ハドソン・リバー・スクールの研究(9)

10)チャーチ「アンデスの山奥」(1859)

 

第2世代のハドソンリバースクールとして、今回は、 フレデリックエドウィン・チャーチの「アンデスの山奥」(1859)を取り上げます。

 

10-1)フレデリックエドウィン・チャーチ

 

まず、ウィキペディアから、チャーチの経歴のポイントを引用します。



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フレデリックエドウィン・チャーチ

 

1844年に18歳でニューヨークで活動するトマス・コールの弟子となった。コールの元で2年間学び、ニューイングランドの各地の風景画を描いた。

 

トマス・コールを師としたが、その作風はコールとは対照的で、自然を丹念に調査し、人物等は配置せず、忠実にありのままの姿で描くことを良しとした。ナイアガラやアンデスなどの壮大でドラマティックな光景を大画面に再現し、作者たる自分と同じ体験を見物人に味わってもらおうとした。

 

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ウィキペディアに紹介されている絵画を見ると、水辺が多いです。ナイアガラの滝、アンデスの風景が主な主題です。虹を描いた絵もあります。

 

10-2)「アンデスの山奥」(1859)

 

この作品は、現在、メトロポリタン美術館にあります。



アンデスの山奥 1859年 MET

Oil on canvas, 66 1/8 x 119 1/4 in. (168 x 302.9 cm). 

https://www.metmuseum.org/ja/art/collection/search/10481

 

メトロポリタン美術館のWEBでは、次の様に解説がなされています。

 

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アメリ東海岸の風景を詳細に描いて早くから名声を築いたチャーチは、ドイツの博物学者アレクサンダー・フォン・フンボルトに啓発され、1853年と1857年に南米へ遠征旅行しました。《アンデスの山奥》は、チャーチがエクアドルで描いた何十枚もの鉛筆と油彩のスケッチを基に統合した作品であり、フンボルトがアンデスの赤道付近で観察した熱帯から温暖、極寒におよぶ気候の変動を描いています。チャーチは当初この作品を窓に似た巨大な額縁に入れて展示し、目白押しに訪れた観客に、驚くほど詳細に描かれた植物と大きく広がる風景が見えるようにオペラグラスで鑑賞することを勧めました。

 

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写真1は、METの「アンデスの山奥」ですが、あたかも窓から見える風景のように展示されています。

 

写真2は、額を除いた写真です。

 

写真3は、左下の部分の拡大です。

 

写真4は、写真3の上の部分の拡大です。

 

こうしてみると、細部が恐ろしく細かく書き込まれていることがわかります。

 

METのHPでは、全体の写真だけでなく、細部の確認が出来るように、部分の写真もアップロードされています。

 

しかし、その部分は、元の画面のした半分だけです。

 

画面の上半分の山の部分には、細部は書き込まれていません。

 

「オペラグラスで鑑賞することを勧めた」のは、下半分の部分と思われます。

 

写真5はモノクロに変換して、3分割構図との対応をチェックしています。

 

構図は、3分割にはなっていません。

 

写真6は、滝の部分を3分割構図になるように、トリミングしています。

 

恐らく、オペラグラスを通じて見えたのは、このような風景だと思われます。

 

その点では、「アンデスの山奥」は、下版部が重いバランスを欠いた構図になっているけれども、チャーチはそのことを気にしていなかったと思われます。

 

つまり、「アンデスの山奥」は、構図の参考にはならないと考えます。



 

写真1 「アンデスの山奥」

 

 

写真2 「アンデスの山奥」

 

 

写真3 「アンデスの山奥」(部分)

 

 

写真4 「アンデスの山奥」(部分)

 

写真5 「アンデスの山奥」

 

 

写真6 「アンデスの山奥」(部分)

 

10-3)METの学習

 

METには、「アンデスの山奥」を教材とした「ランドスケープの構成」という教材が公開されています。

 

その一部を紹介します。

 

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ランドスケープの構成

Composing a Landscape 

https://www.metmuseum.org/learn/educators/lesson-plans/composing-a-landscape



目標

生徒は次のことができるようになります。

 

芸術作品に表現された人間と自然界の関係を分析する。

イデアを伝えるためにアーティストが視点、スケール、詳細を使用する方法を特定する。と

人間と自然界との関係を強調する芸術作品を作成します。



国学習基準

 

地理

NSS-GK-12.2 場所と地域

NSS-GK-12.5 環境と社会

 

科学

NS.K-12.6 個人的および社会的視点

 

視覚芸術

NA-VA.K-12.1 メディア、技法、およびプロセスの理解と適用

NA-VA.K-12.2 構造と機能に関する知識の使用

NA-VA.K-12.3 主題、記号、アイデアの範囲の選択と評価

NA-VA.K-12.4 歴史と文化に関連した視覚芸術の理解

NA-VA.K-12.5 自分の仕事と他の人の仕事の特徴とメリットを振り返り、評価する

NA-VA.K-12.6 視覚芸術と他の分野を結び付ける

 

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以上のように、教材は、「アンデスの山奥」を、地理、科学、視覚芸術とリンクさせており、STEAM教育になっています。

 

さらに、学習を促す質問がついていますので、その一部を紹介します。

 

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閲覧に関する質問

 

この風景に人間の世界のどんな証拠が見えますか? 

 

このシーンで人間と自然界との関係をどのように説明しますか? 

 

あなたのコミュニティは自然環境とどのように関係していますか? 

 

どのような類似点と相違点に気付きますか?

 

フレデリック エドウィン チャーチは、1853 年と 1857 年にコロンビアとエクアドルを旅行した際に作成したスケッチに基づいて、彼のスタジオでこの絵を作成しました。

1859 年、ニューヨークで初演されたこの絵を見るために、1 万 2,000 人を超える人々が 4 分の 1 ドルを支払いました。隠された天窓、窓のような巨大なフレーム、植物のある暗い部屋にこの作品を設置することは、視聴者の体験にどのような影響を与えたと思いますか?

 

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1859年の$1は、2022年の $35.9051になります。

 

 クウォーター銀貨1枚(4 分の 1 ドル)の現在の価値は、$8.97になります。

 

9ドルとすれば、10万8000ドル、1ドル135円として、1458万円の売り上げがあったことになります。

 

コンサートのチケットの売り上げには及びませんが、1枚の絵の視聴の売り上げとしては、大きいと言えます。





引用文献

 

フレデリックエドウィン・チャーチ ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%87%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%89%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%81