5)サイズと位相差AF
5-1)位相差AF
パナソニックは、最近まで、位相差AFを採用しませんでした。
これは、パナソニックに限定しませんが、最近の日本企業の経営の意思決定には、合成性を欠くところがある気がします。
10年前には、一眼レフか、ミラーレスかという議論がありました。
CANONはお試しで、EF-MマウントとEOM Mを投入しましたが、AFは、使いものになりませんでした。EF-MマウントのAFは使えるようになったのは、Dual pixcelを搭載してからです。
NIKONは、位相差センサーを積んだNOKIN1を投入しました。NIKON1のAF性能は、一眼レフのフラグシップ並みでした。NIKONは、位相差センサーの能力を熟知していました。しかし、1インチのセンサーの画質は悪く、交換レンズもなかったので、NIKON1は撤退することになります。
SONYとFujifilmは、位相差センサーに取り組みました。
SONYはカメラの位相差センサーのAFの性能は、一眼レフを超えました。
フルサイズセンサーを積んだことも、追い風になりました。
Fujifilmは、AF性能の伸びが小さく、SONYほど伸びませんでした。
OMDSは、MFT規格のカメラとレンズを作っていましたが、一方では、フォーサーズの一眼レフも作っていました。
2013年に、OMDSは、位相差サンサーを積んだ、フラグシップ機EM1を出して、一眼レフから撤退します。このセンサーは、SONY製と言われています。
つまり、一眼レフから、ミラーレスへの流れを決定的に決めたのは、SONYが位相差センサーを使うことで、一眼レフのAFを骨董品にしてしまったことにあります。
この流れを理解すれば、コントラストAFに固執することは考えられません。
また、パナソニックのセンサーの調達先ははわかりませんが、画像センサーの調達先は、SONYとCANONが大きなシェアを持っています。このことから、この2社のAF性能が高いことが理解できます。AF性能競争も、無限に続くわけではいので、2、3年で、AF性能の差は気になるほどではなくなるとは思われます。
実際、NIKONとCANONが、一眼レフにこだわった理由には、ミラーレスのAF性能の差が改善されても、その差は気になるほどではないだろうと考えていたフシがあります。ミラーレスが出て来るまでの過去30年のAF性能の進歩は極めて緩やかでしたので、そう考えても当然とは思われます。
なお、一般には、静物を撮影する場合には、位相差AFより、コントラストAFの方が精度が高いと言われています。しかし、コントラストの弱い対象(例えば、花)を、撮影する場合には、静物でも位相差AFは必要です。こうした弱点を認識して改善する努力が欠けているという点で、コントラストAFの精度が高ければ、位相差AFは不要と言う発言には、同意できません。
5-2)小型化
OMDSが、フォーサーズを採用したときに、テレセントリック特性を重視すると、デジタルカメラのレンズは、フィルム時代の2倍の大きさになるので、小型センサーが有利になるといった主張がありました。
OMDSは、フォーサーズ規格は、小型化のために採用したのではないとしています。
また、想定した画像数の上限は、2000万画素(フルサイズで8000万画素)でした。
これは、大まかに見れば、当たっていると思われます。
APS-C用のFujifilmのレンズには定評がありますが、サイズはとても大きくなっていますので、「テレセントリック特性を重視すると、デジタルカメラのレンズは、フィルムの2倍の大きさになる」という主張は、間違っていなかったと思われます。
OMDSは、フォーサーズのカメラやレンズで、小型化を追求していません。
これは、MFTになっても、ブレていません。入門用のカメラも、極端に小さくはなっていません。
パナソニックは、MFTのカメラを出した時には、小型化を前面に出しました。
SONYも、ミラーレスのカメラを出した時には、小型化を前面に出しています。
CANONのEF-Mマウントも、APC-Sとしては、小型でした。
NOKIN1のカメラは、小型と中型がありましたが、メインは、小型でした。
こうしたことが重なって、ミラーレスは小型の入門者用カメラというイメージが形成され、欧米での販売が落ち込んだと言われています。
小型で、入門用というコンセプトを最後まで貫いたのは、CANONのEF-Mマウントです。
EF-Mマウントには、中級者用のカメラとレンズは本格的投入されませんでした。
EF-Mマウントのサイズは、SONYのEマウントをほぼ同じです。
CANONは、EF-Mマウントのフルサイズセンサーカメラを造りませんでした。
