絶望の国のエクソダス

将来展望(Strategic Plan)のない絶望

失われた30年からの脱却についても、ライフスタイル(=産業構造+雇用構造)を変える必要があります。そして、これは、社会システム(生活のエコシステム)の交代になりますので、既に申し上げているように、現在のエコシステムの改善では、乗り切ることができません。こうした問題対処には、欧米は、「Situation ReportとStrategic Plan」をつくります。つまり、次の手順を踏みます。

現状分析=>問題点の抽出=>解決策の提案

解決策の提案は、問題抽出後すぐにできるものもありますが、直ぐに、答の出ないものについては、別途、Strategic Planを提出します。Strategic Planは1つのこともありますし、別々のグループから複数だされることもあります。ポイントを押さえておかなければ、いけないことは、以上の手続きは、民主主義の一部になっていることです。民主主義では、問題点を共有して、協力して問題を解決する必要があります。現状認識や問題点に対する理解が人によって異なっていた場合には、民主的な手順での協力が得られませんので、問題が解決できません。

国連などの国際機関は、施策の実行予算をほとんど持たないので、「Situation ReportとStrategic Plan」を作ることが多くなります。これに対して、ある日本人専門家は、国連は、会議ばかりしていて、口が多いわりに、少しも仕事をしないという意見をいっていました。しかし、筆者は、この意見は、間違っていると思います。日本では、往々にして、「口を出す前に、実行して見ろ」という意見が出ることがありますが、これは、システムアプローチの対極にある刹那主義です。刹那主義の先には絶望しかありません。ヴィクトール・E・フランクが「夜と霧」で書いたように、人間は、希望があれば、逆境でも生き延びられます。将来へのStrategic Plan(将来展望)を無視することは自殺行為です。

コロナ対策でも、温室効果ガスの削減でも、少子高齢化でも、(いくらでもあとが続くので省略しますが)、

現状分析=>問題点の抽出=>解決策の提案

がなされていません。そこにあるのは刹那主義です。流行に乗り遅れるなというムードだけです。

失われた30年は、取返しのつかない社会変化を引き起こしました。

絶望の国のエクソダス

希望の国エクソダス」は、1998年から2000年にかけて雑誌『文藝春秋』で連載された村上龍の小説です。これは、フィクションで、現在社会に絶望した約80万人の中学生達が日本を脱出する話です。「絶望の国のエクソダス」は、フィクションではなく、実際に、若者に起こった脱出劇の実話です。話は、大学入学試験です。1980年代の入学試験では、理系の優秀な学生は、医学部にいくか、東京大学か、京都大学の医学部以外の理系の学部を目指していました。このころの東京大学か、京都大学の医学部以外の理系学部の足切り偏差値は、旧帝大の医学部の偏差値よりは、低かったですが、地方大学の医学部よりは高かったです。2020年現在、東京大学か、京都大学の医学部以外の理系学部の足切り偏差値は、地方大学の医学部より低くなっています。つまり、優秀な理系の学生は、医者になる以外の将来展望を描けなくなっています。優秀な理系の学生は、医者という職種にエクソダスしてしまっています。医学が大事でないというつもりはありませんが、経済学のフレームで考えれば、GDPを稼ぎ出すのは、医者ではなく、他の産業です。例えば、医学系であれば、開業医ではなく、新薬を作ったり、手術用ロボットを作ったり、コロナで言えば、ワクチンをつくるような産業です。最近のGDPに占めるシェアの増加率をみれば、IT業界を引っ張っていく人材が、国を豊かにすることに寄与します。しかし、東京大学か、京都大学の医学部以外の理系の学部を優秀な成績で卒業しても、給与は、新卒横並びで、非常に安く、医者には及びません。結局、日本の産業を支えるべき人材は、医学部に流れてしまい、IT業界も、サービス業も、製造業も、世界の競争についていける人材がほとんど枯渇している状況になってしまいました。もちろん、偏差値で測れないものもあります。例外もたくさんあります。しかし、大局的に見れば、受験は、長期的に目標を設けて、自分をレベルアップする手順ですから、人材が、日本の基幹産業から、エクソダスしてしまったと言えます。

