プラグマティズムの研究(8)追補

補足1)人口動態統計

 

厚労省が11月5日公表した人口動態統計(概数)によると、2024年上半期(1から6月)に生まれた赤ちゃんの数は、前年同期比6.3%減の32万9998人にとどまりました。この数字には、外国人は含みません。

 

 上半期の死亡数は前年同期比1.8%増の80万274人です。出生数と差し引きした自然減は47万276人です。婚姻数は0.8%増の24万593組です。

 

 2023年1から6月の出生数の概数は35万2240人で通年では72万7277人でした。

 

 厚労省が24年8月に発表した人口動態統計の速報値(外国人を含む)によると、24年1から6月の出生数は35万74人で、前年同期比5.7%の減少でした。

 

<< 引用文献

出生数、初の70万人割れの公算 今年上半期、6%減の33万人 2024/11/05 KYODO

https://news.yahoo.co.jp/articles/dbdbfe680368e61c3cd0cf4af92bc0d06681efa5

>>

 

プラグマティズムの研究(8)」では、第一生命研究所の星野卓也氏の2024年の出生数のトレンド-6.0%を使っています。

 

24年8月の前期の速報値は、-5.7%であり、24年11月前期確定値は、-6.3%でした。

 

-6.3% は、星野卓也氏のトレンド予測値を超えています。

 

2022年の社人研の予測では、出生数50万人割れは2076年です。

 

2024年の星野論文を参考にした予測(-6%)では、出世数50万人割れは2030年です。

 

2024年前期の確定値を参考にした予測(-6.3%)では、出世数50万人割れは2029年です。

 

2030年が、2029年に変わっても1年の違いですが。計算基準年の2023年からみれば、7年後6年後の違いになるので、7/6=16%早くなっています。

 

2076年は、2023年の53年後ですから、53/6=883%早くなっていると言えます。



補足2)103万円の壁

 

木内 登英氏は、次のように説明しています。

衆院選で躍進した国民民主党は、与党との政策協議を行っている。そこで大きな焦点となっているのは、国民民主党が掲げる「103万円の壁」対策だ。基礎控除、給与所得控除の合計を現在の103万円から178万円まで拡大させ、課税最低水準を引き上げることで、労働時間の調整による人手不足を緩和させるというものだ。

 

「103万円の壁」対策は重要であるが、国民民主党の案は、すべての所得者に適用される減税措置であることが問題を生んでいる。それは、所得水準が高く、高い税率が適用される高額所得層により大きな減税の恩恵が及ぶことだ。これは所得格差を拡大させてしまう。

 

国民民主党衆院選挙を通じて、「手取りを増やす」と訴えてきた。高額所得者の手取り収入を増やすことを目指している訳ではないだろう。また、若者の支援も訴えてきたが、これは低所得層支援と重なるものだ。「103万円の壁」対策である所得減税は、こうした国民民主党が掲げる理念と相いれない面がある。 

<< 引用文献

国民民主党・経済政策の財源問題①:減税は財政赤字を削減させる? 2024/11/05 NRI 

木内 登英

https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2024/fis/kiuchi/1105_2

>>

 

これが、現在行われている議論です。

 

一方、木内 登英氏は、減税を低所得層に限定する場合の検討もしています。

 

年収103万円以下の勤労者は、その所得に課税されない。課税対象となる所得から、基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計である103万円を引くと、ゼロあるいはマイナスとなるためだ。

 

現在、1,000円~1,949,000円までの所得には5%の税率がかかっている。民主党の減税策が実現すれば、年間103万円超から178万円までの年収を得ていた勤労者は、そこから税控除額の103万円を引いた所得の5%に相当する所得税の支払いを免れることができる。

 

国税庁の民間給与の実態調査結果によると、2023年に100万円超200万円以下の所得を得た給与所得者は、1年を通じた勤務者で6,225,993人(平均所得143.0万円)、1年未満の勤務者で1,027,155人(平均所得31.4万円)、合計で7,253,148人である。詳細なデータは明らかでないことから、この所得層で、給与所得者は所得水準ごとに均等に分布していると仮定して計算してみよう。

