クリティカルシンキングとは何か

(科学とクリティカルシンキングの関係を説明します)

 

欧米の授業では、生徒は発言をしなければ認められないと言われます。

 

日本の授業では、つまらない質問をすると空気が読めないと批判されます。

 

欧米の授業の発言には、何の意味があるのでしょうか。

 

帰納法が正しいという前提は、過去に起らなかったことは、将来も起らないという前提になります。

 

過去に起らなかったことは、将来も起らないと考えて仮説(因果モデル)をつくる方法が帰納法です。

 

もちろん、「過去に起らなかったことは、将来も起らない」とは言えないので、帰納法が正しいとは言えません。帰納法は、検証にはなりません。

 

しかし、過去に起らなかったことは、将来も起らないと考えて仮説(因果モデル)をつくること自体には、問題はありません。

 

その仮説が正しい可能性もあります。

 

物理学は、「過去に起らなかったことは、将来も起らない」と考えています。

 

それは、検証を繰り返しても、「過去に起らなかったことが、起こってない」という事実に基づきます。これは、帰納法アプリオリに認める前提ではありません。

 

帰納法を放棄すると、因果モデルの仮説をつくる自由度は各段に増加します。

 

一見すると、何でもありの世界に見えます。

 

仮説は、実験によって検証されます。

 

しかし、実験には、コストがかかるので、できれば、出来の悪い仮説を事前に排除したくなります。

 

仮説の諸彫り込みをしたいのです。

 

この場合に、反例を使うと有効です。

 

この反例が、クリティカルシンキングになります。

 

つまり、同調圧力があり、他の人と異なる見解を述べられない場合には、仮説の絞り込みができないため、効果のない無駄な仮説が横行することになります。

 

問題の所在を明らかにすることと、問題を解決することには、全く別の仮説を準備する必要があります。

 

問題を解決するためには、デザイン思考で、原因を除去できる解決法を設計する必要があります。この場合に、クリティカルシンキングが必要になります。

 

がんの患者の例を考えます。

 

医師が、診断をして、患者の病気はがんであるとわかったとします。

 

その診断をした医師に治療法をきいても、無駄なことがあります。

 

前世紀には、がんは切除以外に有効な治療法のない病気でした。

 

前世紀には、がんの診断ができる医師は多数いましたが、がんの治療ができる医師は外科だけでした。

 

今世紀に入って、がんの治療がかなりできるようになった理由は、治療法の開発をして、成果があったためです。

 

問題の例を少子化にしてみます。

 

人口減少や過疎の実態に詳しい専門家がいます。

 

これは、地域社会の問題が少子化にあるという現状を把握する専門家です。

 

経験に価値があるという日本型のリベラルアーツに基づけば、この人はたよりなる専門家です。

 

しかし、この専門家が、人口を増加させる治療法を知っている訳ではありません。

 

人口を増加させる治療法を知らない専門家が大きな顔をして自信ありげに発言しています。

 

人口減少問題では、前世紀のがんの治療法と同じように、誰も、問題解決の設計図のデザインができていません。

 

科学の方法では、複数の設計図を提案して、クリティカルシンキングで、絞り込みと修正をおこない、最終的には、もっとも有望そうな3つ程度の仮説に絞り込んで実験を行なって検証することになります。

 

別の例をあげます。

 

教員の人材不足があり、文部科学省は、賃金を上げる計画です。

 

この政策に対して、有識者と呼ばれる人が、自分の意見をいっています。

 

しかし、有識者は、人材不足の教育現場の状況に詳しい人であって、検証された効果のある問題解決のノウハウを持っている人ではありません。

 

しかも、その有識者の提案は、因果モデルを無視した論理の飛躍になっています。

 

同調圧力で、クリティカルシンキングの出来ない人材を養成したツケがきています。

 

全く、効果の期待できない問題解決法が横行しています。