1.共通の注意
焼き芋を焼く場合の留意点は、次の3つです。
1. ペクチン軟化
2. 糖化
3. 水分の調整
1)ペクチン軟化
サツマイモを柔らかな食感にする過程です。
温度を90度以上にする必要があります。
2)糖化
糊化したデンプンを麦芽糖に転換する過程です。
3)水分の調整
水分を飛ばして、蒸し芋、ふかし芋のような水っぽさを除く過程です。
以上の調整は、サツマイモのサイズによって、必要となる時間が異なります。
レシピは、サイズがM(200g)のサツマイモを標準として、書いています。
サツマイモのサイズが、異なる場合には、温度設定は変えずに、加熱時間を変えて、調整してください。
2. 羊羹焼き芋のレシピ
羊羹焼き芋のレシピの基本の考え方は、以下です。
ステップ1:β-アミラーゼの失効を最小限にするために、最短時間で、90度に達して、ペクチン軟化を完了する
ステップ2:デンプンの麦芽糖化を進めるため、90度をできるだけ長時間維持する。
1)器具の準備
ここでは、基本的にオーブンレンジ(オーブン機能付き電子レンジ)を使います。
オーブントースターでも、調理は可能ですが、手元に、オーブントースターがないため、オーブントースターでは、試していません。
オーブントースターの調理法についても、わかっている範囲で、記載しておきます。
不明な点については、最後に、「オーブントースターの注」を付けておきます。
また、加熱時間を短縮するために、部分的に熱量の多い蒸し器を併用することも可能ですので、この方法も補足してあります。
調理器具:オーブンレンジ、または、オーブントースター
アルミホイル、ミトン、竹串または金串、タワシまたは歯ブラシ(泥が気になる人)
保温器具:保温箱
予算に応じて、保温箱を準備します。
低予算コース:0円、スーパーなどで、トロ箱(魚などの生鮮食品の輸送用の発泡スチロールの箱)をもらってきます。発泡スチロールに熱い焼き芋が直接触れると、発泡スチロールが変形したり、発火するリスクがあります。これを避けるために、タオルも準備して、焼き芋をタオルにくるんだ上で、トロ箱に入れます。この方法では、4時間程度は暖かいです。
中予算コース:1200円。600円の真空タンブラー(ビールカップ)を2つ準備します。焼き芋は、タンブラーに入れたうえで、タオルに包んで、トロ箱に入れます。この方法では、8時間程度は暖かいです。
サツマイモの量が少なければ、タンブラーは1つでも対応可能です。
高予算コース:7000円から、市販の真空調理鍋があります。これを使えば、更に、高い保温効果が期待できます。
2)サツマイモの準備
以下は、サツマイモの種類は、紅はるかを想定しています。
良いサツマイモを入手します。
サツマイモのサイズはSまたはM(300g以下)を選びます。
一緒に複数本を焼く場合には、サイズによって、加熱の具合が異なるので、サイズが揃っていると調理が簡単になります。
このため、一袋に複数本のサツマイモが入っている場合には、サイズの揃っているものを選びます。
表面に蜜のようなもの(ヤラピン)が、見えるサツマイモがあれば、それを優先します。
12月より前に購入したサツマイモは、新聞紙に包んで、冷所(13度)において、12月まで保存して使います。
12月以降に、購入したサツマイモは、そのまま使って構いません。
サツマイモは、まれに、痛んでいることがあります。
指でさわって、ぶよぶよしているようであれば、痛んでいます。
切ってみると変色しています。
購入するときには、痛んでいるサツマイモは避けます。
購入後、ビニール袋に入れておくと、1日でも痛んでしまうことがあります。
サツマイモは、購入した日に調理しない場合は、ビニール袋から出して、新聞紙に包んで、保管した方がよいです。
ビニール袋にいれたままであれば、冷蔵庫の野菜室で保管します。
3)加熱前の準備
サツマイモをよく洗います。
泥が気になる場合は、たわしか歯ブラシで、泥落とします。
サツマイモが破裂しないように、竹串または金串で、小さな穴をあけます。
3-1)オーブンレンジの場合
サツマイモをアルミホイルで包みます。
3-2)オーブントースターの場合
アルミホイルで包む必要はありません。
4)ステップ1の加熱
ステップ1では、できるだけ短時間でサツマイモの温度をあげることが目標です。
このためには、加熱温度は高い方がよいことになりますが、あまり高い温度を出せない調理器具もあります。石焼き芋什器のデータから見ると、扱いやすい温度は、200度から230度です。以下で、もっとも扱いやすい200度で、レシピを書いています。
4-1)オーブンレンジの場合
200度で予熱します。
200度60分を目途に加熱します。
加熱は、アルミホイルでまかれたサツマイモを、ミトンで挟んで、柔らかくなっていれば、ペクチン軟化が完了していますので、加熱を中止します。
4-2)オーブントースターの場合
200度で予熱します。
200度60分を目途に加熱します。
加熱の段階で、糖蜜が出ることがあるので、網に、アルミホイルをしきます。
加熱は、アルミホイルでまかれたサツマイモを、竹串または、金串でさして、柔らかくなっていれば、ペクチン軟化が完了していますので、加熱を中止します。
4-3)蒸し器を併用する場合
ステップ1では、できるだけ短時間でサツマイモの温度をあげることが目標です。
