マルチショットとソフトウェアの展開

1)マルチショットの可能性

 

キャノンのDPP(Digital Photo Professional)で、デュアルピクセルRAW(DPRAW)の画像を編集すると、ボケの位置を移動できるようです。

 

デュアルピクセルRAWは1種のマルチショットになっていると思われます。

DPPでは、深度合成やHDRの編集もできるようになっています。

ただし、EOS M6 markⅡでは深度合成に対応していますが、Kiss Mは、深度合成に対応していないようです。Kiss MのHDRは、RAWに対応していませんので、DPPのHDRとは別ものです。この辺りの機種毎の差別化は、消費者を軽んじていると思います。

テスラのEVでは、追加料金を払えば、充電池の容量をグレードアップできます。

EVでできることが、デジタルカメラでできないのは、努力不足です。

ファームウェアのアップデートの一部を有償にして、機能向上を図るべきです。

 

マルチショットでは、次のことができます。

(1)深度合成

(2)ボケの作成

(3)ハイレゾ撮影

(4)NDフィルーター効果

(5)広角合成

(6)多重露出

(7)HDR

(8)ダイナミックレンジの拡大

 

まだ、あるかも知れませんが、マルチショットができれば、センサーサイズを大きくするメリットはほぼなくなります。つまり、カメラが小型化できます。

(8)ダイナミックレンジの拡大には、ISO感度を変えたマルチショットを行います。

現在は、フジフィルムのカメラに、ISOを変えて、3連写して合成するモードがついています。このモードは動きの早いものには追従しません。

秋に、iPhoneの新しい機種が出ます。今回は、カメラのセンサーの解像度を上げてくるようです。解像度をあげて、4つの画素をセットで扱うことで、画質の向上をはかるようです。

 

フジフィルムと同じ発想でいけば、4つのセンサーのISOを変えれば、ワンショットで、センサーが小さいにもかかわらず、ダイナミックレンジの広い画像を得ることができます。

 

ここ15年のデジカメは、ソニーはセンサーを中心に牽引してきました。コンデジの1インチ化、レンズ交換式カメラは、ミラーレスのフルサイズが、普及しました。

 

次の10年は、ソフトウェアが中心になる気もします。

 

2)コンデジの性能

 

最近のレンズ交換式カメラで一番売れているのは、Kiss M/M2です。

 

Kiss M/M2を取り上げているのは、利用者が多いと考えるからです。

 

よくできたカメラだとは思いますが、交換レンズには、UDレンズが使われているものは1つもありません。

 

1インチコンデジPowerShot G7 X Mark IIIのレンズは以下です。

 

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焦点距離 [35mmフィルム換算]8.8(W)-36.8mm(T)[24(W)-100mm(T)]

 

開放F値 F1.8(W)-F2.8(T)

 

構成枚数 9群11枚(両面非球面レンズ1枚、片面非球面UAレンズ1枚、片面非球面レンズ1枚、UDレンズ1枚)

 

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EF-Mマウントレンズにはない、UDレンズが入っています。

 

EF-Mマウントには、望遠端のF値が、F2.8のように明るいレンズはありません。

 

PowerShot G7 X Mark IIIは、換算100㎜を超える望遠も、換算24㎜未満の広角も、32mmF1.4のようなF1.8より明るいレンズも、大きく寄れるマクロレンズもありません。

この部分では、ミラーレスカメラが優位です。

 

しかし、Kiss M/M2の標準ズームレンズEF-M15-45mm F3.5-6.3 IS (換算24-72mm)で、撮影した画像が、PowerShot G7 X Mark IIIに勝てるか自信がありません。

 

これは、Kiss M/M2だけの問題ではありません。

 

キヤノンのEOS Rシリーズを購入して、Lレンズの標準ズームを購入しても、F値は、F2.8通しです。最近では、その上にF2のズームも出ていますが、更に高価になります。

価格を考えて、サイドパーティのF2.8のズームを使うか、より暗いズームレンズを使っている人も多いと思います。

こうした場合に、撮影した画像が、PowerShot G7 X Mark IIIに勝てるか自信がありません。

 

センサーサイズによる一番の違いは、ダイナミックレンジです。小さなセンサーでも、ダイナミックレンジの問題が、解決すると何がベストか、変わってくると思います。

これが、ソフトウェアの時代という意味です。

 

カメラメーカーは、センサーサイズの大きな高価な、サイズの大きなカメラを売りたいので、センサーサイズが大きくなると、暗所ノイズが減る、ボケが大きくなるといいます。しかし、この2つは、ソフトウェアで改善できます。ISO25000といった高いISOが必要な場合は、ほとんどありません。対象物が動かない場合、シャッター速度を長くすれば、低いISOで十分です。

 

カメラマンが撮影時に設定できる要素は通常は、構図とF値だけです。回析を考えるとF値の上限は、F8なので、レンズのF値が4.0の場合、4から8は、すこし窮屈に感じます。

Kiss M/M2のズームレンズの望遠端のようにF6.3の場合には、6.3から8は、とても窮屈です。

F値が大きくなると、線が硬くなります。柔らかい線を出すには、明るいレンズを使うしかありません。ボケの大きさより、この線の硬さの方がはるかに大きな問題です。

 

RAW現像時に、解像度を上げる手法は色々あります。しかし、逆に、線を柔らかくするのは容易ではありません。

 

マルチショットで、ボケを作ることはできるはずです。マルチショットで、線を柔らかくすることができるようになれば、本当のソフトウェアの時代になると思います。