 

概算であるが、103万円超から178万円までの所得を得ていた勤労者は、総額1, 033億5,736円の所得税を支払っている計算となる。ちなみにその人数は概算で544万人、全人口の約4.4%だ。国民民主党が提案している減税策では、同額だけ税収が減り、財政赤字拡大要因となる。

 

他方で、同額だけ可処分所得が増加することによって個人消費が増加し、GDPを押し上げる効果が期待される。ただし、減税分は多くが貯蓄に回ることから、1,033.6億円の減税で生じる、1年間でGDPを押し上げる効果は217 .1 億円程度(年間名目GDPの0.004%に相当)と試算される(内閣府、「短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)による)。

 

所得水準が低く、また税率が低い層を対象とする減税措置であることから、税収減の規模は比較的小さい一方、景気浮揚効果も限定的だ。ただし、労働供給を促すという供給側の要因も考慮すれば、経済への好影響は一定程度期待できる可能性があるだろう。 

<< 引用文献

国民民主党基礎控除等拡大策(年収の壁対策):1,030億円程度の減税規模で217億円程度の景気浮揚効果か 2024/10/30 NRI 木内 登英

https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2024/fis/kiuchi/1030_2

>>

 

この場合の、財源(税収減)は、1,030億円程度です。木内 登英氏は、減税分のうち、消費にまわる部分を「短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)」によって、217 .1 億円程度(約20%)と推定しています。

 

しかし、「短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)」は、家計部門を所得階層で分けていません。約20%は、全体の平均です。所得水準が低い階層では、消費が20%で、80%が貯蓄に回るとは思えません。仮に、50%が消費に向うとすれば、500億円の景気浮揚効果が期待できます。

 

いずれにしても、問題を低所得層に限定すれば、財源問題は、無視できるほど小さいことがわかります。

 

補足3)問題の所在

 

筆者は、課税にテーブル関数を使うべきではないと考えます。

 

納税は、国民の義務ですから、どんなに貧しい人でも、1%程度の最低税率の納税をすべきであると考えます。

 

法人税についても、赤字で、納税していない企業が多数あります。しかし、そうした企業も、道路や警察といった公共サービスの便益を得ているので、納税すべきです。

 

パーティ券でも問題になりましたが、納税に例外を設ければ、それが利権の温床になります。

 

年収103万円の議論には、かならず利権の議論がからみます。

 

この点に注意すれば、国民民主党が、貧困層だけでなく、全世帯の減税を求めている本音が推定できます。

 

最低賃金の問題は、健康で文化的な最低限度の生活に必要な費用をだれが負担するのかという点に問題があります。

 

年収103万円では、老後の資金は、ほぼゼロになります。

 

年収103万円では、現役世代でも、生活は容易ではありません。

 

発展途上国であれば、健康で文化的な最低限度の生活に必要な年金は無理だという一言で、話は終わりです。

 

しかし、先進国の日本で、社会保険料と税を合わせた負担率が5割近くなっても、健康で文化的な最低限度の生活に必要な年金は無理だという理屈には無理があります。

 

無理なら、もっと負担率をさげて、自己責任で考えるようにすべきです。

 

これは、アメリカのリバタリアンの理論になります。

 

信頼できない政府よりは、自己責任がはるかによいと考えます。

 

年収103万円であれば、企業は人件費を抑えられて得したつもりになっているかも知れません。

 

しかし、国民を見殺しにしない限り、健康で文化的な最低限度の生活に必要な年金は、税収で補うことになります。そして、将来のその見通しは、経済成長できない日本では、真っ暗です。これは、国内でビジネスをしている企業は、成長できないことを意味しますので、資金の海外逃避が起こります。将来性のない日本企業の株は売られて、そのような企業は、資金難で、経営が行き詰ります。

 