ガスコンロで、蒸し器(鍋に網を入れる簡易蒸し器も十分)を使うと、更に短時間で、温度上昇が見込める場合があります。そこで、上記の加熱の最初の30分の部分を蒸し器で代用します。
なお、出力の小さな電気蒸し器、オーブンレンジに付属している蒸す機能は、出力が小さく、時短効果がありませんので、使えません。
5)ステップ1の保温
サツマイモを保温箱で保温します。
オーブンレンジ調理の場合には、サツマイモは既に、アルミホイルで覆われています。
オーブントースターの場合には、サツマイモは、アルミホイルでくるまれていませんが、糖蜜がでるので、保温すると糖蜜がでるので、保温前に、サツマイモをアルミホイルで包みます。
低予算コース:アルミホイルで包まれたサツマイモをタオルで包んで、トロ箱に入れます。
中予算コース:アルミホイルで包まれたサツマイモをタンブラーに入れ、タンブラーをタオルで包んで、トロ箱に入れます。
高予算コース:アルミホイルで包まれたサツマイモを真空調理鍋に入れます。
保温時間の制約は、次の2つです。
温度が下がると反応速度が落ちるので、糖化の速度が下がる。
ステップ2の加熱をする場合、温度が下がりきっていなければ、短時間で、温度上昇が見込まれる。
実際の調理では、ステップ2の加熱を開始する時間は、自由に取れた方が便利なので、2時間以上保温すれば、あとは、自由に扱っています。
ステップ1の保温が終わった時点で、市販の石焼き芋よりは甘くなってるはずなので、ここで、調理を終了する選択も可能です。
6)ステップ2の加熱
ステップ2の加熱は、再度サツマイモの温度を上げて、糖化を促進することです。
ステップ1でペクチン軟化が終了していますので、ステップ2では、短時間に温度を上げる必要はありません。そこで、オーブンレンジやオーブントースターのデフォルトである170度または180度(機種によって違う)を使います。
予熱は、基本的には、不要ですが、保温箱からサツマイモを取り出した時点で、サツマイモがあたたかいと、予熱していないオーブンレンジや、オーブントースターにサツマイモを入れると、いったんサツマイモを冷やしてしまうことになります。これでは、流石(さすが)に非効率ですから、オーブンレンジや、オーブントースターが、サツマイモが冷えない程度の温度になってから調理を始めます。
6-1)オーブンレンジの場合
予熱せずに170-180度60分を目途に加熱します。
60分が目標ですが、糖蜜が出て、それが焦げ付くと匂いがしますので、焦げてきたと思われたら、加熱を中止します。
6-2)オーブントースターの場合
予熱せずに170-180度60分を目途に加熱します。
60分が目標ですが、糖蜜が出て、それが焦げ付くと匂いがしますので、焦げてきたと思われたら、加熱を中止します。
7)ステップ2の保温
サツマイモを保温箱で保温します。
低予算コース:アルミホイルで包まれたサツマイモをタオルで包んで、トロ箱に入れます。
中予算コース:アルミホイルで包まれたサツマイモをタンブラーに入れ、タンブラーをタオルで包んで、トロ箱に入れます。
高予算コース:アルミホイルで包まれたサツマイモを真空調理鍋に入れます。
2時間以上経過すれば、次のステップに移行できます。
8)仕上げの水分飛ばし
段階7)で、焼き芋は完成していますが。焼き芋は糖蜜に包まれているはずです。
しかし、水っぽく感じられますので、お好みで、水分飛ばしを行います。
水分を飛ばし過ぎると、カチカチの飴の状態になりますので、その前に加熱を中止します。
サツマイモの耳の部分は、水分が飛びやすいので、サツマイモ全体の水分量が適切になった時点で、耳の部分は硬くて、食べられなくなります。
サツマイモをアルミホイルから取り出した後、水分を飛ばす前に、耳の部分を切り落としておくことをおすすめします。
8-1)オーブンレンジの場合
サツマイモは、アルミホイルから取り出して、天板にしいたクッキングシートの上に並べます。
予熱して170-180度10-20分を目途に加熱します。
5分程度経ったら、サツマイモの上下を反転させます。
8-2)オーブントースターの場合
サツマイモは、アルミホイルから取り出して、網の上に敷いたクッキングシートの上に並べます。
予熱して170-180度10-20分を目途に加熱します。
5分程度経ったら、サツマイモの上下を反転させます。
9)オーブントースターの注
オーブントースターは手元にありませんので、推測の記載です。
問題点は、以下です。
・オーブントースターによっては、温度調整ができず、ワットの出力切り替えだけの機種があります。基本は、最大出力で使うことになると思います。
・オーブンレンジの場合には、熱風を使って食材を温めますので、アルミホイルで覆わないと、乾燥しすぎて、サツマイモがすぐに焦げてしまいます。オーブントースターの場合には、風はふきませんので、ステップ1の加熱中に、アルミホイルは不要と考えています。しかし、乾燥しすぎるようであれば、アルミホイルでサツマイモを包んでください。オーブントースターで、アルミホイルで包んだサツマイモを加熱すると、包まない場合に比べ、放射熱の反射が多くなるので、温度上昇は、遅くなるはずです。それを考えると、ステップ1の加熱では、最初から、アルミホイルを使うのではなく、ある程度、サツマイモの温度が上がってから、アルミホイルを使う方法も考えられます。このあたりは、実験できる器材がないので、どれが、よいか判りません。