CANONは、EF-Mマウントのカメラで、大型化の原因となる手ブレ防止をつけませんでした。
これは、EF-Mマウントは、小型の入門者用というイメージを書き換えなかったためと思われます。
CANONは、EF-Mマウントを廃止して、RFマウントを追加しますが、これには、マウントイメージを書き換えることが難しかった点も原因になっていると思われます。
それにしても、他のメーカーがミラーレスに参入した2011年頃のパナソニックの小型化への傾倒は異常です。DMC-GMは、手元にありますが、欧米人が、「ミラーレスは小さすぎて使いにくいといった」という話も納得できます。
これだけ小さいカメラを出すのであれば、拡張ドックをつけて、ドックありなしで、サイズを選らんで利用するなど、工夫もできたはずだと思います。
MFTの1号機DMC-G1は、「既存の一眼カメラの特色・ミラーボックスを排除し、フランジバックをフォーサーズシステムの約半分にした事により、今まで不可能だったレベルの小型化及び薄型化が可能」を最大の特色としていました。
DMC-G1は同社のDMC-L10に比べ本体が約100gの軽量化していて、「世界最小・最軽量デジタル一眼」でした。
Gシリーズの全体のコンセプトはよくわかりません。
G1のコンセプトをみれば、Gシリーズは、「エントリータイプの需要に対応した、一眼ならではの高性能・高画質、小型・軽量、かんたん操作ができる機種」に見えめす。
2018年1月25日に、Gシリーズ初のプロユーザーをターゲットとする静止画フラグシップ機DC-G9G9 PRO)を出しています。しかし、この機種は、独立したシリーズではなく、Gシリーズに含まれます。
参考に、「MC-G1」、「DMC-GH1」、「DMC-GF1」、「DMC-GX1」、「DMC-GM」のシリーズの1号機のプレスリリースを掲載しますが、全て、「エントリータイプの小型、軽量、簡単操作」をマーケットにしています。
これでは、動画の有無以外に、シリーズをわける理由がありません。
これは、マーケット調査と製品コンセプトが対応していないことを示しています。
ミラーレスカメラは、小型、軽量だが、性能が悪く、操作がしにくい(オートモード以外が使いにくい)というイメージが欧米では定着したと言われています。
SONYとFujifilmについては、このイメージが払拭されていますが、MFTについては、未だ根強くあるようです。
とはいえ、参考に見るように、このイメージは、パナソニックが作り上げたものです。
OMDSは、ロイヤリティの高いユーザーがいますが、パナソニックにはいません。中級以上をターゲットにしたシリーズがないので、これは当然の帰結と思われます。
なお、パナソニィックは、フルサイズセンサーのカメラを出しましたが、シェアが変化するほどは売れていません。
動画を重視するといっていますが、これは、2009年のDMC-GH1の焼き直しです。
動画を重視するという主張には、弱点を潰していく発想がありません。
これでは、ロイヤリティの高いユーザーは生まれません。
OMDSの経営も盤石ではありませんが、ロイヤリティの高いユーザーがいれば、PENTAXのように、レンズがほぼ全てOEMだた、カメラ本体だけをつくるというビジネスで、最悪でもマウントは残ると思われます。
参考
パナソニックのDMC-G1のプレスリリースは以下です。(2008年9月12日)
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デジタル一眼市場はデジタルカメラの普及と共に、エントリータイプを中心に需要が拡大しています。また、それにともない、製品に対しては、一眼ならではの高性能・高画質とともに小型・軽量、そして、かんたん操作が求められています。
本製品は、マイクロフォーサーズシステム規格に準拠したマウントシステムを採用、従来の一眼レフカメラと異なるミラーレス構造により、今までのデジタル一眼レフでは難しかった大幅な小型化を実現。可動式液晶を搭載したレンズ交換式デジタルカメラとして世界最小・最軽量1の新世代デジタル一眼です。これによりコンパクトカメラ並みの操作感と一眼レフの高性能・高画質を両立させています。
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パナソニックのDMC-GH1のプレスリリースは以下です。(2009年3月25日)
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デジタル一眼カメラ市場は、エントリータイプを中心に需要が拡大しています。そして製品に対して一眼ならではの高性能・高画質とともにさらなる小型・軽量・カンタン操作が求められています。
