「テクノリバタリアン」を読む(2)数学の問題

「テクノリバタリアン」(pp.65-66)には、「世界資産ランキングで、個人資産10兆円を超える大富豪に共通するのは、極めて高い論理・数学知能を活かしたハイテク系ベンチャーを創業し、大きな成功をおさめたことである」と書かれています。

 

数学では、経営に必要なデータは、多次元空間の点で表わされ、そのデータから、必要な情報を縮約することが経営判断になります。目的関数を最大化する解決策の探索が必要になります。

 

以下では、この方法を数学的経営と呼ぶことにします。

 

このモデルの定式化は50年以上前からなされていましたが、実際に解決が可能になったのは、データサイエンスが成立した今世紀に入ってからです。

 

ハイテク系ベンチャーでは、数学的経営を経営に活用するだけでなく、数学的経営をするツールを開発して販売しています。

 

2003年に、ティ―ル氏は、情報分析企業パランティアを設立しています。これは、数学的経営ツールの1つです。

仮に、A国が、パランティアのような企業が提供するツールを使い、B国が、パランティアのような企業が提供するツールを使わないとします。2国が、同額の軍事予算を使った場合を考えます。パランティアのような企業が提供するツールを使ったA国の方が、ツールを使わないB国よりも、軍事費の費用対効果が高くなります。つまり、戦争があれば、B国は、A国に負けてしまいます。

 

エストニアは、DXに優れた徴税システムを導入しています。日本には、まともな徴税システムがありません。徴税システムの費用対効果は、エストニアが、日本より上です。つまりエストニアの方が、経済効率が高いので、日本より経済成長しやすいことがわかります。日本が、エストニアより経済発展で有利になるためには、エストニアの徴税システムより、より費用対効果の高い徴税システムを構築する必要があります。

 

マイナンバーカードには、エストニアより効率の高いシステムという目的は設定されていません。これは、政府の幹部の論理・数学知能が異様に低いことを示しています。

 

データサイエンスでは、数学は基本です。最低限の数学が理解できない人は、議論に参加できません。

 

ハイテク系ベンチャーでは、数学的経営をするツールを開発して販売しています。

 

この傾向は、生成AIの進歩によって強化されています。

 

経営コンサルタント会社は、数学的経営をするツールを開発して販売できなければ、今後、淘汰されると予測できます。

 

経営は哲学だという人もいます。

 

イーロン・マスク氏にも、経営哲学はあるかも知れません。

 

しかし、イーロン・マスク氏の経営哲学をコピーしても、イーロン・マスク氏のように、極めて高い論理・数学知能をつかって、数学的に問題を解くことが出来なければ、経営は成功しません。

 

経営は哲学だという人は、数学ができないので、数学的に問題を解くという問題から逃避しているように見えます。

 

遺伝子の生物学者は、生命はDNAのコードに分解できるという信念のもとに研究を進めました。

 

データサイエンティストは、全ての問題は、情報(多次元空間の点)に分解できるという信念をもっています。

 

この信念は、数学モデルを作成して、モデルの適合度として、検証されるもので、形而上学ではありません。

 

「テクノリバタリアン」では、政治思想から独立した基準として功利主義(P.34、図1)を取り上げています。

 

データサイエンスの問題の多くは、評価関数の値を最大化(あるいは最少化)する解を求めることです。

 

評価関数の値の最大化は、政治思想では功利主義になります。

 

ここには、イデオロギーはありませんので、政治思想という表現には、問題があります。