8)問題の整理
安価なレンズが使えるかという検討を進めてきました。
ポイントを再度整理します。
「デジタル補正では、色収差と湾曲収差は補正できます。
これから、EDレンズがなくても、色収差には、問題がないことが分かります。
ただし、ボケの表現は異なります。
丸ボケのマルの大きさは、レンズの焦点距離とF値できまります。
この大きさは、EDレンズとは関係しません。ただし、丸ボケの柔らかさには、EDレンズが効きます。
しかし、丸ボケの柔らかさは、デジタル補正で、調整が出来ます。
つまり、ボケ部分の柔らかさは、RAW画像の後処理で調整できると考えれば、非球面レンズを使った解像度が高いレンズであれば、安価なレンズでも、表現に問題がないだろう」
以上が、検討した仮説です。
darktableのRAW現像は、ベースカーブを使わず、フィルミックRGBのS字曲線を使います。
その目的は中間トーンの保存です。
中間トーンの再現が写真の出来栄えを大きく左右すると考えるのが、シーン参照ワークフローです。
さて、レンズに関する以上の考察では、中間トーンの問題が落ちています。
安価なレンズと高価なレンズで、中間トーンの表現に差があるのでしょうか。
これは、もちろん、一般論で議論できる内容ではありません。
絞り開放から、解像度の高い安価なレンズの代表として、キヤノンのEF40mmF2.8を入手しました。
カメラ店のレンズレビュー等では、フルサイズ以外のレンズはボケが足りないいう記載がよくありますが、ボケの量は、センサーのサイズとは関係がありません。レンズの換算画角ではなく、レンズに記載されたままの画角とF値が同じであれば、センサーサイズに関係なくボケの大きさは同じになります。
これは、センサーサイズが小さくなるとトリミングされるだけなので自明です。
換算画角で、換算したボケの量は意味のない数字です。
レンズが広角になると、望遠に比べて、レンズの枚数が減るので、明るいレンズを設計しやすくなります。ただし、光束の大きさが問題なので、大きく広角にしても明るいレンズを作ることはできません。パンケーキレンズは20から40㎜が多いので、この当たりが、一番簡単に明るいレンズを作れる画角と思われます。
広角にして、F値を下げると被写界深度が浅くなるので、焦点合わせが難しくなります。
例えば、シグマの16㎜f1.4は、F1.4では、ピント合わせが難しいです。
花を撮影する場合に、雄蕊の先端にピントをあわせると、雄蕊の付け根のピントは合わなくなります。
被写界深度が浅くなり、ボケやすくなると、ピントずれの写真を乱発することになります。
単焦点レンズでも、F1.8からF2が多いのは、F1.4のレンズで被写界深度を稼ぐために、F1.8まで絞るのであれば、レンズの大きさとレンズの価格から考えて、F1.8のレンズの方が使いやすくなるからです。
さて、問題は、 EF40mmF2.8の画質の評価です。
ここでは、ボケの質は除外して、レンズの画質を考える必要があります。
これは、全く、慣れない作業で、頭の切り替えが必要です。
1週間ほど、EF40mmF2.8を使っていますが、ボケの質を除けば、中間トーンも十分に表現されていて、画質はよいと考えるようになりました。
写真1は、EF40mmF2.8をF4.5で撮影しています。非常にくっきりしています。明るい部分から暗い部分への中間トーンも十分出ています。
写真2は、パナライカの25mmF1.4で、F6.3で撮影しています。高級レンズに分類されます。F6.3でも、あまり解像度は高くありません。
柔らかく、とても綺麗にボケていますが、今回は、その部分は除外して評価します。
そうすると、写真2が、写真1より良いとは言えません。
写真1の高い解像度は、主題の花の存在感を非常に高めます。
写真3は、写真1の花の回りに、darktableでlens deblurをかけています。
写真2のボケは後で調整できませんが、写真3の方法であれば、ボケの場所と質を調整して選ぶことができます。
これは、単純な編集ですが、考えていることは理解できると思います。
デジタル画像処理の技術が向上すれば、ともかく解像度のよいRAW写真を準備して、ボケは後処理した方が自由度が上がるはずだと考えます。