年収103万円であれば、企業は人件費を抑えられて得したつもりになっているかも知れません。

 

しかし、出生数が減少すれば、企業は、日本国内では、経済活動ができなくなるので、そのツケを支払うことになります。

 

この場合にも、やはり、株式は売られてしまいます。

 

つまり、問題の所在は、103万円にはありません。

 

若年層の賃金をあげる、つまり、年功型賃金体系を放棄しなければ、ならないと思われます。




プラグマティズムの研究(8)」を、以下に、再度掲載します。




8-3)日本人は滅びる論争

 

ファーストリテイリング柳井正会長が、「人口減少で人手不足が進む中、少数の若者で大勢の高齢者を支えるためには、労働生産性を上げ、海外からの移民や知的労働者を増やすべき」と訴えました。

 

最近、これに関連した論争が起こっていて、「日本人は滅びる論争」と呼ばれています。

 

<< 引用文献

「このままでは日本は滅びる」ユニクロ柳井氏の警鐘に賛否…止まらない日本の“オワコン”化にひろゆき氏「社会保障は維持できませんと、きちんと事実を伝えるべき」2024/09/13 Ameba Prime

https://times.abema.tv/articles/-/10142614?page=1

>>

 

柳井正氏の主張を要約すれば、次の2点になります。

 

第1は、労働生産性を上げることです。

 

第2は、海外からの移民や知的労働者を増やすことです。

 

第2の点を、補足します。

 

海外の移民の問題は、EUでは事実上タブーになり、アメリカでも大統領選挙の論点になっています。

 

BBCは、2020年に、次のように伝えています。

出生率の低下により、世界の人口は2064年にピーク(約97億人)を迎えた後、今世紀末には約88億人にまで減少するという予測を、米ワシントン大学の研究チームが発表した。

<< 引用文献

世界の出生率、驚異的な低下 23カ国で今世紀末までに人口半減=米大学予測 2020/07/15 BBC

https://www.bbc.com/japanese/53413717

>>

 

単純労働の労働者不足を解消するために、移民を受け入れる政策は、破綻しています。筆者は、単純労働は、機械に置き換える方向を探索することになると考えます。一方、スキルのある人材については、国際労働市場が形成されています。

 

柳井正氏は移民を受け入れるという視点で問題解決を述べられていますが、国際労働市場が形成されるという視点で考えれば、日本人が、国際労働市場で働ける視点が必要です。人材の移動は双方向で、企業は、よい労働条件を提示して、国境を超えて、人材を繋ぎとめることになります。企業で、複数の国の人材が協業する場合を考えれば、日本人も、国際標準のメンタルモデルを共有できる必要があります。

 

残念ながら、日本の高等教育は、この点で見れば、落第です。

 

イーロン・マスク氏は、2020年5月7日、ツイッターの投稿への返信で、「言わずもがなであることを承知で言おう。出生率が死亡率を超えなければ、日本は結局、生きながらえることはできない(消滅する)。これは世界にとって大きな損失になるだろう」と書きました。

 

<< 引用文献

イーロン・マスクがツイートで警告、このままいけば「日本は消滅する」2022/05/09 Forbs Japan

https://forbesjapan.com/articles/detail/47378

>>

 

マスク氏は、社人研のデータを見ていると思われます。

 

マスク氏の発言に対して、週刊現代は、次のように書いています。(筆者要約)

厚労省の傘下である社人研の予測値が実際の数字より甘いのは昔からのことで、霞が関では「人口予測を低く見積もると公的年金を支える世代の保険料を大きく上げなければならなくなるため、あえて高めに算出しているのではないか」と、昔からまことしやかに囁かれてきた。

 

2022年2月末に厚生労働省が公表した「人口動態統計」(速報値)によると、2021年の日本の出生数は約84万人であった。

 

2015年から2020年における出生数の速報値と確定値の誤差を眺めると、毎年、速報値のほうが確定値よりも3万から3.3万人ほど過大な値となっている。



これから2022年9月に公表される確定値は速報値よりも3万人ほど低い81万人の可能性が高い。

 