将来展望(Strategic Plan)があれば、チャレンジした人材も出たと思いますが、将来展望のない絶望がこの国を蝕んだと言えます。

誰とは言いませんが、コロナや、産業構造が行き詰まっている中で、将来展望(Strategic Plan)を論ずる識者がいても、不思議ではないのですが、不気味な沈黙が日本を覆っています。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%8C%E6%9C%9B%E3%81%AE%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%83%80%E3%82%B9

 

古いNEFファイルとdarktable

拡張子が、NEFの画像ファイルは、ニコンのRAW形式です。darktableは、このNEFファイルの一部の古いファイルを、サポートしていませんので、読み込むとガイコツマークが出てしまいます。データは、2004年10月発売のCoolpix E8400(800万画素)でつくったもので、中古市場でも、既に、買取り対象外になっています。ですから、99%の人には、どうでも良い情報だと思います。拡張子がNEFの古い画像ファイルが、darktableで読めなかった場合にのみ意味のある情報です

実は、筆者は、E8400 の画像ファイルフォーマットについて、勘違いをしていました。

  • もとの思い込み

RAWデータは16ビットTIF、表示印刷用データはJpeg

  • 実際のフォーマット

RAWデータはNEF、表示印刷用データはHighが、8ビットTIF、それ以外はJpeg

このカメラは、RAW では使っていなかった(当時は、RAW現像ソフトがなかった)ので、残っている画像は、8ビットTIFかJpegになります。今回は、darktableでの処理のテストのために、RAWで保存してみました。RAW形式が、現像できるかテストしてみたのです。(本当はTIFのテストをするつもりで、途中で、勘違いに気づいたのです。)その結果、古いNEFファイルは、darktableでは読みこめないことがわかりました。

 

さて、古いNEFファイルの処理には2つ方法があります。

  1. NikonのRAW現像ソフトCapture NX-Dをつかう。

  2. アドビのコンバータで、一度、DNGに変換する。

順に説明します。

NikonのRAW現像ソフトCapture NX-Dをつかう

NX-Dでは、TIF(8ビット、16ビット)または、Jpegに変換できます。

写真1は、16ビットTIFに変換して、darktableに読み込んだものです。実は、この古いNEFファイルは、NX-Dで読めますが、理由は不明ですが、編集がほとんどできません。なので、読み込んだそのままで、TIFに変換しました。

TIFの画像編集に使ったのは、次のモジュールだけです。他は、うまく使えませんでした。

  • 露光

  • コントラスト 輝度 飽和度

  • シャドウとハイライト

  • カラーコレクション

写真2が、編集後のTIFファイルです。あまり、画像が改善されていません。

写真3が、NX-Dで、Jpegに変換した画像を、darktableで編集したものです。こちらの方が、写真2よりだいぶましになっています。

つまり、理由は不明ですが、TIF経由より、Jpeg経由の方がベターでした。

アドビのコンバータで、一度、DNGに変換する

写真4は、アドビのコンバータで、一度、DNGに変換した後で、darktableで編集したものです。問題なく、編集できています。

筆者は、古い写真は、RAWでは、保存していなかったので、darktableの恩恵はありません

古いRAWファイルが、今回のように読み込めない場合には、アドビのコンバータをつかってDNGに使うと、メーカーのRAW現像ソフトとは比べ物にならないほど、画像が改善されることがあります。

 

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写真1 TIFファイル

 

 

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写真2 修正TIFファイル

 

 

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写真3 Jpeg編集後

 

 

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写真4 RAW現像

 

超小型EV「コムス」Coms~つくば市とその周辺の風景写真案内(327)

超小型EV「コムス」Coms

つくば市内で、超小型EV「コムス」が走っていてので、写真を撮りました。フロントガラス越し写真ですが、掲載します。それから、超小型EVについても、少し調べてみした。

超小型EV(ミニカー)