当社は昨年10月にマイクロフォーサーズシステム規格に準した世界最小・最軽量のデジタル一眼カメラ「DMC-G1」を発売しました。
本製品は、G1の特長である小型・軽量、可動式液晶モニターとLVF(ライブビューファインダー)を自動切り替えする「Wライブビュー」、「おまかせiA」機能によるカンタン操作などの機能を基本に、ハイビジョン動画撮影機能を搭載したデジタル一眼カメラです。
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パナソニックのDMC-GF1のプレスリリースは以下です。(2009年9月2日)
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デジタル一眼カメラ市場は、エントリータイプを中心に需要が拡大しています。そして製品に対して一眼ならではの高性能・高画質とともにさらなる小型・軽量・カンタン操作が求められています。
GF1は、G1/GH1に比べ飛躍的な小型・軽量化を図り、より日常的にデジタル一眼を持ち歩き、撮影をお楽しみいただく撮影スタイルの提案を目的に開発いたしました。
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パナソニックのDMC-GX1のプレスリリースは以下です。(2011年11月8日)
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デジタル一眼カメラ市場は、コンパクトなミラーレス一眼が高い支持を得ています。またその中でも、初めて一眼カメラを購入し、簡単操作で一眼写真を手軽に楽しむエントリー層、写真撮影を趣味として本格的に楽しむ写真趣味層のユーザーが拡大しています。
本製品は、マイクロフォーサーズシステム規格に準拠したデジタル一眼カメラで、機動性が高い「小型、軽量」を特長とし、一眼カメラならではの高画質、写真趣味層のユーザーに求められるレスポンス、充実の撮影アシスト機能を高品位デザインに凝縮したフラットタイプのミラーレス一眼カメラです。
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パナソニックのDMC-GMのプレスリリース は以下です(2013年10月17日)
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パナソニック株式会社は、世界最小ボディに一眼の高画質性能を凝縮したミラーレス一眼カメラLUMIX GM(DMC-GM1K)を11月21日より発売します。
デジタル一眼カメラ市場は一眼カメラならではの高画質と多彩な表現力の向上、日常的に写真撮影を楽しむユーザーの増加を背景に需要が拡大しています。特に、ミラーレス一眼カメラは従来の一眼レフカメラにはない小型ボディ、見たままを撮影するライブビューカメラとしての操作性、スタイリッシュ性を備えた特長が支持されています。
本製品は、一眼カメラで(1)常に持ち運べる世界最小ボディ、(2)カメラを持つ喜びを体感できる上質感を重視した高品位デザイン、(3)撮影者の思いを豊かに表現する描写力、高感度高画質を実現、また、スマートフォンと連携して活用するWi-Fi®機能を搭載したマイクロフォーサーズミラーレス一眼カメラです。
当社が2008年にミラーレス一眼カメラを業界で初めて開発し5年が経過、デバイス技術の進化とあわせ性能・機能が著しく向上しました。本製品LUMIX GMは、一眼カメラとして画期的なサイズを実現したことで、一眼カメラがこれまでのように特別なものでなく、シーンを選ばず日常的に活躍する新たな一眼の世界を提案します。そして高画質、機動性、動画撮影機能との両立が可能な新世代一眼カメラとして新たなカメラ文化の創造を目指してまいります。
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引用文献
デジタルカメラ LUMIX DMC-G1K/G1W/G1を発売
https://news.panasonic.com/jp/press/jn080912-1
デジタルカメラLUMIXDMC-GH1Kを発売
https://news.panasonic.com/jp/press/jn090325-1
デジタルカメラLUMIXDMC-GF1を発売
https://news.panasonic.com/jp/press/jn090902-1