組織よりアプリをつくるべき~株式の勉強(10)

昨年、デジタル庁ができました。これからは、こども庁をつくるとか、あるいは、必要に応じて他の組織をつくるとかいう話も出てきています。

つまり、問題があれば、組織をつくって、そこに予算をつける訳です。 官僚組織では、業績は、予算の獲得または、組織の拡充であって問題の解決ではありません。ワクチンを手配しても、業績にならないのです。

同様に、官僚組織だけでなく、政治家も、地元や支援団体に、補助金を回すことが、業績だと思っている訳です。

筆者は、そのことが良いと言っている訳でなく、本質的には、この部分に、メスを入れなければ、問題解決はできないと思っています。

筆者は、官僚組織や、政治の素人ですが、世の中には、官僚組織や政治制度を専門にしている人もいます。そうした専門家は、官僚組織の問題をどう考えているのでしょうか。不思議に思います。

さて、話題が脱線しました。今回の話題は、組織とアプリの関係です。

例えば、マイクロソフトという会社組織は、WindowsというOSをつくって売っています。あるいは、ワード、エクセルといったアプリをつくって売っています。

OSや、アプリの性能が悪ければ、会社組織はつぶれてしまいます。

IBMは、過去には、OS2というOSやシンフォニーという総合アプリを開発していたことがありますが、現在では、撤退しています。

IT業界では、このような場合、IBMは良い会社だけれど、たまたまアプリの性能が悪かったとはいいません。IBMアプリ開発部門は、お馬鹿で、マイクロソフトに勝てなかったから、淘汰されたと考えます。

このように書いた文字を読んで、「何を当たり前のことを言っているのだ。馬鹿馬鹿しいにも程がある」と感じるようであれば、読者は、常識の持ち主です。

M銀行が、ネットワークシステムのアプリを開発します。そこで、バグが出て、通信障害が出て、取引が出来なくなります。このような場合には、IT業界は、M銀行は、お馬鹿組織だと考えます。できの悪い労働者は、アプリに置き換えればいいのにねと思う訳です。

官僚組織は、予算の獲得が業績になると言いました。獲得予算額が業績を表しているというのは、事実ではありませんが、官僚組織は、そのように思っています。

2020年の自動車の販売台数は、テスラが50万台、トヨタは1000万台を超えています。テスラはごく最近まで利益が出ていませんが、トヨタは年間2兆円超の利益を上げています。 2021年7月には、テスラの時価評価額は、トヨタを超えました。 2021年11月15日時点で、テスラの時価評価額は、118兆円で、トヨタの34兆円の3.4倍まで開きました。

予算に相当する売上で見れば、トヨタはテスラに圧勝しています。しかし、時価評価額は、逆転しています。その理由は、テスラのアプリの性能が圧倒的に良いからです。株価は、将来見込まれる利益を反映しますので、アプリの性能のよいテスラに比べて、アプリのしょぼいトヨタは、評価額が下がります。

テスラの「Model S」には、低価格モデルの「Model S 60」と高価格モデルの「Model S 75」があります。低価格モデルのバッテリーの容量は、高価格モデルのそれより小さいです。

「Model S 60」を購入したユーザーも、自動車を購入後、Wi-Fiに接続してアップグレードのボタンを押し、9000ドル払えば、「Model S 75」にアップグレードできます。

バッテリーと同様に、ナビ、暖房シート、より高度な自動運転も、アップグレードできます。

筆者は、トヨタの自動車に載っていますが、ナビの地図は古くなって、使い物になりません。地図をアップグレードするには、新しい地図の入ったSDカードを有償で取り寄せる必要があります。実際に試してみると、トヨタの純正ナビよりも、Googleマップの方がはるかに地図データが詳細で、かつルート選択も的確なので、SDカードを購入する予定はありません。

アプリの性能をみれば、どちらがお馬鹿組織かわかります。株価はその事実を反映しています。

コロナウイルスのアプリは、COCOAもワクチン管理も惨憺たるものです。これは、アプリの開発者が無能だったと考えたいのかもしれませんが、IT業界では、アプリがダメなことは、組織がお馬鹿であるエビデンスだと考えます。これは、冗談ではなく、お馬鹿な会社は、すぐにつぶれてしまうので、本気モードです。

総務省が所管する新年度令和4年度予算案の具体的な使いみちを記した支出項目別の「各目明細書」に人数の集計や組織名の記述などにミスが13ヶ所もあることが野党からの指摘で発覚したそうです。金子大臣は「原因は入力ミスや確認作業を怠っていたこと」と説明しています。

ほかの複数の省庁でもミスが見つかったそうです。

自民党の茂木幹事長は記者会見で「人間のすることなので100%間違いがないというのは難しいかもしれないが、二重にも三重にもしっかりチェックする態勢を確立してほしい」と述べたそうです。

人数の集計ミスは、アプリであれば、間違えません。ここには、依然として、人が作業するというとんでもない前提があります。

問題解決は、組織をつくることではありません。問題解決のためのアプリをつくることです。ここをはき違え、人間が「二重にも三重にもしっかりチェック」するようになれば、極限まで、労働生産性が落ちてしまいます。