最初に、wikiを使って、ミニカーを整理しておきます。以下、引用です。


ミニカーとは、日本における超小型自動車の規格の一つで、道路交通法において総排気量20ccを超え50cc以下又は定格出力0.25kWを超え0.6kW以下の原動機を有する普通自動車をいう。道路運送車両法においては自動車でなく原動機付自転車として扱われる。運転には普通自動車以上の運転免許が必要である。乗車人員は1人、積載量は30kg以下に制限されるが、同法上は「原動機付自転車」ではないことから、二段階右折やヘルメット着用の義務はなく、法定速度は60km/hである。 原動機付自転車なので、自動車専用道路と高速自動車国道を走行することができない。ミニカーには車庫証明が不要であるが、路上駐車は道路交通法によって、駐車禁止の場所に駐車したら駐車違反になり、反則金及び放置違反金の対象になる。


ややこしいですが、簡単に言えば、自動者運転免許の必要な「原動機付自転車」という扱いのようです。

コムス

ミニカーでは、現在、市販されているのは、実質的には、2012年7月、トヨタ車体KKが発売した「コムス」だけです。コムスは2012年にグッドデザイン賞を受賞しています。日産と本田はコンセプトカーだけで、実売していません。コムスはセブン-イレブンが配達用に大量採用したことで、多く見かけられるようです。それでも、2020年9月17日で累計8千台を突破したレベルです。

写真1と写真2はつくば市内で見かけたコムスです。

超小型モビリティ

コムスは1人乗りで不便です。国土交通省の車両安全対策検討会が「2人乗り小型EV」を「超小型モビリティ」として正式に軽自動車の一種と区分けし、2020年から市販化を進めています。これに合わせて、トヨタ自動車は2020年12月25日、超小型電気自動車「C+pod(シーポッド)」の販売を開始しています。ただし、個人向けの本格販売は2022年の開始を予定だそうです。価格は165万~171万6000円です。

中国では、米ゼネラル・モーターズGM)と中国・上海汽車の合弁メーカーである上汽通用五菱汽車が小型EV「宏光MINI EV」を2020年7月末に発売し、11月には販売台数が約3万台と米テスラモーターズのモデル3を抜いて中国の新エネルギー車として1位を獲得しています。ベースグレードは電池容量:9.3kWhとして2万8800元(約45万円)、ヒーター付きの中級グレードで3万2800元(約51万円)、13.9kWhの上級グレードで3万8800(約60万円)となっています。

ということで、2022年には、2人乗りのミニカーが広まりそうです。宏光MINI EVの2万8800元(約45万円)は、ヒーターもエアコンもないので論外としても、エアコンをつけても、トヨタの半額くらいにはなりそうです。2013年にガーナの農村でODAで入れたK社(日本製)の耕運機の実態を見せてもらったことがあります。中国製の耕運機は、品質は劣りますが、価格が日本製の3分の1で、当時、K社には、価格競争力が全くありませんでした。同様に、これだけの価格差があると、トヨタが売れない可能性も高いです。なお、中国製は、現時点では、型式の認可を受けていないので、輸入しても、乗ることはできません。型式認定後の、競争になります。ただし、電気製品ですから、液晶テレビの二の舞を演じる可能性はあります。

 

https://www.g-mark.org/award/describe/39029

  • 超小型EV「コムス」

https://coms.toyotabody.jp/

  • ミニカー (車両) wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%83%BC_(%E8%BB%8A%E4%B8%A1)

  • 日産ニューモビリティコンセプト

https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000169012.pdf

https://bestcarweb.jp/news/239469

 

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写真1 コムス

 

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写真2 コムス

 

梅の木通り~つくば市とその周辺の風景写真案内(326)

梅の木通り

梅の木通りは、並木地区の南を流れる土浦他十五ケ町村用水路の北側の道路で、東大通り大角豆北交差点から茨城県道201号藤沢荒川沖線交差点までの区間です。用水路と車道の間に狭い遊歩道があり、そこに梅の木がうえられています。用水路は、東大通りをまたいで、西にのび、梅園公園の南側を通過して、赤塚公園に達しています。用水路の北側には、遊歩道が続いていますが、梅の木が集中的に植えられている場所は、梅の木通りだけです。遊歩道の他の部分にも、梅の木はありますが、散発的です。