簡単な試算で確認できるが、2000年から2020年における出生数の減少率は、年間平均で1.57%となっている。この減少率が'22年以降も継続すると仮定し、今後50年間の出生数を推計した場合、2031年には出生数が70万人を割り、2040年には60万人を、2052年には50万人を割り込む計算になる。

 

政府の予測では出生数が50万人割れとなるのは2076年であるから、24年も早く少子化が進む計算なのだ。

<< 引用文献

「日本はいずれ消滅する」イーロン・マスクの「予言」は何年後に当たるのか 2022/06/02 週刊現代

https://gendai.media/articles/-/95664

>>



実業家のイーロン・マスク氏は日本時間2024年2月29日夜、「もし何も変わらなければ、日本は消滅するだろう」とX(旧Twitter)に投稿しました。2023年の日本の出生数が75万8631人(速報値)と、統計開始以来の過去最少を更新したことを受けた投稿です。

 

<< 引用文献

イーロン・マスク氏「日本は消えてなくなる」X投稿再び--過去最低の出生数を受け 2024/03/01 CNET Japan

https://japan.cnet.com/article/35215916/

>>




星野卓也氏は、「2024年1から3月の出生数が公表されているが、前年同時期に比べて6%減っている」ことを根拠に、6%を使って、2024年の出生数を予測しています。

 

表1 2024年の出生数予測(*は、星野 卓也氏による)

 

西暦  出生数

    万人  減少率

2021年 81.1

2022年 77.4   -4.6

2023年 72.7    -6.1

2024年 68.4*  -6.0* 

 

<< 引用文献

出生数減少が止まらない 2024/05/27 第一生命研究所 星野 卓也

https://www.dlri.co.jp/report/macro/340186.html

 

参考 

表2 星野論文を参考にした出生数の減少率が-6%から-4%の場合の出生数予測



西暦  出生数  減少率 出生数  減少率 出生数 減少率

2023  72.7   0.06    72.7   0.05  72.7   0.04

2024  68.3   0.06  69.1   0.05  69.8   0.04

2025  64.2   0.06  65.6   0.05  67.0   0.04

2026  60.4   0.06  62.3   0.05  64.3   0.04

2027  56.8   0.06  59.2   0.05  61.7   0.04

2028  53.4   0.06  56.3   0.05  59.3   0.04

2029  50.2   0.06  53.4   0.05  56.9   0.04

2030  47.1   0.06  50.8   0.05  54.6   0.04

2031  44.3   0.06  48.2   0.05  52.4   0.04

2032  41.7   0.06  45.8   0.05  50.3   0.04

2033  39.2   0.06  43.5   0.05  48.3   0.04

2034  36.8   0.06  41.4   0.05  46.4   0.04

2035  34.6   0.06  39.3   0.05  44.5   0.04

2036  32.5   0.06  37.3   0.05  42.8   0.04

2037  30.6   0.06  35.5   0.05  41.1   0.04

2038  28.7   0.06  33.7   0.05  39.4   0.04

2039  27.0   0.06  32.0   0.05  37.8   0.04

2040  25.4   0.06  30.4   0.05  36.3   0.04

2041  23.9   0.06  28.9   0.05  34.9   0.04

2042  22.4   0.06  27.4   0.05  33.5   0.04

2043  21.1   0.06  26.1   0.05  32.1   0.04

2044  19.8   0.06  24.8   0.05  30.8   0.04

2045  18.6   0.06  23.5   0.05  29.6   0.04

2046  17.5   0.06  22.3   0.05  28.4   0.04

2047  16.5   0.06  21.2   0.05  27.3   0.04

2048  15.5   0.06  20.2   0.05  26.2   0.04

2049  14.5   0.06  19.2   0.05  25.2   0.04

2050  13.7   0.06  18.2   0.05  24.1   0.04

 

>>

 

論点を整理します。

 

基準年を揃えても、大勢に影響はないので、調整はしないことにします。

 

