真1に、「小町の里」と書かれているので、施設全体の名称は、小町の里だと思っていたのですが、HPを見ると「小町の館」が正式名称のようです。

写真2の、左が展示場と売店、右が農産物直売所です。

写真3が、水車小屋で、水車の直径は7mです。

水車が全体の施設の中にバランスよく溶け込んでいます。

水車シリーズは今回でいったん、終了です。

全体を通してみると、水車だけが大きい施設は、バランスを欠いていると思いました。

  • 小町の館 土浦農業公社

http://tsuchiura-n.or.jp/index.html

https://www.city.tsuchiura.lg.jp/page/page001997.html 

パンフレットあり

 

 

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写真1 小町の館

 

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写真2 小町の館

 

 

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写真3 小町の館の水車

 

象徴天皇・象徴大臣・象徴社長

今回は、象徴ポストの問題を考えてみます。「象徴」に似た言葉に「名誉」がありますが、名誉がつくポストでは、非常勤で、給与(天皇の場合には、給金)がでませんが、象徴の場合には、常勤で給与が出る点が大きな違いです。

大臣・社長などのトップが、経営の最終決定を行う方法が、ピラミッド型組織の基本です。経営の意思決定に必要なデータと経営分析には、広範な専門知識と膨大なデータの分析が必要なので、一人ではできません。そこで、問題になるのが、分業体制を行う組織の組み立て方になります。

象徴将軍と日本の分業体制

筆者は、日本の分業体制は、江戸時代の幕藩体制を引きずっていると考えています。徳川家康は、組織マネジメントの歴史では、まれにみる天才です。日本の歴史では、何回か、政権交代がありますが、江戸幕府は、260年続いたので、これは、最長です。江戸幕府の組織マネジメントは、男子の血統主義です。その要点は次になります。

  • 将軍は血統で決まります。このことは逆にいえば、将軍争いに基づくクーデタを排除できますが、あまり優秀でない将軍が、後をつぐ可能性を秘めています。これを防止するために、次のようなフレームを導入します。

  • 実際の幕府運営は家老が行います。将軍の権力のもとは、家老の人事権です。

  • どの政権にも共通しますが。いったん、権力を握ると、政権転覆を防止するために、社会システムの固定化をはかります。これには、実質的な固定化と、理念による固定化の2種類がありますが、実質的な固定は社会システムそのものが自発的に達成するものなので、政権が直接関与できません。そこで、理念による固定化を前面にだし、時々、理念に反する組織を軍事力でつぶして、見せしめにします。現代の香港の民主化問題はこの典型例です。江戸時代には、士農工商や、一国一城令を出したり、大名の国替えやおとりつぶしをしたりします。鎖国もその類です。これらの施策は、理念をだして、その一部を武力行使して反対派をつぶすことが目的ですから、調べれば、反例の実態は沢山あるはずです。

  • 言論統制をして、反対派の意見を握りつぶしたり、左遷します。

  • 分割統治(Divide and rule)をおこない、大名が協力できないように仕向けます。(注1)

以上のようにして、江戸幕府は、260年間つづきます。

こうして、時代劇にでも出てくるような殿様のイメージ(象徴将軍)が出来上がります。たとえば、家老が殿様に、「〇〇については、どういたしましょうか」とお伺いをたてて、殿様が「よきにはからえ」と答えるようなイメージです。

当たり前ですが、象徴将軍が、存続できるためには、社会システムの固定化が必須です。一方、その反作用として、技術進歩が止まってしまいます。

戦国時代であれば、このタイプの殿様を持つ国は、直ぐにつぶれてしまいます。つまり、徳川家康は、それまでの戦勝経験をもとに、帰納的に、この統治ルールを作ったのではありません。このルールは、演繹的に作られています。技術進歩を武器について見れば、「戦国時代の1543年に火縄銃が伝播してから、世界有数の鉄砲生産国になるまで、50年はかかっていない」ことと、「鎖国を開国したときの遅れていた武器の技術レベル」をみれば、社会システムの固定化が如何に、技術進歩を止めるかがわかります。その理由は、社会システムが固定化されると、技術進歩の経済的価値がなくなり、技術開発経費の投入ができなくなるからです。(注2)