写真1は、梅の木通りの標識です。手前を左右に、東大通りが横切っています。この標識は、梅の木通りから東大通りにでる交差点では、右に見える標識の影になって、梅の木通りからはよく見えません。かといって、東大通りから見ると、標識の向きが、45度ずれています。筆者は、この交差点を以前から通っていますが、この標識に気づいたのは、最近のことです。しかも、つくば新聞をみていただくとわかりますが、楕円形の道路標識は、つくば市内では、ここと「農林さくら通り」を除いて、他に例がありません。また、通りに、植物の名前が付けられ、実際に、通りの名前の植物が植えられているのもここと「農林さくら通り」だけです。(注1)というわけで、非常に謎の多いネーミングです。

写真2と3が、梅の木通りです。

写真2は、東大通りから入って、梅の木通りを、東に進む向きです。左側が車道で、正面が遊歩道です。白とピンクの花は梅の木です。右に見える金網は土浦用水で、落下防止のために、金網で蓋がされています。左側のオレンジ色のベルトは、工事用の仕切りで、その奥にあった、旧公務員住宅を現在取り壊しています。オレンジ色は、景観的には、好ましくありませんが、仮設なので、致し方ありません。写真2を見るとわかりますように、梅の木は、車道の右の遊歩道にだけあり、車道の左側の歩道にはありません。ですから、「梅の木通り=遊歩道」と解釈するのが自然と思われますが、つくば新聞では、車道も含めて、「梅の木通り」としていますので、ここでは、その解釈を踏襲しておきます。

写真3は、写真2とは逆向きに、西をむいて、東大通りに向かう方向の梅の木通りです。ごらんのように、遊歩道の幅は狭く、自転車がすれ違うことすらできません。写真3の通行帯の左側の梅の木は、土浦用水側に枝が飛び出してしまいます。(注2)写真2の通行帯より車道側の梅の木の枝は、車道側に飛び出しています。通行帯なしに、中央に梅の木を植えるのであれば、今のままでもある程度幅を確保できていると思いますが、通行帯をとった場合の残りの緑地帯は、梅の木には、かわいそうなくらい狭いです。梅の木をちどりがけに配置して、遊歩道を曲げなかった理由が不明です。いずれにしても、梅はきれいですが、謎の多い通りです。

注1:

公園の名称には、植物が多く、しかも、その植物が植えられていないことも多いです。「農林さくら通り」にも、楕円形の同じデザインの看板があります。農林さくら通りのサクラは車道の両側にあり本数は500本です。梅の木通りはの梅は、車道の片側で100本にも達しません。この2つが、同時に都市計画されたとはとても思えません。

注2:

写真3の左側の土浦用水には、金網の蓋がありません。それは、ここが、分水施設だからです。ここから、土浦用水は、東大通りと直角に、西の梅園公園に向かうルートと、東大通りに沿って、北上するルートに分かれます。

 

 

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写真1 梅の木通りの標識

 

 

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写真2 梅の木通り

 

 

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写真3 梅の木通り
  • つくば市の遊歩道・街路樹・道路 つくば新聞

http://www.tsukubapress.com/tscroad.html

 

 

梅を撮る(3)

ストロボの効果とdarktable

梅の花に、影ができて、気になりました。影を消す方法には、レフ版をつかう、LEDライトを使う、ストロボを使うなどの方法があります。おそらく、自然な映像を目指すなら、スロトボは最悪と思われます。今のところの推奨は、ストロボを使わない方法です。しかし、その話はあとですることにして、今回は、ストロボを使ってみて、わかったことを記します。実は、筆者は、通常は、ストロボを使わない主義なので、今回が、ストロボで撮影した画像をdarktableで処理した初めての機会だったからです。

写真1は、ストロボなしで、撮影した梅の花です。カメラは、かなり、上に向けています。日向と日陰ができています。日向の梅の花は白いですが、日陰は、色ののりは悪いです。

