1)用語の整理
用語の混乱があったので、整理しておきます。また、それに関連して、3回(前編、中編、後編)では、終わらなくなったので、通し番号に変更しました。
ミニマリズムは、多義語なので、ウィキペディアを見ておきます。
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ミニマリズムは、第二次世界大戦後の西洋美術から始まった視覚芸術、音楽、その他のメディアの動きです。
ミニマリズムは、次のことを指す場合もあります。
ミニマリズム (コンピューティング)、コンピューターのプログラミングと構成の哲学
ミニマリズム (哲学)、真実は命題または文を超えて有用な情報を提供しないという理論
ミニマリズム (構文)、1990 年代にノーム チョムスキーによって開発された自然言語構文の理論
ミニマリズム (テクニカル コミュニケーション)、タスク指向およびユーザー中心の指示と文書化の理論
ミニマリズム (視覚芸術)、本質的ではない形、特徴、または概念をすべて排除することによって、主題の本質、本質またはアイデンティティを明らかにする芸術運動
ミニマル音楽、限られたまたは最小限の音楽素材を使用する芸術音楽の一形態
聖書的ミニマリズム: 聖書は信頼できる歴史の証拠ではなく、「イスラエル」は歴史研究の問題のある主題であるという、聖書研究における運動または傾向
簡素な生活、持ち物を減らして生活を簡素化する自発的な実践
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視覚芸術、音楽、その他のメディアでは、ミニマリズムは第二次世界大戦後の西洋美術で始まった芸術運動であり、1960 年代と 1970 年代初頭のアメリカの視覚芸術で最も強くなりました。中心的な担い手は、画家と彫刻家です。
ミニマリズムの映画監督はいますが、画家、彫刻家、映画監督と並ぶレベルのミニマリズムの写真家はいません。理由は後で書きます。
2)ルーツの問題
音楽では、単純なパターンを繰り返す作曲方法が採用されます。変奏曲とは逆の手法です。ラベルは、ボレロの繰り返しパターンを生涯で唯一のギャンブルだと考えました。ミニマルミュージックは、ラベルの基準では、音楽ではありません。ここまで、単純な音型パターンを繰り返すのは、読経しか思い浮かびません。ミニマルミュージックは、1960年代に突然始まったと言えます。
音楽以外のミニマリズムは、1960年代に突然始まったとは言えません。ミニマリズムは、余分なものを取り除いて単純化することを指します。この手順を使わない芸術を探す方が難しいです。
例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチは、「シンプルさは究極の洗練です」といっています。
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)は、
ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと共に、近代建築の三大巨匠、あるいは、ヴァルター・グロピウスを加えて、四大巨匠とみなされています。
ローエは、「Less is more.(レス・イズ・モア)」といっているので、ミニマリズムの巨匠であるという評価もあります。
ただし、ローエは、「God is in the details.(神は細部に宿る)」ともいっているので、ミニマリズムの巨匠は、ローエの一面を強調していると思われます。
写真1は、神社の参道です。 ここで、水色の四角でクロップすれば、灯篭はなくなり、構図は、シンプルになります。これを、ミニマリズムということもできます。しかし、灯篭の部分に、ゴミがあったり、工事用の赤いコーンがあったり、宣伝用ののぼりがあれば、クロップでそれを取り除く場合、これは、ミニマリズムだと考えながら操作する人はいません。つまり、ミニマリズムを全く使わずに写真を撮り、編集することはありません。
また、ミニマリズムは、モノクロ写真で成功をおさめたと書かれている文献もあります。
フィルム時代には、カラー写真は個人では、現像できませんでしたので、サイズをかえ、露光を調整して、クロップしながら、写真を仕上げるためには、モノクロしか方法がありませんでした。また、デジタルと異なり、フィルムでは、カラーとモノクロでは、解像度に圧倒的な違いがあります。この違いは、雑誌に印刷する場合にも反映されます。カラー印刷は高価でしたので、カラー写真は発表の場も限定されます。このため、モノクロ写真が中心のプロも多くいました。
このように、写真家は誰でも、ミニマリズムの手法を使いますので、特別なミニマリストの写真家は生まれなかったと考えます。
3)ミニマリストの写真
写真2は、前回つかったマーガレットをdiffuse or shapenモジュールで処理しています。
この場合のマーガレットは、ほとんど壁紙のように見えます。
ミニマリズム(1)(2)では、主に、クラシック音楽のミニマリズムと共通の用語としてのミニマリズムを使っていますが、それは典型的には、写真2のようなイメージです。
Photographyとminimalismで検索をかけると、minimalistがヒットします。
ミニマリストは、こんまり(近藤麻理恵氏)のようなライフスタイルです。
ミニマリストの写真(Minimalist photography)の英語版のウィキペディアの説明は以下です。
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ミニマリストの写真は、20 世紀の多くのアーティストが使用するスタイルであるアートにおけるミニマリズムの概念から生まれました。このスタイルは、最小限の構成要素 (色、オブジェクト、形状、テクスチャ) の使用を強調しています。ミニマリスト写真の目的は、独特の視覚体験をもたらしたり、視聴者から感情的な反応を引き出したりするために、コンセプトを表現することです。写真の世界では、写真は非常に直感的で個人的な概念と見なされており、芸術の解釈と理解は観客の視点に委ねられています。
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読んでもよくわかりませんが、引用文献を見ると2007年以降です。
つまり、デジタルカメラのRAW現像の普及とともに広がっています。
ミニマリストの写真は、写真2のようなパターンの繰り返しの意味ではありません。
Milad Safabakhshは、「 Founder of Minimalist Photography Awards」を開催しています。
MINIMALIST PHOTOGRAPHY AWARDS
https://minimalistphotographyawards.com/
200冊以上の写真の電子書籍を出版している(しかも多くは、無料です)Photzyには、次の2冊のミニマリズムの本があります。
(1)HOW TO PHOTOGRAPH IN THE MINIMALIST STYLE Karthika Gupta
(2)USING MINIMALISM IN LANDSCAPE PHOTOGRAPHY David Veldman
ミニマリストの写真の実質的な活動は、2007年以降であり、日本語の文献はなさそうです。
人物、風景などミニマリストの写真の適用分野も文献によって異なり、ミニマリストの写真の共通的な理解はなさそうです。
これから、上記の文献を参考に、ミニマリストの写真を考えてみます。