社会革命と技術革命

今回のテーマは技術革命というコンセプトを提示することです。

一般的に、技術革命とは、技術が急減に進歩する状態を指します。ここで扱う技術革命は、ちょっと違った意味合いで考えます。それは、社会革命に対比する概念として、技術革命を提示したいのです。

社会革命

社会革命とは、フランス革命ロシア革命アメリカの独立戦争明治維新などの紛争を伴う革命です。これらの革命では、軍隊が出動し、軍事紛争が発生します。1960年はアフリカの年とよばれ、軍事衝突によって、植民地が独立します。これも、社会革命と思われます。アフリカの年以降、独裁政権が崩壊する社会革命がおこります。

並べれば、まだたくさん積み残しがありますが、最近の革命らしい事件を列記します。

1975年 スペイン フランコ政権の終了

1986年 フィリピン マルコス政権の崩壊

1989年 ルーマニア革命 チャウシェスク失脚

1998年 インドネシア  スハルト開発独裁政権の崩壊

1991年 ソ連の崩壊

1991年 イラク フセイン政権の崩壊

このリストをみてわかることは、独裁政権の崩壊が多いことです。社会革命は、流血を伴い、搾取の構造を変化させます。つまり、搾取が富の算出に強く関係することが前提です。フランス革命ロシア革命は、政治的な社会システムを根底から覆して、革命という名称にふさわしいものでした。しかし、最近の革命らしい独裁政権の崩壊では、政治のトップは入れ替わりますが、政治システム全体の変化は少ないことが多くなっています。つまり、社会革命が、社会を変化する効果は、以前に比べて限定的になってきています。

技術革命

今後、技術が進んで、自動車の自動運転が当たり前になれば、運転手という職業はなくなるでしょう。今までは、独裁政権のもとで、運転手で働いていた人は、革命が起きて、民主化しても、やはり、運転手は続けられます。しかし、技術革命があると、運転手は失業します。つまり、この例でみれば、社会革命より、技術革命の方が、運転手さんには、社会的インパクトが大きいことになります。

社会組織と技術の関係には次の2種類があります。

  1. 社会組織が主体的に技術を導入する(社会組織が技術を選ぶ)

  2. 技術が社会組織を選ぶ

従来は、1.が主流です。デジタル庁を作って、行政のIT化を進めるというのは1.の視点です。一方、タクシー会社がつぶれて、運転手さんが失業するのは2.の視点です。

筆者が、ここで、技術革命という概念を提唱するのは、技術革命が起こると、社会組織と技術の関係が、1.から、2.にシフトすると考えるからです。

従来の組織にいる人は、新技術に合わせた組織運営をしている会社をみて、うちも技術導入をまじめに進めれば、競争相手の会社に追いつくだろうと思います。「問題は、どれだけ、技術導入をするか」だと考えます。つまり、組織と技術の関係を、1.の視点で見ているわけです。

アマゾンがネットの小売りを展開したときに、従来の小売業は、連戦連敗になります。おそらく、大手の小売業の会社は、1.の視点で、技術導入を図ったと思います。アマゾンは、2.の視点の会社です。会社組織は、クラウドでの小売販売に最適化されています。どちらが、生き残ったかは、歴史が証明しています。

つまり、こういうことです。

仮に、あなたがカストロのような社会を改革したい革命家だったとします。現在は、革命を達成する手段が2つあります。

第1は、流血を伴う社会革命です。

第2は、技術革命です。

費用対便益(コストパーフォーマンス)を考えれば、どちらを選ぶかは、自明と思われます。つまり、イーロン・マスクは、現代のカストロだと考えられます。もちろん、これは寓話です。

ちなみに、現在、流血をともなう社会活動を積極的に行っているのは、テロリストなどの費用対便益を気にしない人たちです。

現在、ミャンマーで、軍事政権がクーデタをおこしていますが、技術革命という視点に立てば、これからも小競り合いはあると思いますが、フランス革命に見られたような大規模な軍事衝突は起こりにくくなっています。