写真2は、ストロボをTTLで焚いた画像です。影は減っていますが、一番上の列の花がやたらと白くて、中間トーンが飛んで不自然な、ストロボっぽい画像になっています。

ここで、ストロボを使うべきか、否かの判断を次のように考えました。

「写真2と(写真1を編集した)写真3をくらべ、写真3が、写真2より優れていれば、darktableの編集が、ストロボより、優れていることになるので、ストロボを使うべきではない。逆に、劣っていれば、ストロボの効果は、darktableの編集では、代替できないので、ストロボを使うべきである。」

写真3は、写真1の編集結果です。写真1と比べれば、改善は明らかなのですが、写真2と比べると、一長一短と思えます。

さて、次に、忘れていた、写真2も編集してみました。

写真4は、写真2の編集結果です。写真2の上の列の中間トーンが飛んでいた部分が改善されています。これは考えれば、あたりまえで、darktableのシーン参照ワークフローは、ダイナミックレンジの広い画像の中間トーンを再現することを目的に、開発されています。ストロボ画像は、ダイナミックレンジの広い画像になりますから、シーン参照ワークフローの効果は絶大になるわけです。

つまり、上記の問題設定は良くなかったことになります。結論はここでは、持ち越しです。

おことわり。今回の画像は、かなり悪い写真です。これは、ストロボの効果の有無が一番端的に出ている画像を選んだためです。その点は、ご理解ください。

おまけ

今回、この記事を書くために、WEBで、ストロボのことを調べました。現在の主流は、1万円以下で、価格.comのリストには、この価格帯の製品がなく、アマゾンで買うしかないみたいです。輸入品でよければ、今回使ったストロボと同じ金額をだせば、半ダーズくらい購入できそうです。日本製品が売れなくなり、実店舗には製品がなくなる状態になっています。近い将来、ストロボのようになる製品や、会社は多いと思われます。日本のストロボ専用メーカのN社も厳しいと思いました。

 

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写真1 ストロボなし(露光のみ調整)

 

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写真2 ストロボあり(編集なし)

 

 

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写真3 ストロボなし(編集後)

 

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写真4 ストロボ(編集後)

 

アマゾンに勝てる企業の条件

ベゾスが、CEOを退いたり、アマゾンが、DX(デジタルトランスフォーメーション)を広げたり、ここのところアマゾンの企業活動が注目されています。AppleGoogleも異業種に参入してきていて、経営コンサルタントは、老舗の企業に、対策を提案して、稼いでいるようです。

IT企業が、異業種に参入して、成功する理由を「技術が組織を選ぶ」という言葉で、表現しました。(注1)無生物主語が気になる人もいるとおもいますので、今回は、別の表現を試みます。

ポイントは以下です。

IT企業は、計算論的思考(システムアプローチ)で企業戦略を立てる。

計算論的企業戦略の代表的なものはシステムアプローチです。「システム」という言葉は、コンテキストによって非常に多様な意味に用いられるので、しばしば、混乱のもとになる単語です。ここでは、IT業界で使われることが多い、次の意味で「システム」を使います。

システムアプローチとは、問題解決を行う場合、直接問題を解決せずに、最初に、問題解決のためのツール(システム、メインはソフトウェア)を開発し、次に、開発されたシステムを使って問題を解決する方法です。

つまり、IT業界が他業種に乗り込む場合には、使えるシステムができたので、応用問題として、同じシステムを、新しい問題(他業種)に適用する戦略をとります。

話が抽象的なので、例をあげましょう。地球温暖化のシミュレーションには、ハードウェアは富岳などのスパコンを使いますが、ソフトウェアは、各国の研究チームが持っているシミュレーションソフトを使います。このソフトの開発は、独占ではなく、公開されていますが(注2)、マンパワーと時間がかかるので、新規参入は難しいです。その結果、世界中で、地球温暖化のシミュレーションができるソフトウェアを持っている研究チームは20チームくらいしかありません。寡占になっています。国別にみれは、1か国で2、3チームです。いったん、システムを作れば、気候変動問題がなくならない限りは、国から研究費が流れてきます。つまり、地球温暖化のシミュレーションができるソフトウェアを持っていることは、絶対的な競争優位になって、このシステムのない他の研究チームは、競争できません。