天皇・大臣・社長

戦後になって、天皇が、象徴天皇になりますが、よく知られているように、戦前でも、天皇が政策決定に関与した事例は限定的で、象徴天皇に近い活動をしていました。明治天皇は、政策決定に多く関与したと言われていますが、大正天皇以降は、関与が減って、現在の象徴天皇に近くなっています。

現在、政権交代をした時に、大臣ポストは、専門性に関係なく割り振られます。つまり、大臣に期待されていることは、江戸時代の殿様に期待されていることと同じで、家老が「政策について、殿様に意見を求め」、殿様が「承認または否認の返事をする」だけです。この関係は、総理大臣と大臣の関係でもみられ、マスコミでは、「厚生労働大臣がコロナ対策の状況と対策を総理大臣に説明し、総理大臣が了解した」というニュースが流れてきます。つまり、大臣の役割は、象徴将軍とかわらない象徴大臣としてふるまうことです。この仮説は、なぜ、2世、3世議員が多いかを説明できます。

同じように2代目、3代目社長がは、象徴社長になるリスクを秘めています。問題の根は、更に深くて、2代目、3代目ではないサラリーマン社長でも、象徴社長である可能性が高い点にあります。最近、上場企業の社長の平均年齢が60歳を超えたというニュースがありました。これは、技術開発の速度が加速している状況に反しています。新聞の年賀の特集に、各社が社長の名前、年齢、顔写真を載せて、挨拶をしているページがありましたが、本当に、年寄りだらけで、技術に詳しい感じの人はみえませんでしたので、象徴社長が多いと感じました。これは、年功序列的な人事に原因があります。社長になるのに、人事のポストに階段を上る必要があるというシステムは、社会システムの固定化には寄与しますが、社会経済情勢が変化する現在では、経営上のメリットはありません。

 

注1:

省庁縦割りの根源は、分割統治にあります。つまり、政権側の要請であります。分割統治がなくなると、〇〇省と〇〇省が結託して、政権の追い落としをかけることができます。つまり、省庁は政権の言いなりにならなくなります。これを防止するためには、政権は省庁を分割して(縦割りにして)巨大な省庁を作らないようにします。大蔵省の解体はその例です。つまり、政権にとっては、省庁が縦割りであるメリットが大きいです。

注2:

現在も、社会システムの固定化が、技術進歩を止めていると思います。たとえば、かっての東芝のように、ICメモリーなど部門の黒字を赤字分門に再配分して、企業を存続させれば、技術開発投資額が減ってしまい、技術開発競争に取り残されます。これは、東芝の経営方針というより、会社が倒産寸前まで行かないと、レイオフできない(裁判に負ける)という社会システムの固定化に原因があります。

 

ベースカーブとダイナミックレンジの関係

今回は、darktableのベースカーブのプリセットとダイナミックレンジの関係を考えます。

写真1は、darktableのベースカーブのプリセットです。基本的には、「メーカー名+like」という名前のプリセットカーブが準備されています。唯一の例外が、Pentax K-5です。このベースカーブだけが、likeがついていません。

次に、実際のプリセットカーブを見ます。

写真2は、利用者が多いと思われるcanon eos風のベースカーブです。これは、目の光の強さに対する反応を考えて、上に凸で、ルミナンスの大きな右よりのデータに重みを付けたカーブになっています。

写真3は、pentax風のベースカーブです。これも、目の光の強さに対する反応を考えて、上に凸で、ルミナンスの大きな右よりのデータに重みを付けたカーブになっていますが、canon eos風のベースカーブに比べると、カーブの曲がりが小さく、ルミナンスの大きな右よりのデータの重みは小さくなっています。

