「みずほ銀行」のシステム障害の疑問

みずほ銀行のシステム障害について、いくつか情報が出てきました。

ソースによって、ここが悪かったのではないかという推測記事がほとんどです。

2021/09/21の産経新聞は次の様につたえています。


勧銀は富士通製のメインフレーム(大型コンピュータ)の『STEPS』を'88年に導入していた。また興銀は日立製のシステム『C-base』を、富士銀行は日本IBM製の『TOP』をそれぞれ持っていた。みずほは旧3行が使っていた複数の異なるシステムを生き残らせたまま、「ゲートウェイ・システム」と呼ばれる中継プログラムでそれらを繋ぎ合わせるという方針を打ち出した。

勧銀のシステムの一部に、'71年に第一銀行と日本勧業銀行が合併した時に作られたとみられる部分が残っていた。この部分は、'80年代まで盛んに使われていたプログラム言語「COBOL」で書かれていた。当時ですら、わかるエンジニアが現場にいなかった。

旧第一勧業、旧富士、旧日本興業の3行が経営統合して誕生したみずほは主導権争いが続いたとされ、旧行のシステムを併存させる形で平成14年4月に開業。同月と23年3月に大規模なシステム障害を招いた。

これを教訓に4000億円超を投じて新たなシステム「MINORI(みのり)」を令和元年7月に全面稼働させたが、ここでも旧3行の縄張り意識が影を落とす。旧3行が利用していた富士通、日本IBM、日立製作所に加え、NTTデータも携わり、他行に比べて複雑な構造になった。


2021/09/17は、週刊現代は次の様に伝えています。


全面改修を経たはずのMINORIのシステム構成は、不自然なほど複雑怪奇だ。普通預金を司る機器は日本IBMが作るが、その上で走るソフトは富士通が作る。他行との接続を司るシステムは、機器を日立と富士通が作ってソフトをNTTデータが作る。各業務のシステムをベンダーが分割して作り、さながら怪物「キメラ」のようになっている。


原因は、COBOLで書いたことであるとか、1970代のCOBOLのソースを更新できていないことであるという説明がなされています。

しかし、原因は、設計ミスと思います。汎用機の時代に非同期の通信ソフトを書いたことがありますが、1度でやめました。理由は簡単です。

送信側のソフトを作成する時間を1単位、受信側のソフトを作成する時間も1単位だったとします。通信を含まないソフトではあれば、2単位の時間で、開発は終了です。しかし、通信ソフトは、実際につないで、うまくいかない場合には、チューニングが必要です。このチューニングに、うまくいっても1単位程度の時間がかかります。

ここで注目するのは、旧3銀のシステムは、IBM、日立、富士通だと言う点です。この3社の汎用機のOSはIBM系です。ただし、スパイ事件でクレームがついたので、完全互換ではありません。IBMはネットワーク通信のノウハウを持っていて、それは、OSIの7層モデルとして、標準化されています。

標準化されてとはいえ、TCI/IPのように、異機種間の接続を繰り返していませんので、完全互換ではないはずです。

「旧3行が使っていた複数の異なるシステムを生き残らせたまま、『ゲートウェイ・システム』と呼ばれる中継プログラムでそれらを繋ぎ合わせるという方針」がある程度使えたのは、通信規格の共通性があったためと思われます。

この方法では、クロスの利用はできません。送信側が、ABC3つあり、受信側も、ABC3つあると、組み合わせは3x3=9通りになりますので、デバッグやチューニングには9倍の時間がかかります。

そこで、「普通預金を司る機器は日本IBMが作るが、その上で走るソフトは富士通が作る。他行との接続を司るシステムは、機器を日立と富士通が作ってソフトをNTTデータが作る」という解決方法をさがしたと思われます。とはいっても、ハードは、日本IBM、日立、富士通の3社が作っていますから、恐らく、組み合わせが多すぎて、全てのケースで、テストできなかったのではないかと推測します。

みずほ銀行は、障害の原因を特定できないといっていますので、これは、デバッグできないことを意味します。どんなに、複雑なシステムでも、部分に分けてデバッグできれば、問題のある個所にたどり着くことは可能です。これができないということは、バグは、分割できない通信部分で発生していることになります。TCP/IPであれば、パケット単位なので、通信も分割でき、デバッグは容易です。専用回線では、同期通信を使っていると思いますので、切り離しは、容易ではありません。

以上は、推測ですが、誰もいっていないようなので、書いてみました。

  • これから「みずほ銀行」に起こる、ヤバすぎる現実…システムの「爆弾」を誰も処理できない 2021/09/17 週刊現代

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87384?utm_source=yahoonews&utm_medium=related&utm_campaign=link&utm_content=related

  • 開発担当は異動…みずほ派閥争いでシステム複雑化 2021/09/21 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/5acda4a1d8d580ed1928590063eec878b402b831

 

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