初めてのdarktable3.6(5)

被写体のグレースケール

18%グレーを標準にして、露光が決まるとテキストには書いてあります。

前回は、同じ被写体に対して、露光を変化させたときに、どのように写るかという点をチェックしました。

今回は、テキストにあるように、被写体のグレーレベルで、自動露出で、写真がどのように変化するかをチェックしてみます。フイルム時代には、露光を変えたり、被写体のグレースケールが変化したときに、写り方がどのように変化するかを試してみるには、実際に現像して、更に印画紙に焼き付けする必要がありましたので、とても簡単に試してみる訳にはいかず、テキストにかかれていたことをうのみにしていました。しかし、デジタルカメラであれば、カメラ内現像のJpegファイルであれば、シャッターを押せばすぐにできますので、簡単に実験してみることができます。

さて、被写体の条件ですが、背景を、白、ベージュ(グレーの代わり)、黒にして、その背景の上に同じ物体をおいて写り方をテストしてみることにしました。なお、ライティングは天井の蛍光灯と左に置いたLED乾電池のランタンです。三脚を使っていないので、厳密ではありませんが、画角とライティングの条件は同じにしています。なお、絞りとISOはそろえて、違いがシャッター速度だけに出るようにしたつもりだったのですが、撮影後に、ISOがオートになっていて、変化していることに気づきました。大勢に影響はないので、そのままにしています。画像は、カメラ内現像のJpegです。

写真1が白い背景、写真2がベージュ(グレーの代替)の背景、写真3が黒い背景で撮影したものです。被写体は、ハーブの瓶ですが、明るさが、黒、ベージュ、白の順になります。18%グレーに近いのはベージュの背景の写真2で、これが見た目の瓶の明るさに近くなります。

一般の撮影法のテキストは、18%グレーが目で見た明るさに等しくなり、白いものは、暗く写り、黒いものは明るく写る傾向があるとされています。写真1、2、3を見る限り、それは正しいようです。

図1は、今まで説明に使ったダイナミックレンジの図でで、一番左が実世界で22EVあります。その次が、RAW画像で、(実際には、センサー性能で値が変わりますが、)ここでは、8EVと仮定しています。今までは、グラデーションのバーでダイナミックレンジを示していましたが、ここでは、ダイナミックレンジを表す四角を追加してあります。縦に、バーを書いた場合には、撮影から現像に伴う処理は、左から右へのデータの変換であらわされます。

しかし、この表記は、ヒストグラムや、ダイナミックレンジマッピングの表記と異なるので、これからは、表示を、図1の右のように、90度回転して表示することにします。撮影から現像に伴う処理は下から、上に向けたデータの変換で表します。

さて、この表記法を使って、写真1、2、3の露光の状態を図2、3、4に示しました。

図3が、背景がベージュ(グレー)の場合を表します。一番下のバーは、実世界です。その上のヒストグラムは、実世界のダイナミックレンジの幅に対応したデータの頻度を表します。グレーが中心の画像では、頻度のピークと平均はほぼ、中央にあります。Jpegの画像のグレースケールの平均は、図には書いてありませんが、8EVの中央(18%)にあります(注1)。つまり、Jpegの平均と実世界の平均が一致します。

図2は、背景が白の場合です。この場合には、実世界のヒストグラムは、白い(明るい)方に偏っていて、平均値は右寄りになります。この平均値は、図3のグレーの平均値より、大きいのですが、自動露光では、平均値が同じとして処理されますので、実際より暗く写ります。

図4は、図2の逆になります。

まとめますと、図2、3、4を書くと、どうして、自動露光で、明るさがずれるかが理解できます。

写真1は被写体が実際より、暗くなっています。逆に、写真3では、被写体が実際より、明るくなっています。当然、補正したくなりますが、その話は次回にします。

 

注1

実際には、対数スケールを使っていますが、図を描きにくいので、線形スケールにしています。

 

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写真1 白い背景 1/80sec f5.6 ISO800

 

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写真2 ベージュ(グレー)の背景 1/60sec f5.6 ISO1600

 

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写真3 黒い背景 1/25sec f5.6 ISO1600

 

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図1 被写体のダイナミックレンジと露光

 

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図2 白い被写体のダイナミックレンジと露光

 

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図3 ベージュ(グレー)の被写体のダイナミックレンジと露光

 

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図4 黒い被写体のダイナミックレンジと露光