IT企業のシステムも同じような性格をもっています。アマゾンは、クラウドを使ったネット販売システムを、まずは、書店ビジネスで立ち上げます。そして、このシステムをつかって、小売業全般に参入します。このシステムを使って、小売業をするのと、システムなしで小売業をする違いには、温暖化予測を、地球温暖化のシミュレーションができるソフトウェアを使ってスパコンで行うのと、エクセルとパソコンを使って行うのと、同じレベルの差があります。

IT企業が、他業種に参入する場合は、持っているシステムを使えば、絶対的な競争優位に立てると判断した場合か、持っているシステムを使えば、絶対的な競争優位に立てるかを判断する場合です。後者の場合は、適正検査をしているレベルで、成功しなければ、撤退するつもりで行っています。前者か、後者で成功した場合には、競合他業種には、基本的勝ち目はありません。なぜなら、IT企業は、システムを使えば、絶対的優位に立てるからです。競合他業種が、生き残る道は、自らがシステムアプローチで、システムを作り上げるしかありません。(注3)気候変動予測の例で言えば、新たに、地球温暖化のシミュレーションができるソフトウェアを持つという茨の道を選択する方法です。もちろん、地球温暖化のシミュレーションができるソフトウェアに比べれば、ビジネスシステムでは、公開されたライブラリの組み合わせで、システムを組みたてられる部分もあり、このアプローチは不可能ではありませんが、企業経営をシステムアプローチに切り替えないで、対応することは不可能です。つまり、IT化に遅れないように、年功序列を廃して、初任給2000万円で、IT人材を数人採用することでは、まったく、問題解決に、ならないことは自明です。(注4)

まとめ

今回のまとめは、次の2つの表現は、等価であるということです。

  • IT企業は、計算論的思考(システムアプローチ)で企業戦略を立てる。

  • 技術が組織を選ぶ。

 

注1:

社会革命と技術革命

https://computer-philosopher.hatenablog.com/entry/2021/02/16/000000_2

注2:

ソフトウェアは公開されていません。開発が、制限されていないという意味です。

注3:

システムアプローチの特徴は、次の2点です。

  • 順次、問題解決のための新しいシステムを開発し続ける。

  • 開発したシステムが利用可能であれば、適用する分野を限定しない。

この、逆は、次になります。

  • 問題解決のためのシステム(ツール)を限定する。

  • 適用する分野を限定する。

この条件に当てはまる組織を探すより、この条件に当てはまらない組織をさがす方が難しいです。この条件に当てはまってアウトになる組織の話を書こうとしましたが、ここには、書ききれないので、今回はここで、筆をおきます。

なお、IT化の影響の議論では、システムアプローチの問題が言及されることは少ないです。過去の技術革命と全く異なる点は、作成したシステムの汎用性の異常なまでの広さです。例えていえば、過去の技術革命のシステムは「地球温暖化のシミュレーションができるソフトウェア」のように、つぶしが効きませんでした。この点を見落とすと今回の技術革命のインパクトを過少評価することになります。

注4:

巨大IT企業を独占禁止法で取り締まるという話がありますが、独占禁止法で、制約をかけられるのは、データアクセスの部分だけです。ソフトウェアの開発行為は、独占されている訳ではないので、禁止はできません。巨大IT企業のソフトは、ハードウェアで言えば、アップル本社のような巨大建築群に匹敵しますが、ソフトウェアなので、形を見ることはできません。また、何が存在するのかも、部分情報しか流れてきません。実在するエル・ドラードといってもよいかもしれません。巨大IT企業と競争できる企業は、エル・ドラード(問題解決システム)の姿が見える企業だけになります。その面では、データサイエンスアプローチに類似しています。

 

2月第3週の東京都の感染者数のまとめ:補足~コロナウィルスのデータサイエンス(187)

2月第3週の東京都の感染者数のまとめ:補足

昨日まで、1週間で1日分しか、公開されていなかった、東京都の検査データが、2月19日まで、更新されました。その結果、昨日は不明であった点が、埋まりましたので、1日しかたっていませんが、データを差し替えておきます。

