化学反応理論の大枠
焼き芋の化学反応は次の2つの式で説明できます。
1行目は、澱粉が糊化される反応で、熱によって反応が起こります。
2行目は、糊化された澱粉が分解されてマルトース(麦芽糖)が生成されます。これには、βーアミラーゼが作用します。
糊化の進行と共にアミロースとアミロペクチンが溶出します。その後,β‐アミラーゼがアミロースのみに作用し,マルトースを生成します。
問題は、適切な温度管理です。温度管理のできる調理器は、オーブン、電気鍋(スロークッカー、製パン機など)の2種類に限定されます。この点では、石焼き芋調理器を使うと、糖度が高くなるという理論的な根拠はありません。
温度については、次回に検討します。というのは、巷の文献の最適温度には諸説があるからです。例えば、ホームベーカリーの焼き芋モードについて、前々回に紹介したように「50~60°C」という機種と、「60℃~75℃」という機種があります。
ペクチンについては、納得のある説明は見つかっていません。
ペクチンを無視している文献も多くあります。
ペクチンは食感だけに作用すると考える場合と、ペクチンが分解すると細胞壁がなくなるので、糊化が進みやすくなるように、間接的に化学反応に作用していると考える場合があります。
加熱については、
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反応最適温度に一定に温度制御する方法
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反応最適温度より高い温度で加熱して、反応最適温度を通過する時間を確保する方法
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「高温ー>反応最適温度ー>高温」と温度制御を変える方法
などがあります。
最終的に、ちょっと、焦げ目のついた焼き芋を目指すのであれば、仕上げに高温加熱は欠かせません。
一方、これまでの、実験で、最も甘い焼き芋は、芋の周りにマルトースがべったりついています。食感は、ほとんど羊羹です。芋羊羹ではありません。この場合に、焦げ目をつけるとマルトースが硬くなってしまいます。実際に前回のシルクスートでは、蜜の部分が硬化して、食べられませんでした。したがって、甘さを追求して、羊羹食感を目指すのであれば、高温加熱は避けるべきと思われます。