2022年の社人研の予測では、出生数50万人割れは2076年です。

 

2022年の週刊現代(-1.57%)の予測では、出世数50万人割れは2052年です。

 

2023年の週刊現代(-1.57%)の予測では、出世数50万人割れは2047年です。(注1)

 

2024年の星野論文を参考にした予測(-6%)では、出世数50万人割れは2030年です。

 

2024年の星野論文を参考にした予測(-5%)では、出世数50万人割れは2031年です。

 

2024年の星野論文を参考にした予測(-4%)では、出世数50万人割れは2033年です。

 

出生数の減少率が、2022年の -4.6%から、2023年の-6.1%に増加する間に、こども家庭庁が出来ています。こども家庭庁が出生率を低下させたという因果関係はありませんが、少なくとも、子ども家庭庁にかかる費用を節約して、若年層の所得を増やした方が、出生率の低下に歯止めがかかった可能性は否定できないと思います。政府が介入して、中抜き経済を強化すればするほど、可処分所得が減るので、出生率が下がるはずです。

 

出生数の減少率が、2022年の -4.6%から、2023年の-6.1%に増加しています。この変化は、円安政策が原因になった可能性があります。

 

以上の計算は、感度分析ですので、実現可能性は、別に検討することになります。

 

また、次の要素分解が可能です。

 

出生数 = 生産年齢人口   x  婚姻率  x  出生率

 

社人研には、権威がありますが、科学的には、社人研のモデルは、中立予測ではなく、予測には使えません。社人研は、個人情報を取り除いたデータを公開して、誰でもよりまともな人口予測モデルができる環境を整備すべきです。

 

マスク氏が、「日本は消えてなくなる」という根拠は、マスク氏が、因果推論をしていることを示しています。

 

日本の知識人は、事実推論はできるが、因果推論(反事実推論)ができない人が多くいます。

 

事実推論とは、筆者の用語で、今までおきた事実に限定した推論です。

 

典型は前例主義です。

 

あるいは、問題があれば、現場にいって調べれば、問題解決の糸口は見つかるという推論です。

 

論理学の推論は、2項関数ですが、事実推論は1項関数です。

 

反事実水推論は、現場をしらべても問題は解決できないと考えます。

 

反事実推論は、因果モデルで考えます。

 

問題のある結果は、何かが原因で発生したと考えます。

 

因果推論では、問題を解決するには、原因を取り除く(反事実)ことが必要であると考えます。

 

因果推論は、高度に言語化された推論(知識)です。

 

事実推論には、キーワードがマッチングすればよいので、なぜ、事実推論に効果があるか、参考にした事実が、再現する可能性は高いかといった言語化された疑問に答えることはありません。これは、事実推論が、言語化の対象にならない暗黙知であることを示しています。

 

民主主義のコミュニケーションが成り立つためにには、言語化された概念で構成されるメンタルモデルの共有が不可欠です。

 

科学のコミュニケーションが成り立つためにには、専門用語や数式で、言語化された概念で構成されるメンタルモデルの共有が不可欠です。

 

養老孟司氏は、「バカの壁」で、コミュニケーションが成立しない場合を明示しました。

 

これは、メンタルモデルの共有ができていないことを意味します。

 

日本以外の先進国では、教育の第1の目的は、専門家のメンタルモデルの共有です。

 

つまり、日本以外の先進国では、「バカの壁」は解決済みの問題なので、ベストセラーにはなりません。

 

一例として、NIARへの投稿論文を引用します。

 

詳細は見ていませんが、反事実推論のできない専門家の論文には、解決策は提示されていないはずです。

 

<< 引用文献

日本と世界の課題2024 転換点を迎える日本と世界  わたしの構想

2024/01/18  NIRA総合研究開発機構

https://www.nira.or.jp/paper/my-vision/2024/issues24.html

>>

 

2000年から2020年における出生数の減少率は、年間平均で1.57%でした。最近の減少率は、4から6%です。この差は、非常に大きいです。

 