写真4は、pentax K5のベースカーブです。これのカーブは、写真3のカーブよりも、更に、曲がりが小さくなっています。

どうして、ベースカーブの差が問題かというと、センサーのダイナミックレンジは、通常はカメラ内で現像されたJpegファイルで比較されるからです。この時に、ベースカーブが直線に近いほど、センサーのダイナミックレンジが、Jpegに反映されやすくなります。darktableのHPをみると、最近のフルサイズのデジカメ、(特に、ソニー)のセンサーのダイナミックレンジは14EVあり、ベースカーブでは、そのダイナミックレンジがうまくJpegに変化されずに、中間トーンが失われるため、フィルミックRGBを開発したことが書かれています。つまり、最新のフルサイズセンサーのダイナミックレンジが、過去最大で、14EVと書かれています。ところで、WEBを見ていたら、K5のダイナミックレンジは14EVという記事がありました。K5は10年も前の機種で、APS-Cセンサーですから、14EVあることは考えられませんが、ひと昔前の機種の中では、ダイナミックレンジが広かった可能性があります。

写真5は、シーン参照ワークフローで読み込んだK5で撮影した画像です。フィルミックRGBのパラメータはデフォルトのままです。写真5は、明らかに露光が不足しています。注意すべき点は、この状態では、露光は右端まで来ていることです。つまり、露光をあげると白飛びしてしまいます。(注1)

写真6と写真7は、フィルミックRGBのパラメータを調整して、変換カーブを直線に近づけたものです。こうすると、ヒストグラムの右側に空きができますので、露光を上げても白飛びしなくなります。

つまり、以上から推測されることは、K5は例外的に直線に近いベースカーブを使うことで、Jpegのダイナミックレンジを確保した機種と思われます。カメラ内現像では、機種別のベースカーブが使えますので問題はありませんが、darktableで現像する場合には、メーカー別のベースカーブになるため、Pentaxの他の機種と大きくことなるベースカーブを採用しているK5では、不都合が生じ、単独のプリセットベースカーブが準備されたと思われます。ちなみに、Pentaxの利用者は、伝統的に、風景写真の愛好家が多いため、屋外での風景写真撮影に、特化してカメラをチューニングしたと思われます。筆者が、このカメラを使わなくなったのは、室内や動いているものでは焦点が合わないためです。今回、久しぶりに取り出してみましたが、ISO、絞り、露光を変更する部分の操作性は、大変良かったです。風景写真の愛好家の中には、筆者と異なり、焦点は無限遠でよいという人もいますので、その場合には、自動焦点の性能は問題になりません。

さて、写真1をもう一度見ると、Pentax以外で、メーカーごとのプリセットベースカーブが2種類あるメーカーが3つあります。キャノン、ニコンオリンパスです。この3つのメーカーの共通点は、各社がOEMではなく、独自のRAW現像ソフトを提供していることです。つまり、各社のRAW現像ソフトは機種名を読み取って、機種ごとに異なったベースカーブを採用しているものと思われます。一方、darktableでは、メーカーごとに、ベースカーブを分けているだけなので、メーカー内の機種ごとのべースカーブの違いに十分に対応できていないため、代替案(alternative)が提供されている訳です。(注2)

以上の情報は、シーン参照ワークフローでは、現像に、直接的な影響を与えるものではありませんが、フィルミックRGBのプリセットパラメータをどの程度調整すべきかという問題に対してはヒントになります。

 

注1:

この問題の原因は、フィルミックRGBのプリセットは、カメラメーカーや機種に関係なく共通になっているためです。フィルミックRGBには、ベースカーブを再現するつもりはないという姿勢です。結果的に、K5のように、ベースカーブが標準から大きく外れている場合には、露光も大きく外れます。

注2:

lightroomなどのRAW現像ソフトが、カメラの機種ごとのベースカーブの違いをどの程度、反映しているかは不明ですが、Canonのように、プリンタのセッティングをLightroomに合わせて最適化している場合には、機種ごとのベースカーブのデータを、アドビ社に提供している可能性が高いです。

 

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写真1 ベーズカーブのプリセット

 

 

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写真2 canon eos likeのベーズカーブのプリセット

 

 

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写真3 pentax likeのベーズカーブのプリセット

 

 

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写真4 Pentax K5のベーズカーブのプリセット

 

 

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写真5 K-5の画像

 

 

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写真6 フィルミックRGのシーンタブのパラメータ

 

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写真7 フィルミックRGのルックタブのパラメータ