本文は、それに合わせて一部を修正しています。

>>

2月の第3週も終わるので、今週の2月20日(21日分も追加)までの感染者データをまとめておきます。

Google Transitデータも更新しました。

Googleの予測データも、2月17日版に更新して、これも7日移動平均をEstimatedでプロットしてあります。

>>以下が、大きな変更点です。

今週の東京都の検査データは、検査数が直近7日平均6,756.1 人(6,630.6 人)、陽性率が直近7日平均 4.1 %(5.1 %)です。これは2月19日の数値で、()は、2月1日のデータです。つまり、検査数は変化していませんが、陽性率が1%下がっています。

図1が、2月17日版のGoogleの予測値と、東京都の感染者数、経路不明感染者数です。

行動制限率は、7日移動平均では、ー41%で大きな変化はありません。感染者数と経路不明感染者の減少が止まっています。先週のGoogle予測では、感染者数は、3月に入ると200人を切るというものでしたが、図1では、200人は切らないようになっています。

先週の筆者の予測は、今後、「陽性率の減少がなければ、200人から300人の間くらいで、いったん足踏み状態になる可能性」があるというものでしたが、思ったより早く、300人を切る前に、足踏み状態に近づいています。ただし、東京都の検査データが1日しか進んでいないので、1週間の間の検査数と陽性率の変化は不明です。また、現在は、高原状態で、一休み後、更に感染者数が減少する可能性も高いので、先週の予測の評価はもう少し、保留したいと思います。

図2に、11月1日からの東京都の経路不明率と陽性率を示します。陽性率は1週間まえより移動平均では、1%下がったのですが、図2の平均していないデータでは、そろそろ下げどまっているように見えます。経路不明率は、足踏み状態で、減っていません。

図3に、感染者数の1週間前の同じ曜日との差を示しています。東京都が前週との比を使うようになったので、前週との減少比率(1week_ratio)もプロットしてあります。行動制限率はここのところ、-41%前後です。1week_ratioはゼロを中心に変動しており、感染者数の減少は止まっています。

図4は、1週間前との偏差です。最新のデータは2月19日です。1つの点が1週間前と比較した1日のデータです。陽性率の偏差はー1%を切って、変化が小さくなっています。一方、検査人数の偏差は、-1000人前後減っています。

Go Toトラベルの影響で、2020年11月の個人旅行は、2019年の11月の170%という数字が出ていました。前年の1.7倍まで旅行者が増えれば、感染が増えるのも当たり前と思います。結局、11月に感染が増えた原因が分析できていませんので、1月に感染が減少した原因も、ここ1週間で、感染の減少が止まってきた原因もわからないという状態にあります。東京都で、300人台は外国に比べ少ないから、問題は少ないという判断もできますが、緊急事態宣言を解除すれば、行動制限率は-30%まで、10%くらいは大きくなると思われます。補助金支出が途切れれば、おのずとそうなります。現状が均衡点であれば、行動制限を緩和すれば、感染者数は、増加に転じると思われます。ただし、世界的な感染者数の減少傾向をみれば、直ぐに感染者数が増える心配はないかもしれません。現在は決め手に欠けている状態と思われます。

 

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図1 東京都の感染者数の推移(左軸:人、感染者数、経路不明感染者数、右軸:%、Google Transitデータ、2月17日版Google予測データ)

 

 

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図2 東京都の経路不明率と陽性率(左軸:経路不明率%、右軸:陽性率%)

 

 

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図3 東京都の感染者数の前週の同じ曜日との比較とGoogle Transit(左軸:感染者数の差、人、右軸:行動制限率%、右軸:感染者数の比x(ー1))

 

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図4 東京都の前週の同じ曜日との感染者数の差(横軸)と陽性率の差(縦軸)

 

  • COVID-19 感染予測 (日本版) 2月10日版、2月17日版

https://datastudio.google.com/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/4KwoB?s=nXbF2P6La2M

  • NHK特設サイト

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/

  • 都内の最新感染動向

https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: <2021.2.20>2021-2-18version.