梅を撮る(1)

被写対象の選択

梅の花が咲いてきたので、すこし、撮影法を整理してみます。というのは、花の撮影は、山の風景などと異なり、ある意味では、何でもありなので、今まで、筆者は、深入りしてこなかったからです。

撮影する場合に、画角やレンズの明るさが影響しますが、とりあえず、写真1くらいの数の花をいれるとして、試した結果、換算120㎜くらいであれば、APS-Cで、F値にこだわらずにボケた写真が撮れることがわかりました。換算120㎜が良いというのは、50㎜では問題があるという意味ではありません。50㎜だと、梅の木の下の方にある花しか大きく写せませんが、120㎜あると、ある程度は手の届かないところにある花も撮影できます。シャッターチャンスが増える点で、120㎜がお薦めと考えます。(注1)また、コントラスト方式の自動焦点カメラでは、被写体が、梅の花のように白い場合には、焦点が合いにくくなります。特に、望遠では、その傾向が強まりますので、マニュアルフォーカスに切り替えるなどの注意が必要です。

問題は、花の選び方です。以下では、ライティングも含めて論じますが、これは、ライティングが必須というわけではなく、自然光で撮影する場合でも、光の実態を把握しておく必要があるという意味です。

問題点を写真1で説明します。一番の問題は、花の選抜の仕方と思います。フレームの中に、花弁が落ちてしまって、ガクだけになった花が入っているのは論外です。写真1を見ると、花の中央のめしべのあたりが赤い花と、茶色い花があります。明らかに、茶色い花は古い花で、赤い花は新しい花です。写真1をみれば、わかりますように、赤い花の方が、花弁が白いです。従って、綺麗な梅の花の写真を撮るには、花の選抜が重要です。大まかには、1本の木全体が満開近くなると、良い花は少なくなります。

第2に、花の付き方の問題があります。写真1では、後ろ向きの花はなく、横向きの花が2つあります。できれば、後ろ向きの花は入れたくありません。梅の花は、枝に対して向きが固定されていて、花の向きは、変更できないので、良いものを選ぶしか方法はありません。

第3に、ライティングの問題も重要です。写真1では、花弁に影ができています。逆光は避けるにしても、順光にするか、斜めにするか、影はどの程度まで許容するかを考える必要があります。側光で、良い光線が得られると、半分透き通ったような花弁の色が得られますが、良い花で、この光線を得るのは非常に困難です。

第4に、背景、特に、背景の色は重要です。晴れの日は光線が強すぎて減光フィルターを付けないと、絞りが開放側では、撮影できないことがあります。曇りの日にはその問題はありませんが、曇り空は、背景色としては、さえません。青空、または、木の緑が背景にあると、梅の白色が映えます。

 

注1:

120㎜を大きく超えても、もちろん、撮影できます。ただし、望遠が大きくなると、画質が悪くなるリスクが増えます、また、梅の木の上の方の花になれば、なるほど、カメラの位置を変えても、光線の修正が難しくなります。いずれにしても、梅の花の撮影は、一見自由度が高いように見えますが、実際には、非常に制約が多いです。例えば、サクラは一斉に咲くので、撮影時期が限定されます。梅の花はバラバラに咲いて、花もサクラよりは長くついています。だからと言って、綺麗な被写体の花を探すことが、サクラより簡単とは言えないのです。

 

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写真1 梅の花 34㎜(換算56㎜)F5.6