MFT(マイクロフォーサーズ)とは何か(7)はじまりとおわり

7)はじまりとおわり

 

7-1)はじまり

 

MFTのはじまりは、言うまでもなく、フォーサーズにあります。

 

フォーサーズの前身は、フィルムカメラでした。

 

フィルムカメラの時代は、レンズの性能がカメラの性能でした。

 

オリンパス・ペンは、24×18mm(ハーフ)判コンパクトカメラでベストセラーになりました。

 

オリンパス一眼レフカメラは、ライカ判であって、ハーフ版はありません。

 

デジタルになって、フォーサーズ(17.3mm×13mm)と、ハーフ版よりも、小さな規格を提案されました。

 

APS-Cは、バラツキがありますが、23.7×15.6mm前後です。

 

つまり、ハーフサイズより小さいですが、概ねハーフサイズと言えます。

 

デジタル一眼レフになって、フルサイズのモデルを供給できたのは、CANONだけでした。

 

NIKONは、APS-Cが標準でした。

 

フォーサーズの第1号機オリンパス E-1は2003年10月に発売されています。

 

この頃、フルサイズセンサーは、非常に高価で、普及できるとは考えられていませんでした。

 

このころのデジタル一眼レフの解説本では、APS-Cが断らずに標準になった表記が見られます。

 

フォーサーズ規格では、カメラの性能は、レンズの性能できまるという伝統的な価値観が生きていたと思われます。

 

レンズの性能は、センサーとレンズの相対的な大きさで決まります。

 

センサーが小さくて、レンズが大きくなれば、レンズの性能は良くなります。

 

フォーサーズ規格は、レンズ性能に限れば、有利な規格です。

 

しかし、デジタルカメラの性能は、レンズの性能ではなくなります。



7-2)間奏曲



レンズの設計がデジタル化されます。

 

最終的には、試作を繰り返すと思われますが、前段のプロセスの自由度があがり、コストダウンが進みました。

 

センサーが小さくて、レンズが大きくなれば、レンズの性能は良くなります。

 

特殊ガラスを入れれば、この法則に、多少の修正は可能です。

 

デジタル補正を使えば、この法則に、多少の修正は可能です。

 

しかし、余裕をもったサイズのレンズが設計できるのであれば、無理に小型のレンズにするメリットはありません。



特殊レンズの原価が劇的に下がります。

 

レンズは、モールド成形できるようになり、非球面レンズも容易に作れるようになりました。

 

カメラメーカーとレンズメーカーが、分離します。シグマとタムロンは、カメラメーカーブランドのレンズをOEMで作っています。韓国と中国のレンズメーカーのレンズの性能が上がっています。

 

この2つを見ると、2010年頃には、レンズの製造は、特殊な技術では亡くなったと思われます。

 

 

レンズのコモディティ化です。問題は、レンズのコストの大部分を設計・試作費用が占めるようになったことです。レンズの販売本数が見込めれば、安い価格を付けも黒字になります。レンズの販売本数が見込めなければ、高い価格を付けも黒字になります。

 

価格が高いと、販売本数は減ってしまいます。

 カメラマーケットの縮小が、この傾向に拍車をかけます。

 CANONのEF-Mは、見込み販売レンズ本数を多く見込んで、価格を安く設定しています。高価なレンズは大型で、明るくボケが期待できますが、ボケを除けば、EF-Mのレンズには、大きな弱点はありません。

 

カメラのキットレンズの性能が劇的に上がります。

 

2010年以降も、新しいレンズが設計・製造・販売されています。

 

これらのレンズは、デジタル補正を前提とした小型化が図られています。

 

センサー性能の向上を前提して、ボケを必要としない場合には、暗いが、小型のレンズが設計されています。

 

こうした点を除いてみれば、2010年までのレンズと比べて、大きな進歩はありません。

 

つまり、レンズの設計・製造は、特殊な技術ではなくなり、大きな技術的な進歩はなくなっています。

 

これは、フィルム時代のレンズと比較すれば、明らかです。

 

MTF曲線を見てもわかります。

 

レンズのデジタル補正は、レンズの設計に変更を求めます。

 

今まで、デジタル補正は、歪補正と色収差補正が主体でしたが、最近は、ノイズリダクションや、部分露光の変更などにも及んでいます。

 

SONYFujifilmは、マウント情報を公開しています。

 

この場合のマウント情報は、自動しぼり、AF等が中心と思われますが、今後は、ノイズリダクションや、部分露光の変更にも及んでくると思われます。

 

手ブレ防止も、マウント情報に含まれているかも知れません。

 

最近のデジタルカメラの性能は、レンズ、センサー、画像処理の3点にあると言われています。

 

MFTは、公開規格であると言われますが、レンズ補正データは公開されていません。

 

手ブレ防止規格も公開されていません。

 

スタジオ撮影では、カメラとレンズの大きさは問題になりませんので、MFTを選ぶ理由はありません。

 

現在、はっきりしていることは、MFTは、オールラウンドな規格ではないということです。

 

フルサイズに比べて、小型軽量であること、レンズの性能が良いことは確かですが、小型は、スマホと競合します。レンズの性能の良さは、画像センサーと画像処理で相殺されます。

 

もちろん、比較優位のフィールドはありますが、万能ではないことを理解すべきです。



7-3)おわり

 

2023年現在で、ミラーレスカメラで、利益を出しているのは、CANONSONYだけです。

 

PENTAXのように、レンズをもっているロイヤルティの高いユーザーがいれば、ぎりぎり赤字にならない範囲でカメラのボディをつくって、レンズをOEMで埋めることはできます。

 

これは、メンテナンスビジネスです。

 

メンテナンスビジネスを除けば、ビジネスになっているのは、CANONSONYだけです。

 

これは帰納法です。

 

全く、新しい技術で、マーケットがかわる可能性はあります。

 

カメラとレンズが、コモディティになれば、手ブレ防止を拡張したジンバルの性能がカメラの価値を左右するかも知れません。

 

CANONSONYだけが、生き残るとは限りません。

 

技術的なブレークスルーは、主なメーカーの入れ替わりになります。

 

ミノルタが、AFで市場シェアをとった時代もあります。

 

最近のSONYも位相差センサーのAFで、市場シェアをとっています。

 

画像認識はドングリの背比べですが、どこかのメーカーが、抜けだすかも知れません。

 

とはいえ、レンズ性能と、画像センサー性能の進歩は、少なくなっています。

 

競争は、画像処理にうつっています。

 

ここには、スマホという強い競合相手がいます。

 

スマホメーカーの子会社になったカメラメーカーが、先頭になる可能性があります。

 

画像処理の規格を公開して、画像処理プログラムをオープンソースや、製作販売してもらう方法もあります。マジック・ランタンよりは、良いと思います。

 

画像処理がメインになるということは、センサーサイズは、副次的な問題になることを意味してます。

 

一方、過去の資産を活用したビジネスにかぎれば、カメラのマウントの物語は既に終っていると思います。