出生数の減少率が、4%から6%の場合、マスク氏が言うように、2050年までに、「日本は消えてなくなる」と思われます。

 

出生数50万人割れになれば、生活が維持できなくなるので、人材と資金の海外流出がとまらなくなります。

 

藤巻健史氏は、1ドルが200円より安くなる可能性があるといいます。

 

藤巻健史氏は、1ドルが200円の世界を、円ドルレートの変化だけで描写していますが、1ドルが200円になれば、人材と資金の海外流出がとまらなくなります。

 

同様に、出生数50万人割れになれば、現在の社会構造は崩壊して、次のステージに移行します。

 

政府は2024年9月13日の閣議で、高齢化対策の中長期指針「高齢社会対策大綱」の改定を決定しました。75歳以上の医療費について、窓口負担が3割となる人の範囲の拡大を検討すると明記しました。

 

この推論は、事実推論です。現状の社会構造が維持されるトレンド予測を使い、細部の手直しで対応する方法です。

 

因果推論で考えれば、事実推論は、問題の原因を放置しますので、問題は解決されず、拡大します。

 

出生数の減少率が、4から6%の場合が続けば、「高齢社会対策大綱」の改定は、実現可能性のない空手形になります。「窓口負担3割」を、「窓口負担5割」にしても、財源は不足するはずです。

 

巷では、「窓口負担3割」の拡大が問題になっていると思われますが、労働生産性の向上を阻止したゾンビ企業の温存の効果によって、デジタル社会へのレジームシフトに乗り遅れて、経済システムが破綻したことが、医療保険の破綻の原因にあります。そして、政治献金に対する補助金のキャッシュバックシステムが、ゾンビ企業の温存政策の元になっています。

 

出生数の減少率が、4%から6%の場合、マスク氏が言うように、2050年までに、「日本は消えてなくなる」ので、年金の心配をする必要もなくなります。

 

自民党総裁選に立候補した過去最多の9人が出席する日本記者クラブ主催の討論会が2024年9月14日午後、開かれました。

 

2050年までに、「日本が消えてなくなる」リスクが高く、政治献金に対する補助金のキャッシュバックシステムは維持できないと考えた候補者はいたでしょうか。

 

少なくとも、補助金を配り続け、中抜き経済を継続する限り、「日本が消えてなくなる」リスクは小さくなりません。中抜き経済が継続されて、日本の市場経済は、破壊されてしまいました。特に、労働市場はなくなったと思われます。

 

解雇規制を見直しても、工業社会の企業に、補助金をばら撒き、減税して、円高誘導する限りは、ベンチャーデジタル企業は育たないので、解雇後に働ける企業はありません。

 

筆者は、解雇規制に賛成ですが、とはいえ順番を間違えると、悲惨なことになります。

 

与党に限らず、政治家のメンタルモデルは、政治とは補助金を配り続け、中抜き経済を継続することであると考えています。これは、田中角栄氏がつくったビジネスモデルです。

 

これに、事実推論が、ダメ押しをしています。

 

ウィキペディアによれば、ソニー井深大氏は、1980年代前半ごろ、当時の新素材についてソニー社内の担当責任者にその可能性について意見を聞いた際、担当者は、現在出来ること、近く出来ることと可能性を話したが、井深氏は、その返答に満足せず、次のように言ったといわれてます。

 

    「なぜ、そういう考え方をするのか。そんな数年後ではない。1990年や、2000年でもなく、2010年、2020年にはどうなっているしどうなるべきだから、という考えかたをしないといけない」

 

因果推論のメンタルモデルの共有がなければ、スタート地点に着けません。

 

注1:

 

基準年を2023年の72.7万人おいた場合の計算

 

>>

木原信敏

 

コラム:止まらぬ資金流出、対外投資超過は過去最高ペースに=佐々木融氏

https://jp.reuters.com/markets/commodities/PJ6NCD54PNI73KO7LJXVHQ4I24-2024-09-10/