露光の説明の課題

darktable3.4の解説の続きを書こうと思っていたのですが、新年早々、つまずいてしまいました。

マニュルと解説の課題

カメラ付属のマニュアルを含めて、カメラの解説には、多くの問題点が存在します。マニュアルや解説を読んでもよく理解できないことが多いのですが、その大きな原因に、執筆者がよくわかっていないことがあげられます。これは何も、執筆者が不勉強だと言っているわけではありません。カメラの操作法は、フィルム時代に出来上がります。フィルム時代にプロだったカメラマンは、その時代の操作法に熟練しています。カメラメーカーは、まず、熟練したプロのカメラマンに使ってもらおうとして、フィルム時代のカメラの操作方法を踏襲したカメラを作り、フイルムに準じた説明をします。混乱の原因は、この時に、生まれたと思います。例えば、フィルム時代では、1ロール撮り終わるまで、ISOを変えることはできません。しかし、デジタルカメラであれば、1枚ごとにISOを変えることができます。しかし、ISOを変えると、カメラの中で何が変わるのかについては、カメラのマニュアルには何も書いてありません。キャノンや富士フィルムのデジカメでは、1枚の画像に、ISOを変えた2枚または3枚の画像を合成して、ダイナミックレンジを広げているようです。しかし、ISOを変えるとなにが変わるかはわかりません。また、合成された画像がJpegであればわかりますが、RAWでは、合成の影響がデータにどのように反映されているのかがわかりません。あるいは、暗所の撮影では、ISO100か、ISO200で長時間露光するというフィルム時代の方法を踏襲するべきか、ISO3200くらいまでなら、ノイズが少ないので、シャッター速度を気にしないように、ISOをあげるべきか、あるいは、高ISOでマルチショットで撮影して、後で、画像合成するのがよいのかがわかりません。ISO200で、三脚を持ち出して撮影すれば、それなりのきれいな写真は撮れますが、折角、高ISOでノイズの少ないセンサーを積んだ新しい カメラを買っても、高ISOのショットを封印するのであれば、買い替えなければよかったと思う人も出てくると思われます。こうした疑問に応えるには、デジタルカメラのISOのメカニズムの説明が必須なのですが、マニュアルには記載がありません。

自動露光の問題

さて、今回、darktableの解説で、躓いたのは、自動露光の問題です。

たとえば、wikiの「露出 (写真) 」には、次のように書かれています。


自動露出の限界

自動露出はカメラ内のTTL(Through The Lens)露出計の測定によって適正露出を割り出している。TTL露出計は反射光式、すなわち一旦ものに当たって反射した光を測定するタイプの露出計である。この露出計は反射率18%を適正露出の基準としている。18%グレーの反射板を自動露出で撮影すると、常に適正露出となるように設計されている。この数字は色々な反射率を持つ色の混ざった被写体の平均的な反射率が18%であるところからきている。

しかし、被写体の反射率が18%からかけ離れているときはどうであろうか?例えばの反射率は例えばの場合60%から72%ぐらいである。このような被写体に対すると、露出計は光量が実際よりも多い(反射率72%と仮定すると18%の4倍=2EV分の光量)と判断し、実際よりも暗く写そうとする。その結果、自動露出で白っぽいものを撮ると露出アンダーとなる。


これは、典型的な説明ですが、「18%グレーの反射板を自動露出で撮影すると、常に適正露出となるように設計」という表現は、よく使われる説明ですが、意味不明です。「露出計は光量が実際よりも多い(反射率72%と仮定すると18%の4倍=2EV分の光量)と判断し、実際よりも暗く写そうとする。」の方がよくわかります。露出計がグレーを見ているわけではなく、光の量を見ているだけのはずです。フィルムの場合には、ISOに応じた適正な光の量があり、それより、ネガまたは、印画紙は、光量が、過大では白くなり、過少では黒くなります。シーンの光量が多い場合には、絞るまたは、シャッター速度を短くして、フィルムに入る光の量を減らすはずです。ただし、古いカメラは、自動調整がおバカさん(メカニック)なので十分に調整できないと思われます。マニュアルには、補正の方法の改善として、部分測光などが書かれていますが、人間の目の光に対する応答が十分に補正されているのでしょうか。

なお、TTL露出計のwikiの説明は以下です。

 


デジタルカメラ デジタルカメラにおいて、撮影用に使われる撮像素子そのものを使って露出を決定する方式のものが存在する。デジタル一眼レフカメラなど、旧来のカメラと同様なTTL露出計を用いているものも存在するが、コンパクトデジタルカメラでは撮像素子を用いる方式が主流である。


しかし、WEBを見ていたら、現在のデジカメにはTTL露出計はついていないよという説明もありました。こちらが、普通と思います。であれば、露光の説明にTTL露出計は入れて、欲しくないです。

また、露出 (写真)には以下の、説明がありました。


白とびと黒つぶれ

特定のフィルムや撮像素子において、白とびと黒つぶれが起こる限界の露出の幅の大きさをラティチュードあるいはダイナミックレンジという(フィルムではラティチュード、デジタルではダイナミックレンジという場合が多い)。ラティチュード、あるいはダイナミックレンジの幅が広いほど白とび・黒つぶれは起こりにくい。

ネガフィルムはダイナミックレンジが広い(10~11EV)。これに比べてリバーサルフィルムやデジタルカメラは狭く(5~6EV)、白とび・黒つぶれを起こしやすい。


デジタルカメラは狭く(5~6EV)」の表記にびっくりです。また、(10~11EV)はモノクロフィルムで、カラーフィルムは、より小さいと思います。

さて、問題は、筆者の理解は、現在の自動露光システムはフィルム時代を踏襲して、次のようにできていると考えているのですが、確認できなかったということです。

  • 出力の画像(フィルム時代であれば、印画紙の画像、デジタルカメラであれば、モニターの画像(注1))の最適な画像は、18%グレーになることである。

  • 入力は、フイルムに合わせた光の量を設定する。そこで、得られたフレームの光(デジカメであれば、センサーの信号強度)の濃淡の平均を出力画像の濃淡の平均に合わせる。こうすると、結果的に、18%グレーに見える画像ができる。

もっと、かみ砕いていえば、図1の問題です。図1は前の図とほぼ同じですが、説明しやすいように、バーの上にL、C、Rのラベルを付けた点と、Lのバーの長さを少し長くした点が違います。バーを長くしたのは、次の2点を表現するためです。

  • フィルムの場合には、ダイナミックレンジが8EVでも、端で、感度が徐々に悪くなるので、白飛びと黒飛びの部分にグラデーションができ、目立ちにくい。

  • デジタルカメラでもセンサーサイズが1インチ以上の機種では、8EVを越えるダイナミックレンジがある。

図1で、左の実世界の22EVに対して、自動露出をかけると、赤い四角がどこに来るのかを説明しようとしてつまずいたわけです。

今のところ、上記の答えでよいと思うのですが、確認できていないので自信がありません。

間違いがわかれば、追って、訂正したいと思います。

注1:

カメラのモニターにしても、パソコンのモニターにしても、モニターの性能が、画像のチェックの品質を大きく左右します。しかし、この点については、マニュアルはほとんど触れていません。

  • 露出 (写真) wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%B2%E5%87%BA_(%E5%86%99%E7%9C%9F)#%E9%9C%B2%E5%87%BA%E8%A3%9C%E6%AD%A3

https://ja.wikipedia.org/wiki/TTL%E9%9C%B2%E5%87%BA%E8%A8%88

 

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図1 一般的な表示参照ワークフロー